万城目のブログ 大作戦

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特撮やプロレスの感想&「エキプロ5」でクリエイトしたキャラを公開するブログ

天使轟臨~Angels Flying in the Supercell~第四話

2012-06-25 | 企画・特集

 

この宇宙(そら)に、いったいいくつの星々が生まれ、散っていったのだろう?

この惑星(ほし)に、いったいいくつの生命が生まれ、そして地に空に還っていったのだろう?

それを知るすべは、誰にもありはしない。

西暦20X1年、秋……

天と地の理(ことわり)と同じく、人の作り出した存在にも、いずれ終わりは訪れる。

プロレス団体も、その摂理から逃れることは出来ない。

されどその終わりは、あるいは始まりに過ぎないのかも知れないのだ……

◇◆◇ 1 ◇◆◇


先の『ワールド夏の陣』で好結果を得た西の老舗団体【ワールド女子プロレス】。
大阪城アリーナ三連戦という賭けに勝ち、近年にない興行成績と注目を集めている。
言ってみれば、

――風が吹いている

状態、といっていい。
このような場合、多くの団体はいずれかを選ぶ。
すなわち、地道に足場を固めるか、はたまた、更なる大きなプラスを求め、大勝負を打つか――である。
この時のワールド女子がどうであったか?
それは、ほどなくフロントがブチ上げた一大構想によって明白であろう。

すなわち、『第一回ワールド×ジャパンリーグ戦』――W×Jリーグ。

海外から強豪レスラーを招き、外国人VS日本人対決路線で盛り上げようという企画である。
アメリカの有力団体【WWCA】と提携、更にヨーロッパからもスター選手を招いて、地元・関西のみならず、日本全国でシングルリーグ戦を行なうという。
日本人対決が主流の現在、この方向性は高い期待感を持って迎えられた。
しかし、すれっからしのプロレスファンたちも、ワールド女子が続いて発表したシリーズ詳細には度肝を抜かれたといっていい。


<ワールド×ジャパンリーグ戦:会場>

開幕戦:東京都=『有明スポーツアリーナ』(収容人数:20000人)
(2):宮城県=仙台市グランドアリーナ(収容人数:10000人)
(3):北海道=キター!!アリーナ(収容人数:10000人)
(4):愛知県=名古屋レインボープラザ(収容人数:12000人)
(5):大阪府=門真なにわドーム(収容人数:10000人)
(6):京都府=寿文化総合ホール(収容人数:12000人)
(7):福岡県=福岡ポートメッセ(収容人数:15000人)
最終戦:広島県=若鯉Zun-Zunスタジアム(収容人数:33000人)


まことに、強気きわまる計画であった。
業界最大手の新日本女子プロレスとても、たった1シリーズでこれだけの大会場を埋めるのは容易ではなかろう。
だがこの時のワールド女子には、それを可能にするだけの勢いが感じられたのは、事実である。

そう、確かに――

風は、吹いていたのだ。


▼日本 大阪府大阪市浪速区 ワールド女子プロレス道場


「実を言えば――」

リング上の《メデューサ中森》こと中森あずみは、若手に関節技を極めるかたわら、口を切った。

「悩んでいる」(バキバキ……)
「~~ッ!! ~~、~~~!! ~~~~~~~~~~~!!」
「ふぅん? ……とても、そうは見えないけど」

バケツの水を床に――厳密にはそこに這いつくばっている弟子へ――注ぎながら答えたのは《神楽 紫苑》。
両者とも、ワールド女子所属のプロレスラーである。
現在は、ヒールユニット【G.B.W】のメンバーとして、行動を共にしていた。
きたるべき『第一回ワールド×ジャパンリーグ戦』にそなえてのトレーニング……
だけでも、ないらしい。

「このままではダメだと思って、ヒールに転向してみた……が」(ゴキッ、メキメキ……)
「~~~~! ~~~~~……」
「なに? 浮かない顔するのねェ。今の所、結構ハマってると思うけど。あ、ひょっとして、性に合わないってこと?」

弟子に活を入れ、髪をつかんで引きずり起こしながら、神楽は眉をひそめた。

「いや。……そういうわけではない」(グシャッ、ゴリゴリ)
「――……――――…………」
「でしょうね~。アンタ、すっごいイキイキしてるもんね」

弟子の顔面をリングの鉄柱にこすりつけながら、ニコニコ顔の神楽。

「でも、だったら何の悩みがあるってわけ?」
「それは――――」(ピキッ、メリ……メリ……ボキィ)
「……………………………………」

ヒールの道というものは、まことに深く険しい。
最初は無我夢中でやっていたが、次第に限界を感じてきた。
もっと己の幅を広げねば、ただの暴走キャラで終わってしまうであろう。

「なるほどね~……相変わらず真面目ねェアンタ。
 私だって、誰かからスタイルを教わったわけでもないけど」

弟子をチェーンで引きずり回しながら、思案顔の神楽。
神楽紫苑はなるほどラフファイトや凶器も使いこなすが、元来、ヒールという立ち位置でもなかった。
あえていうなら『アウトロー』とでもいうべきポジション。
それは自分自身の汗と経験で作り上げたものであり、誰の教授を受けたわけでもない。

「そ~ね……でも、ツテがないこともないわよ」

業界屈指といっていい名ヒールの存在を、神楽は思い浮かべていた。
もっとも、今はいささか“取り込み中”のようであるが……
あるいは、かえって好都合かも知れぬ。

(――『提督』――)

神楽ほどのレスラーでも、その異名には身震いする。

(……壊れなければいいけどね)

弟子に気付けがわりのヘッドバットを食らわせつつ、神楽紫苑は中森を案じていた。


◇◆◇ 2 ◇◆◇


▼日本 埼玉県越谷市 葛スタジオ


『週刊レッスルG』は、プロレス情報誌の老舗である週刊レッスルの姉妹誌である。
つまるところは、女子プロレスラー専門のグラビア誌。
今日はこのスタジオで、レスラーがグラビア撮影を行っている。

その一人が〈Σ(シグマ) リア〉――〈紫熊 理亜〉。

「………………」

ふだんマイペースな彼女だが、今日ばかりはソワソワと落ち着きがなかった。
別段、撮影に緊張しているわけではない。
レスラーになる前はモデル経験もあるので、こうしたことには慣れっこである。
彼女の動揺の原因は、撮影を同じくしているレスラーにある。

「あ、リアさ~~ん、撮影終わりましたぁ?」
「いや……まだ、途中やけど」
「そうなんですか~。私、こういうの初めてなんですけど、筋がいいねって褒められちゃいました~♪」
「そう……そら、良かった」

原因は、このやたらと人懐っこい〈南奈 瑠依〉(みなみな・るい)のため……ではない。
彼女はリアと同時期にデビューした新人で、【東京女子プロレス】に所属している。

「リアさん、ワールドの人なんですよね? なっちゃん……じゃない、《成瀬 唯》さんって知ってます?」
「そらまぁ、あんなんでも先輩やからね……先輩やった、言うべきかもしれんけど」

成瀬は最近までワールドに所属していたが、現在はフリーになり、あれこれ活躍しているようだ。

「なっちゃん、高倉なんとかって人に追い出されちゃったんですよねっ? 酷いです!」
「あ~……せやなぁ、アレは極悪人やからねぇ。気ぃつけた方がええよ」

成瀬の離脱に〈高倉 ケイ〉が一枚噛んでいるのは事実らしいが、追い出されるようなタマでもあるまい。

「ん? あ~、あの人、どっかで見たよ~な……」

現在撮影中のレスラーを見やって、小首をかしげる瑠依。

「っ、知らんのっ? マジで? 《フレイア鏡》様やないのっ」
「あっ、そうそう、そうだった~。こないだ、うちの興行に来てくれてたっけ」
「マジで!?」
「マジで」

フレイア鏡――
その類まれな美貌と卓絶した妖艶なムードゆえに、プロレス界の枠を超えた人気を誇る、美女ファイターである。
長らくフリーの大物として活動してきたが、現在は【WARS】に所属、御大《サンダー龍子》とコンビを組んでいる。
リアにとっては、マット界入りの動機ともなった、憧れの存在であった。

先日、東京女子が神田でおこなった大会に、鏡も特別参戦していたのである。

「……あ」

丁度、鏡の撮影が終わった模様。
話しかけるなら、今しかない――

「…………っ」

普段は物怖じしないリアだが、流石に緊張し、一歩を踏み出せない……

「あ、鏡さ~ん、撮影終わったんですか~?」
「…………ぁ」

能天気に声をかけていく瑠依。
この図太さがうらやましい。

「あら……瑠依ちゃん。貴方も撮影だったのね」
「はい~。鏡さんとご一緒できて、嬉しいです!」
「フフッ……そうね。私も、目の保養になりそうだわ」
「…………あっ、あの……っ!」

