★破戒僧 リッピ ウフィッツ美術館 フィレンツェ
ウフィッツ美術館 第8室
まずはこの絵を見てください。とても綺麗な絵ですね。

『フィリッポ・リッピ』(1406-1469) 『聖母子と二天使』 1465
これを描いた『フィリッポ・リッピ』は修道院の修道士です。
こんなきれいな絵を描く人だからきっと「宗教心の強い、品行方正な人だろう。」と思ってしまうのですがそれがおお間違え。
彼はかなりの破戒僧で、この絵の聖母のモデルとなったのは修道女の『ルクレツィア・ブーティー』、彼女を祭りの人ごみに紛れて修道院から誘拐して自分の妻にしてしまうのです。
当然、修道院は彼を告発して、出入り禁止とします、当然ですよね。でも、当時の最高権力者であり『リッピ』のパトロンであった『メディチ家』の『老コジモ』のとりなしで、修道院に復帰しました。

トリミングしてみました、本当にきれいに聖母が描かれています、自分が恋焦がれていた『ルクレツィア』に対する思い切りの賛美があふれ出しているような気がします。
整った小顔に、すっと通った鼻すじ、伏し目がちなまなざし、素晴らしいですよね、頭の髪飾りは細部までよく描かれ、うなじにかかる薄いファブリックを通して肌の質感が伝わってきて思わず「ゾクッ」としてしまいました。
それに比べて、イエスや二人の天使はあまり可愛いとは言えませんね。
さて、この絵を見ると窓枠のような枠の内側に聖母子と二天使がいます、そしてその窓枠の外には、小高い丘や松が見え、その先には海が見えます、このころの特徴的な描き方ですが、すでに、『レオナルド・ダ・ヴィンチ』の「空気遠近法」のようなタッチで自然が描かれています。
このように、窓枠や窓、支柱の前に対象物があり、その先に自然が広がっている手法はこの時代たくさん見られます、『モナリザ』もその例にもれません。
私は『フィリッポ・リッピ』の絵が大好きです、特にこの絵は、好きですね、『ボッティ・チェルリ』の絵を見ていると彼の影響を強く感じます。
また明日ここでお会いしましょう、美の密林さらに奥に分け入ります。