ここでようやく、声をかけることが出来た。

「? 貴方は?」
「あっ、あのっ、わ、わ、わたし――」
「あ、彼女、リアさんって言うんですよ~。ワールドの人なんです!」
「あぁ……なるほど。噂には聞いているわ。神楽のお弟子さんね?」
「はっ、はい……っ」

厳密に言えば弟子とは言えない気もするが、細かいことはどうでもいい。

「ずいぶん人気だそうね。東のフレイア、西のΣリア――と呼ばれているとか」
「いっ、いえ、そんな大層なっ」

そこまで持ち上げてくれているのは、リアのファンクラブ【LTMT(リアたんマジ天使)団】の団員くらいのものだ。

「ところで今日は――水着撮影だったかしら?」
「は、はいっ、そんな感じで……」
「ふぅん……でも、勿体ないわね」
「え、えっ?」
「せっかくそんなに、いい体をしているのだもの――――」

――――もっと、魅せたらどうかしら。

「…………っ!!」

そして――

『週刊レッスルG』は発売されるや否や、大きな反響を呼んだ。
何と言っても注目されたのは、表紙と巻頭を飾った、Σリアと南奈るいの“手ブラ&ふんどし”グラビアである。
両者の絡みも、いささかセクシーに過ぎるのではないか――と思われるほどのもの。
一説には、撮影に同席していたフレイア鏡に乗せられて……などという話もあったが、リアはこれを否定している。

「思い切ったらトコトンまでやる! それがリアのやりかたじゃ!」

普段は関西弁なのに、たまに中国方言っぽくなるリアであった。

このヒットにより、リアはすっかり“エロキャラ”が定着。
あやうくリングネームを〈Σ“エロカワ”リア〉に変えられそうになったほどである。
それはそれで、彼女の選んだ道ではあったのだが。

注目を浴びた彼女の元には、ドラマ出演のオファーも飛び込んできた。
『仮面刑事アンタレス』――
日曜の早朝10時から放送されている特撮ドラマである。
ちなみに放映時間が日曜の朝なのは、放送後にオモチャを買って貰おうというスポンサーの算段に他ならない。
さておき、なかなか注目されている番組である。

「今、悪玉として闘っているので、イメージが壊れるような役はちょっと……」

と交渉した結果、リアのキャラに合わせ、

――悪の組織の手で怪人になりアンタレスと闘う、女子サッカー日本代表エースストライカーの女子高生

という、よくわからない役を担当することが決定した。
なお、ベースとなるのは女王蜂で、怪人“クイーン・サドンデス”と言うらしい。
あまり深くは突っ込まずにおこう、とリアは思った。


▼日本 東京都調布市 味の元素スタジアム


「クッソ……こんなに待たされるのかよ」

と文句タラタラなのは、〈安宅 留美〉。
リア同様、ゲスト出演で呼ばれているプロレスラーで、九州の【VT-X(ヴォルテックス)】に所属している。

「へぇ~、神楽サンの従妹なんや。そう言えば、ちょっと面影ある……ないわ。ごめん、勢いで言うてもた」
「フン。アイツにゃ、さぞかし、苦労させられてるんだろ?」
「ソッ……ソンナコト……ナイケド……」
「…………」
「そ、そういえば、ヴォルさんとこは大変らしいねぇ?」
「まぁね……」

VT-Xは【JWI】と抗争中? で、次の《ビューティ市ヶ谷》(JWI)vs《十六夜 美響》(VT-X)の一戦において、負けた側の選手は全員丸坊主になって練習生から出直しだという。

「丸坊主か~~。まぁ、ルミさんは似合いそうやし、ええんちゃう?」
「…………」

撮影は無事終了、オンエアもされて好評を博した。

「アンタレス! アンタはコレでDEATHっちゃいな!!」

というクイーン・サドンデスの決め台詞をそのまま拝借、試合でも使うことにした。

それは良かったのだが、放映後、あらぬ噂が広まった。

――Σリアは、元々世界レベルのアスリートであった。

というもので、

――入団テストで(ランダ)八重樫や、高倉(ケイ)をフルボッコに出来たのも、そのためである。
――ドラマの設定は、そんな彼女の過去をベースにしたものだ。

というのであった。

「……そんなワケあるかいな」

と、リアは呆れるしかない。
もとより噂に過ぎず、そんな秘密も何もあったものではないのだ。
が、会社的にはせっかくだから乗ってやれとばかりに、

――リアは15歳まで世界レベルの“スーパーアルティメット・サッカー”の選手だった
――しかし高校になって蹴り飽きたので、止めた

などというプロフィールを追加する悪ノリを見せた。
(ちなみに“スーパーアルティメットサッカー”というのは、急所攻撃・目潰し以外は何でもアリのサッカーらしい)

――流石はLIA様! “世界”(ワールド)に君臨する女王!
――やっぱリアたんは天使や!

ファンが盛り上がる一方、

「リア、本当に普通の女の子やったのにな……」

と、独白するリアであった。

芸能活動に追われるリアであったが、もとより本業はプロレスである。
いくら外でチヤホヤされても、団体に戻れば、まだまだ下っ端にすぎない。

神楽や中森からはコキ使われ、技の練習台として痛めつけられた。
顔を狙わないのは、“商品価値”は守ろうという気遣いであろうか。

外の仕事に、内部では雑用や練習に追われ……
これで、何事もなければ嘘であろう。



▼日本 大阪府大阪市 お祭り門アリーナ


『関西に舞い降りた死神王女! 野望の乙女が今宵も恐怖と破壊を撒き散らす!
 ワールド女子いちのダークヒロイン、Σ リア選手の入場です――』

――LIA様! LIA様ーーー!!
――リアーー!! オレだーー!! オレの子を産んでくれーー!!
――うおおーーーー! リーアッ! リーアッ!!
――リア様~! 首4の字かけてくださ~~~いっ!!

狭い会場に、熱狂的かつ、独特のファンの歓声がこだまする。
黒を基調としたドレス姿に、不似合いなヌンチャクを携えて入場するリア。
生白い顔に紫のペイント(本人曰くΣの文字)、紫の口紅という妖しいメイク。

『鳥取県出身、171cm、Σ“セクスィー”リーーアーーー』

コールされると同時に、黒と紫のセクシーなリングコスに早変わりのパフォーマンスを披露。

――リア様ーー! 踏んでくれーーー!!
――リアたん、もう一枚脱いでーーーー!!
――首! 首4の字! 首4の字--------!!

「人気者は辛いわねェ。うらまやしいわ~」
「…………」

決して羨ましそうでない口調の、パートナー神楽。


<メインイベント 60分一本勝負>

 《神楽 紫苑》 & 〈Σ“セクシー”リア〉

 VS

 《芝田 美紀》 & 《グローリー笠原》


「芝田さん――貴方の時代はとっくに終わりましてよ! そろそろ御隠居なさってはいかが?」
「ビッグマウスだけは上達したようね!」

普段は(芝田仕込みの)上品な言動のリアであるが、乱闘になって血がたぎり始めると、

「芝田ァーーーッ!! てめーーはリアを怒らせたッ!! アンタは! コレで! DEATHっちゃいなーッ!!」

と絶叫、痛烈なΣキック(バズソーキック)を披露するなど大暴れ。
場内ヤンヤの喝采――というのが、ここ最近のリアのプロレス風景である。

もっとも、いくら人気はあれど、まだまだプロレスラーとしては半人前のリア。
芝田らトップクラスの選手と手を合わせるには、彼女の体はまだまだ華奢すぎる。
更に、最近は疲労も積み重なっていたとあっては、間違いが起きない方が不思議であったろう。

(……やってもうた……)

まず痛めたのは、左肘。
これは何とか誤魔化し誤魔化し続けていたが、更に左足も痛めてしまう。

(……っ、けど、休んでるわけには……)

目下売り出し中の今、欠場は許されない。
傷ついた箇所をリストバンドとサポーター、レガースで隠し、

「コレは……リアは、強化手術を受けたんじゃ!」

と言い張り、日々リングに上がり続けた。

ケガはなかなか完治せず、その左右非対称な格好はいつしかリアのトレードマークになっていった。


▼日本 大阪府大阪市 ワールド女子プロレス寮


何とか強行出場を続けていたリアであるが、負傷は悪化の一途をたどり、もはや歩くことさえままならない……となると、流石にドクターストップがかかった。

(しゃーない……しばらく、ゆっくりしとこ)

そんなおり、彼女のケータイに着信があった。

「どちらさん?」
『あっ、どうも、わたしですっ、東京女子の高橋です!』
「タカ……ハシ? 誰?」
『ちょ、ちょっと!? この前の、大阪夏の陣で! アドレス交換したじゃないですか!』
「…………?」

リアは、記憶をたどってみる――

………………

確か、デビュー戦の直前……
リングを見つめている、【東京女子プロレス】のジャージ姿の女性を見かけたのだった。

「あの~……すみません、ひょっとして、東京女子の人ですか?」
「え……?」
「あ、やっぱりそうみたいですねぇ」
「そう……ですけど、貴方は?」
「うち、〈紫熊 理亜〉って言います。ワールドでプロレスやってます」
「っ、どうも、自分、東京女子の高橋です」
「たかはし……?」

………………

「あ~、思い出した思い出した。〈どっさり!いくらガール高橋〉さんやんね」
『それはもう忘れてくださいよ! 今は〈カナ高橋15世〉ですから!』
「…………」

どっちもどっちな気がするが、彼女的には重要な差なのであろう。たぶん。

「で、どないしたんですか、どっさり!いくらガール15世さん?」
『高橋入ってねぇ!? いや、それはいいんですけど……』

彼女が話し始めたのは、ちかぢか開催されるというTCG――
“Top of the Cruiser Girls”、クルーザー級(軽・中量級)の選手によるタッグリーグ戦についてだった。

「あぁ、そういや、うちのケイちゃんもそんなんに出る言うてた気がする」

パートナーは……あぁ、確か例の、ひだりちゃん☆ だったかな~?

『それでですね、わたし、パートナーを探してまして――』
「えぇ? そら無理やわ~。うち、クルーザー級って言うには無理あるよ?」
『っ、いえっ、そうじゃなくてですね……』

何でも、WWCAの《コリィ・スナイパー》と接触を図りたいと言う。

「あ~、あの人は凄いよね~。でも、しばらく来日せぇへんみたいやけど?」
『うぐっ……そ、そうなんですか……』

高橋のパートナー探しは、難航しそうな雲行きであった。

それはともかく。
一日も早く復帰しなくては……と焦っていた矢先。
思わぬ電話が彼女の元に届いた。

『お久しぶり、リアさん』
「かっ! 鏡さん……っ!?」

何でも、リアが負傷したことを聞きつけて、連絡をくれたのだという。
それだけでも、リアにとっては光栄きわまることであったが、

『私の知っている温泉があるのだけれど』

そこで湯治をすれば、ケガの治りも早いかも知れない――
もちろん、リアが紹介を断る理由はなかった。



▼日本 島根県松江市 温泉宿“墨西哥館”に程近い県道


「つ……っ、はぁ、はぁ……」

教えられた温泉は、秘湯と呼ばれるたぐいのもので、バスなど通っていない。
タクシーで行けば――とも思ったが、これもリハビリの一環と、歩きで向かったのだったが……

(……こ、こら……あかん……)

数時間歩いても、まるで着きそうにない。

(車が通ったら、ヒッチハイクさせて貰うのになぁ……)

ボヤきながらも歩き続けていると、前方に人影が見えた。

「おやぁ……ひょっとして自分、『墨西哥館』に行くとこ?」
「はっ?」

振り向いたのは、目が覚めるような、黒髪の美女である。

(こらラッキーや、荷物持ってもらお)

「なぁなぁ、ほんならちょっと、荷物持ってくれへん? リア、疲れてもうて~」
「…………」
「あ、ちょっと、なんでドンドン行ってしまうん? なぁなぁ~~」
「うっさいっ」
「え~? そんないけず言わんと~。リアちゃんのお願い~」
「……っ? アンタ――ひょっとして、なんとかリア?」
「な、なんとかって……うちは紫熊、理亜ですけど」
「……そういうことか」
「なぁなぁ、ええやん、うち、これでもケガ人なんやから~」
「こっちだって――」

ブッブーーッ!!

と路上で言い合っていると、車にクラクションを鳴らされた。

「おいっ、道路のド真ん中で遊んでるんじゃねーよっ!!」

助手席から顔を出した覆面姿の女が怒鳴る――ふ、覆面?

「……っ、ひょっとして、アンタたちもご同業?」
「……ッ?」
「良かった~、なぁなぁ、温泉行くんやろ? うちらも乗せてってくれへん?」
「あァ? なんでそんな――」
「……いいわよ。乗って行きなさい」
「ハァ? おい、ガングロ先輩――」
「それとも、このまま轢いていく? それでもいいけど」
「…………」

先の少女が【VT-X】の〈オースチン・羊子〉であり、この物騒な話をしている二人組が【プロレスリング・ネオ】の《森嶋 亜里沙》と〈ブラッディ・マリー〉だと分かったのは、轢き逃げされずにヒッチハイクを成功させた後のことである。

そしてたどりついた温泉では、また新たな出会いが待っていたのだが……それは後ほど。


◇◆◇ 3 ◇◆◇


湯治を行ったリアは、以前よりはずいぶんと快方に向かっていた。
が、まだ全快とはいかない。
おまけに、現在は映画の撮影に参加しており、リング復帰はまだまだ先のようだった。


▼日本 長崎県北松浦郡 『ソニックキャットvsゴリラ』ロケ地


この現場では、国内ジュニアの雄・【東京女子プロレス】の《ソニックキャット》と初対面。

「お~、クイーン・サドンデスだお! 例のアレ、見せてほしいのさね」
「ソニックキャット!! アンタはコレで、DEATHっちゃいな!!」
「うわ~い、生DEATHッチャイナだお~~」

などと和気藹々といけたのだが、

「………………」

これも共演者である【パラシオン】の《桜井 千里》からは、少なからぬ威圧感を感じられた。

(うわぁ……やっぱうち、嫌われてるんやろか?)

桜井とは『ワールド夏の陣』でも手を合わせたが、反則三昧での大乱戦。
現在、ワールド女子とパラシオンは冷えた関係にあるだけに、空気が冷たいのは是非もないか。

しかし、撮影を共にしているうち、次第に打ち解けてきたのか、

「高倉さんに聞きましたが――」

高倉ケイも、チョイ役で出演していたのである。

「貴方は、鳥取出身だそうですね」
「あっ、は、はい。千里さんは、広島ですよね」
「えぇ。……勿体ない。パラシオンに来ていれば、私が鍛えてあげたのに」
「あ、あはは……」

それはそれで、ありがたいような、そうでもないような。

「っ、それにしても、千里さん、うちが言うのもなんですけど……」

およそ、芸能活動に精を出すタイプには見えない。
にも関わらず、こうしてプロレス以外のことにも取り組むのは何ゆえか?

「……出来るなら、私も修行だけに集中したいと思っています」

しかし、それだけでは、本当の強さは手に入らない気がする――と彼女はいう。

「さまざまな経験をして、新たな試練に挑戦し、人間として成長しなければ、本当に“強く”はなれない気がするのです」

ある人の受け売りですが――と、桜井千里は微笑し、

「貴方には、貴方の闘い方がある。……他人を気にせず、思うようにやってみたらどうですか」
「…………っ」

――せやな。うちは、うちが正しいと思ったことをしよ。

リハビリ・欠場中の今、目立った行動を取るのははばかっていたが……
桜井の言葉に、背中を押された気がした。
彼女の目が向けられているのは、新日本女子プロレス、福岡・九州ドーム大会である。

それは、先の『ワールド夏の陣!!!~大阪城アリーナ-3days-~ニューフェイスカップ』で優勝、勝利者インタビューで

『どっこい、こんなシケたメンツが相手じゃア、優勝するのは理の当然。
 こッ恥ずかしくて、優勝でござい……なんぞと喜べたものではございませんなァ――』

と煽ってみせ、さらには

『文句があるならそれも結構、いつでもかかって来なせぇ』
『こちとら天下の【新日本女子プロレス】、いつでもお相手して進ぜましょうや――』
 
とマイクで煽った女、〈フランケン鏑木〉こと〈鏑木かがり〉。

「……いつでも、お相手して貰おうじゃない」

ヒール同士とはいえ、己の団体の晴れ舞台であんなことを言われてはリアとしても面白くない 。
とりわけ、高倉を指して

――八百長試合で笑いをとってご満悦のワールドの芸人

と罵ったのは腹に据えかねる。

(いやまぁ、ケイちゃんのことはいいとして……)

あたかもワールド自体が八百長団体のような言い草は、聞き捨てならない。

「そもそも、あんなトーナメント……リアが参加しておけば……」

当日は自分のデビュー&ヒールターンのことで頭が一杯、乱闘にすら参加しなかったことは棚に上げるリアである。
幸い、九州ドーム大会当日は、リアの撮影はオフ。
しかし流石に、

「……ひとりで乗り込んだら、ボコボコにされそやな」

ワールド女子は只今『ワールド×ジャパンリーグ戦』ツアーの真っ最中、仲間を呼ぶわけにはいかない。
ましてや最近の新女は《越後 しのぶ》らの【ジャッジメント・セブン】が勢いを増していて、

――――すごくピリピリしてます~☆

という【寿千歌軍団】の〈大空 ひだり〉からのメールも届いている。
文面にはピリピリ感は皆無だが。
そんな所に単身乗り込むのは、無謀と言うしかない。

「……でも、リアには切り札が……」

そして当日――


▼日本 福岡県福岡市中央区 九州ドーム


5万人以上の大観衆を呑み込んだ新女・九州ドーム大会。

(っ、こら、やばいなぁ……)

デビュー戦の大阪も大会場ではあったが、あれはホームという安心感があった。
どっこい、ここは完全な敵地だ。

(けど……っ)

もはや、サイは投げられたのだ。

そして興行は進み、“お目当て”の試合がはじまった。


<夜叉紅蓮残党・共食い4WAYマッチ>

 《村上 千春》vs《村上 千秋》vs《サキュバス真鍋》vs〈フランケン鏑木〉

*敗者は新女を追放される


ニューフェイスカップトーナメントで優勝した鏑木なのに、この扱いの酷さはどうであろう。
ヒールユニット【夜叉紅蓮】は、トップが姿を消して以来、迷走を続け、今やメンバーは鏑木ひとり。
リング上では、すでに脱退ずみの3人が、残った鏑木に集中攻撃を加えている。
1vs3という圧倒的劣勢でありながらも、歯を食いしばって立ち上がる鏑木。
顔面が変形するほど殴りノメされ、血だるまにされても、なお倒れず、立ち上がっていく。
なおも試合という名の制裁が続く――
と、ふいに画面が暗転した。

「…………ッ?」

停電――ではない。
闇の中、大音量の爆音が鳴り響く。
これは……大型バイクの音。

「ッ!!」

スモーク煙る入場ゲートに浮かび上がる、巨大なバイクを駆る人影――

――や、八島だッ!!
――何だ、あの覆面!?
――地獄から舞い戻ったんだ! ゴーストライダー!!

「………………」

覆面の女は無言のまま、懐から取り出した【夜叉紅蓮】のTシャツを放り投げる――
と同時に、鮮烈なパイロ(火薬仕掛け)が炸裂、一瞬にして焼き尽くした。
焦げ臭い匂いに場内騒然とする中、リングにカメラが戻ると、乱入者が暴れていた。
派手なメイクに黒いドレスという、その異様な風体の女は――

「テメーらは、これでッ! Deathッチマイナーーー!!!」

ヌンチャクを振り回し、村上姉妹らを次々とリングから追い出す。

――だ、誰だ、アレ?
――よく分からんが、結構美人だ!!

『初めまして、新女ファンの皆様――――』

マイクを取り、優艶とお辞儀してみせた彼女が誰であるか、もはや問うまでもない。

『自己紹介させていただきますわ――ワタクシ、ワールド女子のΣ リアと申しますの』

――しぐまりあ? 誰?
――オレ知ってる! あのエロいねーちゃんだろ?

どうやら、ワールド以外のプロレスファンにはまだまだ認知度が低いようだった。

そして、ようやく体を起こした鏑木と対峙する。

『本日は、あちらにおられる《アドミラル闇雲》さんにご協力いただき……
 鏑木さん――あなたに言いたいことがあって、ここまで来ましたわ!』
「…………ッ?」

『先日のワールド夏の陣! ニューフェイスカップトーナメント、優勝おめでとう――
 そしてあのマイク――リア正直さに感心しましたわ……確かに、シケたメンツでしたものね。

 それにニューフェイスは数おれど、真にその名にふさわしいのはあなたではなく――
 このワタクシ、Σ リアだけですもの!

 そして、我がワールド女子のことをよくも八百長なんて言ってくれましたわね?
 文句があるならいつでもお相手してくれるんでしょっ! 今ここでリアがお相手しますわ!』
「!!」

リアのクレイモア(水面蹴り)が鏑木の足を払い、更に顔面をキックがとらえる――
たまらずダウンした鏑木を見下ろし、大ブーイングの中、

『……次は、ワールド女子のリングで待っていますわ!!』

と叫ぶや、リアはマイクを投げつけ、そそくさと花道を逃げ帰った――

「……手を貸していただいてありがとうございます、闇雲さ…いえ、八島さん」
「………………」

入場ゲートで、リアが話しかけたのは闇雲……否、【プロレスリング・ネオ】との抗争に敗れ、欠場中の《八島 静香》である。
例の温泉で湯治中、やはり治療に訪れていた彼女と偶然知り合い、同じ山陰出身ということもあって親しくなったのだ(もっとも、リアが一方的に話しかけていただけのような気もするけれど)。
天下の新女の興行にすんなりと乱入出来たのも、新女の影番と呼ばれる八島の協力のおかげであった。
もっとも、八島には八島の思惑があったようでもあるが。

(これで鏑木さん、ワールドに来るやろか?)

Σ リアは、期待に胸を膨らませていた……



【ワールド女子プロレス】(World Woman Pro Wrestling)――
日本の、老舗女子プロレス団体である。

かつては“東の新女、西のワールド”と呼ばれたほどの勢力を誇った。
その長い歴史の中では、幾度となく危機に見舞われてきた。
老舗ならではの底力もあり、これまで難局を乗り切ってきたわけだが……

「……ちょっと、ヤバいかも、ね」

痛々しい包帯姿の《ファルコン香月》が、冴えない顔で言った。

ワールド女子が威信をかけて開催した『第一回ワールド×ジャパンリーグ戦』――W×Jリーグ。
結果だけ見れば、神楽がドイツの強豪《ノーラン・ワンツ》を下し、優勝を果たした。
が、興行的には――
プロレス史に残る、記録的な大失敗と終わった。

当初予定していた大物レスラーのブッキングに失敗したり(《ダークスターカオス》やスナイパーシスターズなど)、主要レスラーが負傷したり(《メデューサ中森》、香月)といった事態に加えて、寿文化総合ホール大会にいたってはダブルブッキングが発覚、急遽大会が中止になったり――と、惨憺たるありさま。
当然、観客動員も厳しく、各会場には盛大な閑古鳥が鳴いた。
(これはマッチメークの問題もあるが、大規模イベントに慣れていないフロント側の不手際も大きかった。チケットの手配ミスなどの問題も多々起きていたのである)

開幕戦:東京都=『有明スポーツアリーナ』(観客数:1000人(主催者発表)/収容人数:20000人)
(2):宮城県=仙台市グランドアリーナ(観客数:700人/収容人数:10000人)
(3):北海道=キター!!アリーナ(観客数:1700人/収容人数:10000人)
(4):愛知県=名古屋レインボープラザ(観客数:1400人/収容人数:/12000人)
(5):大阪府=門真なにわドーム(観客数:1500人/収容人数:10000人)
(6):京都府=寿文化総合ホール(中止)
(7):福岡県=福岡ポートメッセ(観客数:1000人/収容人数:15000人)
最終戦:広島県=若鯉Zun-Zunスタジアム(観客数:13000人/収容人数:33000人)

一応、最終戦はそこそこの動員を果たし格好はついたが、それも招待券を大量にバラまいたおかげとあっては是非もない。
結果、どうなったかと言えば――

――ワールド女子、解散!!
――ワールド女子、よくて身売り!!

そんな報道が、日々メディアを賑わせるようになった。
実際、既に“買い手”は名乗り出ているという。
それが《寿 千歌》の寿グループであると判明しても、さほど世間は驚かなかった。

「伝統ある老舗団体・ワールド女子プロレスを守ることは、プロレス界の義務というものですわ――――」

千歌はそうのたまったが、ワールド側、とりわけ選手たちの感情は収まるものではない。

「盗人猛々しいにもほどがあるんじゃない、センカちゃん――」

神楽紫苑が吐き捨てるのも無理はなかった。
そもそも、W×Jリーグの開催には、寿グループからのプッシュも多々あったのである。
カオスのブッキングや、他の大物レスラーを招聘するに当たっても、大きく関与することになっていた。
が、いざ本番となると、カオスはもとより、知名度のあるレスラーは全く呼べなかった。
のみならず、寿グループの仲介で提携したWWCAからも、人気選手は派遣されずじまい。
そこにワールド自体の問題が重なっては、成功などしようはずもなかった。

(最初から、ワールドを潰す気だったってこと? ……)

そんな風に考える者が少なくないのも、道理。
ワールド夏の陣に全面協力し、成功に導いたのは、つまるところ……増長させるための、布石であったか。
ともあれ、ことここに至っては、何もかも手遅れ。

ワールド女子のレスラーたちは、己たちの行く道を、いやがうえにも見定めなければならない事態に立たされていた……

 


実は同郷

2012-05-24 | 企画・特集

 

Σリアの出身地は鳥取県です

(具体的には)中部の倉吉市~羽合町近辺をイメージしています

そんな鳥取県倉吉市は某プロレスラーの出身地です

その選手の名は谷口周平選手

そう

今をときめく

マイバッハ谷口選手です

ちなみに

「Σリア」デビュー編の「天使轟臨」第三話をUPしたのは2012年2月20日

マイバッハ谷口選手の初登場は同年2月25日

少しだけリアの方が登場早かったりします

(谷口のヒールターン自体は2月14日の試合中ですが)

ですがマイバッハ谷口選手の活躍は皆様ご存知の通り

リアにも谷口選手に負けないように活躍させたいと思います

 

そんなこんなで当ブログは今後リアと同郷の

マイバッハ谷口選手を応援します

 


天使轟臨・キャラ紹介その四

2012-04-20 | 企画・特集

Σリアの入場シーン

(別ヴァージョン)を公開します

おまけ(勝利アピール)

一部で「戦う ゴス娘」と呼ばれるリアですが

(公称)171cmですからね

会場で遭って

「リア デカいな」とか言わないでね

 

ちなみに

リアのデビュー後の

3サイズは90・59・90(公称)です

 


天使轟臨 「Σリアの野望」 その三

2012-02-22 | 企画・特集

お久しぶりです

天使轟臨 ~Angels Flying in the Supercell~第三話公開しました

まず STR様 お疲れ様です

今回は前二話に比べ

間が長かったこともあり

心配した部分もありましたが

期待に違わぬ出来映えかと 思います

 

今回は「Σリア デビュー編」ということで

リアのプロレスデビューまでが描かれましたが

無事ヒールとしてデビューできてよかったと思います

 

あと デビュー前に

プロテストがあるところが

実際の団体ぽくて良かったと思います

 

ラスト

ワールド女子プロレスの、明るい未来――
この時、それは確かに、リアの視線の先にあるものであった。

読んだ瞬間

「このまま終わりでいいんじゃないかな…」

なんて不謹慎なことを(一瞬)考えました

 

リアの野望とその戦いは始まったばかり

 

今後の展開にご期待ください!

 

あとアレですね新人アンケート

多忙な時期だったため答えずじまいでしたが

あれから少し余裕ができたので

機会があれば公開したいと思います

それでは!!


天使轟臨 ~Angels Flying in the Supercell~第三話

2012-02-20 | 企画・特集

西暦20X1年、夏――

渾然となって馳せ巡る数多の運命の輪は、まだ見ぬ未来へとただ一心に突き進む

歴史を人間が作るのか、人間がたどった轍それそのものが歴史なのか?

されど一度、四角いリングの魔性にとらわれたならば、もはや引き返すことは叶わぬのだ

少女たちの流す汗も、涙も、すべては闘いのキャンバスを彩る画材にすぎぬのであろうか――

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■ワールド女子プロレス SIDE■
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◇◆◇ 1 ◇◆◇

 ▼ 日本 大阪府 ワールド女子プロレス・オフィス

「ちょっとちょっと。……それ、本気?」

思わず《神楽 紫苑》が疑ってしまったのも無理はない。
きたる【ワールド女子プロレス】年間最大のビッグマッチ『ワールド夏の陣』。
その会場が、収容人数MAX16000人の『大阪城アリーナ』。
それも驚きだが、

「3daysってさぁ……3日にやる、ってことじゃ……ないわよねェ」
「……お察しの通り、3連戦ということよ」

《芝田 美紀》はため息をついた。

『ワールド夏の陣!!!~大阪城アリーナ-3days-~』

大阪城アリーナでの興行は、初めてではない。
が、それはワー女がそれなりの規模を持っていた時代の話だ。
――《ドレッド宮城》
――《コンドル池上》
――《サタン蝶子》
――《鶴見 さやか》
……そして《サンダー龍子》。
錚々たるスターたちが揃っていた、あの時代。
もうずっと前の話である。
あの時代とは情勢が違う上に、3連戦とは、

「……うちの社長、とうとうヤケのヤンパチになっちゃった訳?」
「そうではないわ。……勝算は、確かにあるのよ」
「確かに、【WWCA】と組めたのは大きいけどさぁ。それだけじゃねぇ」

少し前まで新女と業務提携していたWWCAが、ワールドと手を組んだ理由は定かでない。
しかし以前は関係が良好だった時代もあるので、そこまで不自然という話ではなかろう。

「それ以外にもあるのよ、プラス材料はね」
「あぁ、【パラシオン】との対抗戦? それなりには期待できるだろうけどさぁ」

先日の興行で、偶発的に? 勃発したパラシオンとの因縁。
今後本格的な対抗戦が始まることになっているが、パンチの弱さはいなめない。

「そう、パラシオンの件……それと、寿家」
「コトブキ……あ~、センカちゃんねぇ」

【寿千歌】――
その名は関西の格闘業界では、良くも悪くも知られた名である。
最近は、ユニットを結成して新女のリングに上がっていたはずだが……

「新女がアメリカ遠征に行くのは知ってるでしょう?」
「えぇ。豪気な話よねぇ、全く」

千歌軍団はそのメンツに加えられなったため、当初、関西での自主興行を計画していたらしい。
が、そうなるとワールドと客を食い合うことになる。
ならばいっそのこと、

「手を組んで、一緒にやろう――ということになったようね」
「ふ~~ん……なるほどね。確かに、それだけコマが揃えば、オオバコでもやれるかも」

ようやく愁眉を開いた神楽である。

「そうそう。そろそろ、あの子たちにテストを受けさせないと」
「あぁ、ワールド三羽烏ね」
「……もっとクールな呼び名を考えた方がいいわね。トリプルW、とか」
(どっちもどっちだと思うけど)

――その後、新人三人のチーム名は“Get World”と決定した。

 ▼ 日本 大阪府 ワールド女子プロレス・道場

大一番を控え、ワールドの道場には多くの所属外選手が顔を出している。

再来日した《アリス・スミルノフ》(EWA)。
【WWCA】からは、カオスに次ぐヘビー戦士《レディ・コーディ》、WWCAタッグ王者の《リリィ・スナイパー》&《コリィ・スナイパー》のスナイパー・シスターズや、ジュニア王者の《エミリー・ネルソン》ら。

そして、【寿千歌軍団】の面々。
そのうち〈大空 ひだり〉は未デビューのため、今回の合同興行でのデビューを希望しているといた。
そこでワールド、千歌らの間で企画されたのが

『ニューフェイスカップトーナメント』

である。
『ワールド夏の陣』の企画の一つとして、将来の女子プロ界を担う若手が団体の垣根を超えて集結、優勝を競うというもの。
新人だけに交渉もしやすく、他団体からの参戦者も続々と決定していった。

千客万来なワールド道場、新たにやってきたのは、関東から来た二人連れである。

「っ、よろしくお願いします、《氷川 砂響》と申します――」

極悪レスラー《SA‐KI》の中の人とは思えぬ、柔和な女性。
千歌軍団の《ライラ神威》と親交が深いことから、今回の合同興行に参戦することになったというわけ。
その付け人らしく同行してきたのは、ひときわ目立つ美貌をもつ黒髪の少女である。

「はじめまして、〈黒河 さとみ〉です。《フレイア鏡》師匠の弟子です!」

師である鏡が先の龍子戦で負傷・入院を余儀なくされたため、同じヒール軍団のSA‐KIに従って来たという。
彼女もまたデビュー前であり、ワールドのリングで初陣を飾ることになろうか。


◇◆◇ 2 ◇◆◇


 ▼ 日本 大阪府 ワールド女子プロレス・オフィス

「……どう思う?」
「う~ん、まぁ、ヤエ(八重樫)と高倉はフツーでいいんじゃない? 前座からスタートってことで」

新人たちの売り出し方について、社長から問われた神楽が答える。

「やはり紫熊だな。……どう売り出すか」
「華があるのは確かですが、いきなりトップで使うのは、荷が重いと思いますわ」

これは芝田である。
当の〈紫熊 理亜〉が付き人を務めているだけに、発言には重みがある。

「ま、せっかく話題性あるんだし、活かしたいのは分かるけどねェ」

理亜はデビュー前ながら、すでにファンクラブが設立されているほどに注目度が高い。
うまく転がせば、次代のスターとして売り出すことも可能であろう。

「まずは前座で切磋琢磨させて、おりを見て抜擢する方が、あの子にとってもいいと思いますわ」
「本人の志向と適性はまた違うもんねェ……」

理亜自身は《フレイア鏡》のようなヒールを目指しているらしいが、それが本当に彼女に向いているかどうかは分からない。
案外、正統派タイプがしっくり来るかも知れないのだ。

「……話は分かるが、悠長にしてはいられない。活かせる素材は、全て使い切りたい」
「…………」

社長の気持ちも分かる。

「だったら、こういうのはどうかしらね……?」

 ▼ 日本 大阪府 某スケートリンク

対抗戦に備え、大阪市内のスケートリンクでスケート特訓に励む芝田――
元フィギュア五輪候補だった彼女にとっては、原点に帰るという意味があったのであろうか。
もっとも、付き合わされる理亜からすれば、

(こんなんプロレスと関係ないのに……)

とボヤきたいところであったろう。

「今後の話だけどね」

休憩時に、芝田が切り出した。

「今、中森さんがヒールをやっているけれど……」

一人で暴れ回るだけでは、いかにもツカミが弱い。

「神楽さんを完全にヒール路線にする方向で進んでいるわ」

神楽はベビーという訳でもないが、といって完全にヒールな立ち位置でもない。
あえていうなら『アウトロー』的なポジションなわけだが、こうしたレスラーそれぞれの立場の曖昧さもワールド低迷の一因、かも知れない。

「今後はベビーとヒールを明快にして、抗争劇をしっかり見せていこうという訳なの」
「ははぁ、なるほど」

それはそれで、理亜にとっては悪い話でなかったが、

「貴方たち3人は、正規軍の救世主ユニット“Get World”として売り出していく予定よ」

と、なると、あまり喜ばしい話ではない。

「貴方には持って生まれた華があるわ。それを生かす闘いをすれば、きっとエースになれる」
「は、ぁ……」

いまいち解せない話ではあるが、今の立場では自己主張は難しい。
だが、

(既成事実を作ってしまえば――)

ガタガタ言われることもあるまい。

 ▼ 日本 大阪府 ワールド女子プロレス・道場

そこで理亜、ひそかに神楽に接触した。

「あの、ヒールユニットの件なんですけど――」
「ん? 何ソレ? お姉さん、ベビーとかヒールとか、興味ないのよねぇ~~」

露骨にはぐらかされてしまった。ぐぬぬ。

(っ、それなら……)

現・ヒールの中森に話を持っていくしかない。

 ▼ 日本 大阪府 ワールド女子プロレス・道場近郊

中森がランニングに向かう所へ同行し、話を持ちかける。

「……その話か」

特に否定もしない中森。
自分もヒールでやっていきたいことを訴えると、

「…………」

黙然としていた中森であるが、

「……考えておこう」

と、その場の話は終わった。

 ▼ 日本 大阪府 ワールド女子プロレス・道場

内心悶々としている中、新人のプロテストが開催された。
ワールド女子ではこのテストに合格しなければ、デビューは認められない伝統である。
内容は先輩選手とのスパーリングで、もとより勝ち負けより内容が重視される。

「よほどのことがなければ不合格にはならないわ。気楽にいきなさい」

と芝田から言われた理亜であったが、相手が

――《神楽 紫苑》

となると、流石に緊張せざるをえない。
何せ現チャンピオンであり、かなり当たりも強い。
うかうかすれば、デビュー前に病院送りとなりかねないのだ。

「まぁ、師匠は無茶はしねーさ。オレなんか中森さんが相手なんだぜ……」とボヤく同期の〈八重樫 香澄〉。
「そうですよ~。アタシだって池上サンだし……神楽さんなら一番空気読んでくれそうだし」と、これは〈高倉 景〉。

ヒールターンして得体の知れないキャラになってしまった中森、復帰したばかりで勘の戻りきっていない《コンドル池上》……どうも、この団体は新人に厳しすぎるのではなかろうか。

……果たして、テストは惨憺たる結果となった。
神楽に顔面がボコボコになるまで痛めつけられたあげく、最後は片エビ固めでえげつなく搾られタップ。
それで終わりかと言えばそんなことはなく、無理矢理引きずり起こされ、時間いっぱいまで“可愛がられ”る。
ふだん見せぬ神楽の殺気あふれる攻めに、道場の空気が凍りつくなか、ようやく終了のゴングが鳴る。
理亜が最後まで心折れず耐え切れたのは、鍛錬によって得た肉体の頑丈さのおかげであったろう。

「なかなかやるわねぇ、お嬢ちゃん」

テスト後、洗面所で口をゆすいでいた理亜に、神楽が呑気に声をかけた。

「……っ、あの……」
「『合格』よ」
「え……?」

ニヤリと笑ってポンと肩を叩き、神楽は立ち去った。
それがプロテストの合格なのか、それ以外のものなのかは分からない。

ほどなく理亜に、正式なプロテストの合格と、デビュー戦のカードが伝えられた。

◆◆ 紫熊理亜デビュー戦 ◆◆

 〈紫熊 理亜〉(ワールド女子プロレス)

 VS

 《グローリー笠原》(フリー)

(……ごく普通やな)

と、言うしかない。
もっとも、他の同期がシリーズ開幕戦の滋賀大会でデビューするのに対し、理亜のみ『ワールド夏の陣』一日目、それも休憩前という試合順である。
それだけ期待度が高いと言う事であろう。
もっとも、喜ばしい話ではない。
さっきの雰囲気からして、てっきり神楽がヒール側に引っ張ってくれるのかと思ったのに……

(結局、アイドル路線やれってことなんかなぁ)

 ▼ 日本 大阪府 ワールド女子プロレス・道場

「おめでとう、理亜さん。デビュー決まったんだって?」

悶々としつつ練習をこなす理亜に、そう話しかけてきたのは黒河さとみ。
フリー参戦のSA‐KIの付き人として同行している若手で、近々ワールドでデビュー予定。
レスラー志望とは思えぬ美貌の持ち主だが、かつてはアイドルとして活動していたという。さもありなん。
人なつっこい性分で、理亜たちワールド勢とも積極的に交流していた。

「まぁ、一応……」
「? あんまり嬉しそうじゃないんですね」

そこで、ヒール志望なのにままならない件を話す。

「はぁ~……なるほど」
「さとみさんもそうなんやろ? なんせ、鏡さんのお弟子なんやし」
「それはもちろん、そうですけど――」

さとみ的には、ヒールは強くなくてはならない、という考えがあるらしい。
弱いレスラーが強がって見せても、サマにならない。
逆にやられてサマになる《サキュバス真鍋》のようなタイプもいるとはいえ。

「だから、今はじっくり鍛えていこうかなって」
「……ははぁ」

そういう考えもあるか……と思う理亜である。

やっぱり新人の間は我慢するしかないかも……と思っていた矢先。

「あ、どうも、マリアさん~~」
「リアは、マリアじゃな……ぃ!?」

能天気な声に振り向き、思わずギョッとする。
そこにいたのは、髪をオールバックに極め、黒づくめのスーツを身に着け、おまけにサングラスをかけた身長180はあろうというド迫力の女。

(ま、マフィア……!?)

と、思ってしまったのも無理はない。

「あれ? あ~、やっぱりこれじゃ分かりません~?」

とサングラスを取って呑気な笑みを浮かべるのは、

「か、要さん……?」

〈佐藤 要〉――アリス・スミルノフの通訳だか付き人だかで、このワールド道場に出入りしている女性。
先日【パラシオン】でデビューしたばかりだと聞いていたが……

「な、なんで、そんな格好……?」
「あ~、うち、試合だとこういうキャラでいっとるんです」

この悪の女幹部さながらのルックスで、〈アンビバレンツ佐藤〉と称し、リングに上がっているというのだ。
しかし、パラシオンといえば格闘技色の強い団体。
それなのに、こんな芸風でいいのだろうか?

「まぁ、ちょっと渋い顔されましたけど、お前がええんならええんちゃう? みたいな感じでしたねぇ。お客さんも、結構喜んでくれたし」
「…………っ」

その笑顔に、理亜は思う所があった……


◇◆◇ 3 ◇◆◇


 ▼ 日本 大阪府 大阪城アリーナ

そして迎えた『ワールド夏の陣』、初日――理亜の、初陣。

 ×紫熊 VS 笠原○
 (11分28秒:ジャンピングネックブリーカー→体固め)

試合自体は笠原が引っ張り、理亜の見せ場もそこそこ作りながら、一般的な『デビュー戦』をこなした。
必殺のクレイモア(水面蹴り)が決まった時は、笠原の受け身の見事さもあいまって、大きな歓声を引き起こして見せた。
試合後、場内からあがった拍手は、健闘をたたえるに十分なものであったろう。

もっとも、試合後の理亜に笑顔も安堵もない。
この先、もう一仕事残っているのだ。

この日は、パラシオンとの対抗戦・第一ラウンド。

<セミファイナル>

《メデューサ中森》&《SA‐KI》(ワールド側ヒールユニット)

VS

《桜井 千里》&《ソニア稲垣》(パラシオン)

<メインイベント>

《神楽 紫苑》&《芝田 美紀》(ワールド女子プロレス)

VS

《葛城 早苗》&《沢崎 光》(パラシオン)

…………

セミファイナル、中森組VS桜井組は大荒れとなった。
若手の稲垣は早々にリタイアさせられ、桜井がほぼローンバトルを強いられる。

「クッ! この程度で……っ!!」
「ヒャーッハッハッ!! これでエース様とは大笑いだよッ!! そらっ、観客席の豚どもに、そのみっともないツラ見せてやりなっ!!」
「~~~~ッ!!」

更に中森がホームセンターで買ってきたばかりの新兵器・バラ鞭(柄の部分で数本の革紐が束ねられているタイプ。一応、メデューサをイメージしている)で桜井の尻を鞭打つなどやりたい放題の大暴れ。

最後は中森組の反則負けとなったが、意気揚々と引き上げる彼女たちは勝者気取りもいいところであった。

さて、そんな流れからのメインイベント。

怒りに燃えるパラシオン側が優位に進めるが、途中中森が介入、またもワールドの反則負けとなる。
余計な真似を! と中森に突っかかる芝田。
しかしパートナーの神楽が裏切り、芝田に襲い掛かる。
そこへデビュー間もない新人たちが現れて芝田を助け、本隊vsヒール軍の図式が明解になる――

というのが、会社側の描いた絵図であった。
おおむね順当に進んだが、ただひとつの誤算は……

「悪いけど、私、こっちの方が向いているみたいなの――さっさと消えなさい、このポンコツ!」

理亜が師匠の芝田にジークンドー仕込みのキックを見舞ったり、同期の高倉を場外へ投げ飛ばしたりと大暴れ。
神楽・中森らのヒール軍への合流を表明したのである。

この騒ぎで、あたかもダシにされたようなパラシオン勢も怒ってリングに上がるなどし、大混乱。

紫熊理亜――否、〈Σ(シグマ) リア〉、真のデビューは、こうして始まった……

その後の【ワールド夏の陣】にはヒール軍『B.G.W』の一員として参戦し、中森や神楽らと組んで闘った。

◆◆ 紫熊理亜・真のデビュー戦 ◆◆

 《神楽 紫苑》&《メデューサ中森》&〈Σ リア〉(ワールド女子プロレス)

 VS

 《桜井 千里》&《葛城 早苗》&〈坂林 玲〉(パラシオン)

リア得意のジークンドーも、桜井や葛城といった国内屈指のストライカーが相手では分が悪かったが、最後は神楽が坂林を仕留め、6人タッグながら初勝利も収めた。

 ○神楽 VS 坂林×
 (10分31秒:STO→体固め)

スキル不足は明らかだったが、神楽らのサポートのおかげもあって、Σリアは大いに注目を集めたのである。

夏の陣、興行としては三連戦ほぼ満員の観客を集め、上々の結果を残した。
プロレス週刊誌の最大手『週刊レッスル』が表紙にうたった“ワールド復活!!”の見出しは、決して大げさではなかったといえよう。
気をよくしたワールド経営陣は、さらに大きな仕掛けを考えているという。

ワールド女子プロレスの、明るい未来――
この時、それは確かに、リアの視線の先にあるものであった。


天使轟臨キャラ紹介・その三

2012-01-26 | 企画・特集

久しぶりの「天使轟臨」キャラ紹介は

リア試合コス&新入場シーンの紹介です

試合コスは当初某戦隊ヒーロー作品の某女幹部をモチーフにしてクリエイトしました

完成した(フレイア鏡風の)ソレを公開する予定でいたのですが

 

最近日曜朝の某ヒーロードラマに

ジークンドー使いの青いライダーキター!!!

※ちなみにリアはジークンドー使い(天使轟臨第一話参照)

あまりのカッコ良さに

早速デザインをコスに取り入れよう!

…と思いましたが

前のデザインも捨てがたかったので悩み

 

両方取り入れました

 

その結果がこちら↓

わかりづらいのでクリエイト画像で

 

左が当初の案で右が新しく盛り込んだ部分です

 

「両方取り入れました」感が伝わりますでしょうか?

キカイダーみたいですがコレはコレで満足

新入場シーン

 

そんなワケで隕石に乗ってキます

 

ベルト部分はニューデザイン

ちなみにこの黒いドレスとスカートは入場衣装です

こんな衣装でプロレスする娘はいない…と思う

 

試合コスも紹介しましたので

次回は技を紹介する予定です

 

おまけそのいち

ちょっとだけ試合画像

ジークンドーの構えから

鋭い打撃で試合を組み立てます

ヒールタイプなのでダーティファイトもお手の物

 

 おまけそのに

入場衣装の全体像

つづく

 


天使轟臨「Σリアの野望」そのに

2011-12-13 | 企画・特集

そんなわけで

「天使轟臨 ~Angels Flying in the Supercell~」公開いたしました

ここからはワタクシの感想を手短に

プロレスデビュー前にもかかわらずファンクラブが出来てまいました

嫌われてナンボのヒールにファンクラブが出来てどうするんだよ!

と思いましたが

最近「ダークヒーロー」とか流行っているし 

良しとしましょう

 

今回一番ショックだったイベントは

「成瀬唯のフリーランス」です

いったい何があったのか?気になります

 

気になるといえばパラシオンからの練習生にさらっと名前を間違えられたリア

しっかりしろ

 

次回はいよいよプロレスデビュー

はたしてどんな形になることやら

 

ではまた

 


天使轟臨 ~Angels Flying in the Supercell~ 第二話

2011-12-13 | 企画・特集

<提供STR様>

西暦20X1年4月――

日本の女子プロレス界は、新たなうねりの中に飲み込まれつつあった。
――それは自然の流れ?
――あるいは何者かの意志?

そんな大きな渦とは関係なく……
それぞれの想いを胸に、それぞれのやりかたでプロレス界という荒波に飛び込んだ少女たち。
彼女たちの行方はいかに――

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■ワールド女子プロレス SIDE■
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◇◆◇ 1 ◇◆◇

――『週刊ギブアップ』です。本日はよろしくお願いします。

神楽紫苑 はいどうも。どうでもいいけど、相変わらず縁起でもない名前ね。

――……。さて、チャンピオンになって半年ですが、何か変わったことは。

神楽 そうねぇ~、なんだかんだで名前は売れてきたかも。たまにはテレビにも出られるし。

――なるほど。知名度が上がってきた、と。その割に、『一兆円トーナメント』(※1)への招待状は届かなかった模様ですが……

神楽の付き人 あぁ? てめぇ、神楽さんディスってんのか!

――ひいっ!? い、いえ、そんなことは決して。

神楽 まぁまぁ。ごめんなさいね~、この子ちょっと気が荒いのよね。言葉遣いに気をつけないと、ダブルアームスープレックスかけられちゃうかもよ。

――き、気をつけます。

 ※1 一兆円トーナメント=JWIがブチ上げた企画。各プロレス団体のエース選手に招待状を送りつけ、優勝を争わせようというもの。その賞金が一兆円だといわれる。

神楽 まぁ、ホントに一兆円くれるなら、出てもいいんだけどなぁ~。これってマジなの?

――さ、さぁ。でも、市ヶ谷グループの力なら、不可能ではないかと。

神楽 へぇ~、景気いいのねぇ。ウチにもそういう太っ腹なスポンサーついてくれないかしら。

――え~、話を変えまして……同時期に、東京女子が【GPWWA】(※2)の設立を提案していますが、これについてはどうお考えで?

神楽の付き人 東京女子……ッ。

――な、何かっ?

神楽 あぁ、気にしないで。この子、東女にはいい思い出ないらしいのよね~。で、なんだっけ?

――じ、【GPWWA】についてですが。

 ※2 【GPWWA】=女子プロレス界における統一コミッション。

神楽 あ~、あんまり良く知らないのよね~。な~んか、会社の方は乗り気みたいだけど。
――これが設立されたら、タイトルやルールの統一がなされるかも。

神楽 へぇ。それならそれで、誰が一番強いかハッキリする訳ね。いいんじゃない?

――ですが、新女は恐らく参加しないでしょうから、実質、新女潰しのための同盟では? とも噂されていますが。

神楽 ふ~ん、そうなんだ。ま、いいんじゃない。喧嘩は派手にいかないとね。

………………

――ところで、ワールドは経営危機が取りざたされていますが、大丈夫なんでしょうか?

神楽 う~ん、ぶっちゃけあんまり大丈夫じゃないかもね。

――そ、そうなんですか?

神楽 まぁでも、若いのも入ってきたし、頑張ってくれるんじゃない?

――は、はぁ。


◇◆◇ 2 ◇◆◇


バシッ! ビシッ!!

【ワールド女子プロレス】の道場に、小気味のいい打撃音が響く。

「まだまだっ! そんなへっぴり腰では、お話になりませんわ!」
「……っ、ぜぇ、はぁ……っ」

確かに〈紫熊 理亜〉の蹴りにはキレが欠けていた。
が、既に一時間以上続けていることを考えれば、それも当然であろう。

《芝田 美紀》の付き人に指名された理亜は、練習においても彼女の相手を務めることが多い。

(リア的には、打撃よりもっとこう……インサイドワークを学びたいのに)

目指す所が《フレイア鏡》のようなヒールである以上、正攻法な強さはさほど望んでいないのだけれども、新人の身ではままならない。

「貴方なら正統派のエースになれますわ!」

とは芝田が良く口にする言葉だが、理亜にとってはありがたくない言葉である。
そういうのは、他の選手に任せておけばいいと思う。

(……とはいっても)

同期の練習生といえば、

「アヒーッ、オヒィーッ!!」
「元気一杯だな、高倉」
「ヒッ、アッ、アッアッアッ……オゴォーッ!?」
「そうか、まだ負荷が足りないのか」
「ア゛ッ!? アァ~~~ッ!?」

《中森 あずみ》のシゴキを受けているのは〈高倉 景〉。
理亜より5つほど年少だけに体はまだ出来ていないが、なんというか……

(……レスラーっちゅうより、お笑い向きやんなあ)

という感じである。
あるいはまた、

「せいっ! どぉりゃっ! オラァッ!! クソがッ!!」
「ヤエ、あんた無駄な力入りすぎ」
「っ、そんなこと言われてもっ!」
「そんなだからさぁ、元モデル相手に負けちゃうのよ」
「~~~~っ!」

《神楽 紫苑》に鍛えられているのは〈八重樫 香澄〉。
聞けば、かつては道場破りとして恐れられていたという。
先の入門テストでは理亜との練習試合で不覚を取っており、ライバル意識を抱いているらしい。

ガラの悪い道場破りに、レスラーより芸人に向いていそうなタイプ……
どうも、正統派というのは難しそうな連中ばかりであった。

(それにしても、フレイア様はさすがやな)

先日のニュースで、鏡が何者かに闇討ちされた、という噂を知った。
軽々と返り討ちにしたあげく、今度の【WARS】の大会では、《サンダー龍子》のベルトに挑戦するらしい。
やっぱりヒールといえども(いや、ヒールだからこそ)括弧たる実力は必要であるということか。

「今日はTV出演がありますの。貴方もついてらっしゃい」
「はぁ……」
「? 嬉しくないのかしら」
「いえ、そういう訳では」

正直、こういうことで時間を取られるよりは、練習していたい所だ。
とはいえ、付き人の立場では仕方がない。

そしてTV局に向かった理亜であったが、思わぬ事態が起こった。
たまたま番組プロデユーサーの目に留まり、アシスタントとして出演して欲しいと頼まれたのだ。

「え……でも……」
「いい機会ですわ。せっかくだから出なさいな」
「はぁ……」

ヒール志望の理亜としては、あまりこういう形で表に出たくはなかったが……立場上、断るのも気まずい。
渋々ながら、番組に出演することにした。
格別問題もなく収録は進行、無事に片付いた……

……と思いきや、番組が放送されるや、事態は一変した。
その美貌がネット上で話題を呼び、

「あの娘は誰!?」
「新人のアイドル!?」

とTV局に問い合わせが殺到。
そして彼女がワールド女子の練習生だと分かるや、今度はワールドに電話やメールが殺到した。

かくして、
『美しすぎる練習生』としてデビュー前なのに非公式ながらファンクラブが出来てしまった。

「凄いですね~理亜さん! 大人気ですよ!!」
「……『理亜ちゃん萌え~』とか『リアたんマジでリアル天使」なんて言われても嬉しくないんやけど……」

まるっきりアイドル的な扱いで、彼女の希望とは真逆の方向性を期待されてしまっているようであった。

「いい兆候ですわね。正統派アイドルレスラーとして売り出すのはどうかしら?」
「私のポジションが危うくなっちゃいますね……」

芝田がアイドルレスラーの《グローリー笠原》とそんな会話を交わしているのを聞いて、

(ちゃうねん……リアはそういうの目指してない……)

ひそかに頭を抱える理亜であった……


◇◆◇ 3 ◇◆◇


その後、八重樫や高倉がたくらんだ『中森イメチェン計画』でなぜか中森が極悪ヒールの《メデューサ中森》に変身したり、《成瀬 唯》がフリーに転向したりと、色々ありつつ……
ある日のこと。

「こんにちはっ、《沢崎 光》ですっ。よろしく!」
「……《葛城 早苗》だ。よろしく」

【パラシオン】の沢崎らが、出稽古にやってきた。
長身の女性を連れている。

「あ、この子は坂林っていいます。ほら、挨拶して」
「……〈坂林 玲〉(さかばやし・あきら)です。よろしくお願いします」

礼儀正しくお辞儀をする少女。
パラシオンの練習生であるという。

(パラシオン、かぁ)

地元に近いこともあり、ちょっとは入団を考えたこともあるが、格闘技色が強いだけにヒールは無理だろう……と断念したものだった。

(この子も格闘技系なんやろうなぁ)

何だか真面目そうだし、ちょっととっつきにくそうかも……

「私、高倉景って言います! え、高倉健に名前似てる? も~それ何万回も言われてきてて、もぉ~~耳にイカなんですよ~っ」
「は、はぁ……」

流石は芸人、遠慮のかけらもない。

「……それを言うなら耳にタコスやろ」

とりあえず乗っかっておく。

「そうそう、タコスタコス、こうくるくるっとね、包んでね、パックン……って違--う!」
「ぁ、あははは……」

やはりというか、こういう空気は苦手のようだ。

「あ、お疲れ様です、志熊さんですよね?」
「はい……?」

おっとりとした声に振り向いて、思わずギョッとした。

(うわ、大きい……)

さっきの坂林もそれなりに長身だったが、こちらはもう一回りくらい更に長身。
軽く180は超えているだろう。
年齢は……理亜よりすこし上だろうか。

「初めまして、私、〈佐藤 要〉(さとう・かなめ)と申します~」
「はぁ、どうも」
「パラシオンで通訳とか、色々やらせて貰ってまして……今日は、アリスさんのお付きなんです」
「ははぁ……そうなんですか」

これだけの体格がありながら、レスラーではなく通訳とは……何だか勿体ない。

アリスとは《アリス・スミルノフ》。
パラシオン参戦のため来日中なのだが、スケジュールが空いたのでワールドのリングにも上がることにしたのだという。
神楽とは旧知らしい。

「志熊さん、まだデビュー前なのにえらい人気あるんですよね~。凄いです」
「は、はぁ……まぁ」

そこは誉められてもあんまり嬉しくないのだが。

「私もちょっと練習させて貰いますんで、よろしくお願いします~」
「いえ、こちらこそ……」

何気なく会話を交わしつつ……
理亜は何となく、佐藤に親近感に似たものを感じていた。
単に関西弁同士だから? いや……

その疑問に答えが出たのは、その後行われた近畿興行でのこと。

ある試合でアリスのセコンドについた佐藤は、乱闘に巻き込まれて流血するや、普段の温和さをかなぐり捨てたように大暴れしてのけたのである。
血まみれで大立ち回りを演じる姿は、到底OLのものではない。
闘う者、レスラーのそれ。
しかも、明らかに――ヒールのスタイル。

(あの人も……!)

通じ合うものがあったのは、それゆえであったのか。
いずれ同じリングに立つ日が来るかもしれない、と理亜は漠然と感じ始めていた……


――そしてこの乱闘をきっかけに、ワールドはパラシオンとの対抗戦へ突入していくのである。

「練習生たち、なかなか頑張っているようだね」
「そうですわね。まずまず、という所で」

ワールド女子の社長室で、芝田と社長が話している。

「……夏までには間に合うだろうね?」
「えぇ。間に合わせて見せますわ。『夏の陣』までには」
「そう願いたいな」

ワールド女子、真夏の大一番――『ワールド夏の陣』。

「3人でユニットを組むというのもありかもな。山陰山陽地方出身の3人だから、『陰陽3』とかはどうだ?」
「……もう少し、考えた方が良さそうですわね」

つづく


天使轟臨「Σリアの野望」そのいち

2011-11-18 | 企画・特集

そんなわけで(遅くなりましたが)

紫熊 理亜「Episode1 天使轟臨 ~Angels Flying in the Supercell~」

公開でした

ここからは「Σリアの野望」として

ワタクシの感想等を手短に述べたいと思います

 

今回の結果を見て一番に思ったのは「リアがこんなに強いとは…」

 

年下の<高倉景>はともかく

”流浪の道場破り”<八重樫香澄>にスパーリングで勝つとは思っていませんでした

「ガチ相撲じゃあるまいし!どうして勝ったんだ?」とも思いました

(きっと凶器入りラリアットとかしたのでしょう)

しかもリアと八重樫は同い年だったんですね 

(リアもワタクシも)あとで知りました

 

とはいえ 頭を切り換えます 

今後はこの偶然を最大限利用して

強いイメージを前面に押し出します

 

今後リアは「普段はヒール 

でも本気を出せば道場破りすらKOする実力派新人」

ということで

 

では また