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かたつむりに化かされたシノギング

今年は出張シノギングをやりましょう!ということで、2021年のオープン以来凌アイテムの取り扱いをしていただいているサンカクスタンドさんのお二人を誘ってお泊りシノギングに行ってきた。実際にお泊りシノギングを体験してもらうことで、より深く凌・シノギングを理解してもらうためだ。

山のスキルは充分な二人だがいつものシノギングイベントと同じように説明をしながら進行する。まずは出発前の立ち話をしてから、凌ぎ始めはお決まりの獣道をずり上がる。

写真ではうまく表現できていないが、こう見えてなかなかの壁が200mほど続く。こんな時に頼りになるのはやっぱり凌ピッケル

1本西にもう少し凌ぎ安そうな尾根が見えているが、そっちには行かずに棘棘の藪藪を進むところが素晴らしい(笑)

過去の大雨の影響か、ざれた斜面を詰める。やはりシノギングのクライマックスは始めの一時間なのだ。

壁は続くが木々の隙間に見える富士山を眺めて息を整える。

ようやく傾斜が落ち着いて来ると、棘棘藪藪+常緑広葉樹の植生はいつの間にか気持ちのいい森に変わっていた。

780m圏でハンモックがいくらでも張れる広場が現れる。850m圏を過ぎると気持ちのいいブナ林も。そしてこんなに気持ちのいい尾根がずーっと続く。

真剣に地形図を読むSのS氏。大雑把に南西に伸びる尾根だが、その中で方位と緩急が細かく変化する、地図読みが面白い尾根だ。シノギングにはピッタリ!

前回までの雪山とは違って進むのが早い。凌ぎ始めてから3時間ほどで主尾根の稜線が見えてきた。

ふりかえると富士山。やまなみの向こうにありながら広い裾野を広げている。

ブナの木の下にうっすらと雪。

鹿柵の設置された尾根を辿る。

ここだけなぜか倒木だらけ。風の通り道?

それにしても二人のバックパック、ちいせーなー。そのうち凌アイテムで大きくなることを期待しよう。いつものヘビー級バックパックで必死に若い二人の後を追う。置いて行かないで〜。

ハンモックポイントの本命はもう少し先だが、保険のために気になる広場を見に行く。これを上がると1000m圏だ。

ブナの巨木があちこちに立つすごい広場はまるで公園のようにきれいだ。しかしブナの幹が太すぎてツリーストラップがまわせそうにない。

こんな具合にいくつか保険をかけながら本命のポイントへ。本命がダメだった時のために保険をかけるのは大事なことだ。

尾根沿いに進んでから途中で南に張り出す支尾根に乗るところがポイントだ。注意深く地形を観察すればそれは見えてくる。つまり、そのつもりで歩いているかどうかだ。

そうして辿りついた広場は本命にふさわしい広さとブナ林のある素晴らしい広場だ。馬酔木の藪じゃなくてよかった(笑)

我々は広場を行ったり来たりして、その中でも日差しの多い明るい一等地に荷を下ろした。まずはハンモックシステムを広げて、大雑把にその設営が終わるとすぐにSのS氏のハンモックがぶるんぶるんと物凄い勢いで回転し始めた。180rpmくらいだろうか?(笑)現地視察が甘かったのか、どうやら西風の通り道を選んでしまったらしい。天気予報では日付が変わるころまで風速5mほどの風が続くようだ。風の通り道のこの場所はおそらくそれ以上の風速があるだろう。SのS氏のハンモックは先ほどから狂ったようにぶるんぶるんしている。

この先夜も長いし、せっかく一夜を過ごすというのにずっとこの風に吹かれているのはちょっとなぁ・・・、という事で少々面倒ではあったが一旦撤収して風を除けてくれる林のもとに避難。先ほどよりも10倍くらい慎重に選んだのでもう大丈夫だろう。手際よく設営を終わらせる。

落ちていた枝を使ってバックパックを掛ける2人。洒落てんなー、このー。

うん?だれ?

だれだ?我々のハンモックまわりをうろついているのは・・・。

学ランにフルフェイスヘルメットのヤンキーかと思ったら、SのW氏だった(笑)

夕食作りと暖を取るために焚き木を確保。よく燃える檜の葉もね。

一夜を過ごす準備が整ったところで火起こしショーだ。メタルマッチで本当に火おこしができるのかを二人に実際に体験してもらう。用意したのは白樺の樹皮と麻紐。メタルマッチを上手にスパークさせて見事に着火。思わず笑みがこぼれる二人。こういった基本的なこともシノギングに必要な術に含まれている。

学ランにフルフェイスヘルメットのヤンキーは火遊びが好き。

ぬる燗にちびったつまみだけの私に対して、大盛の寄せ鍋+〆のおじやと冬のフルコースをたらふく食べた二人。ウッドストーブの傍らハンモックシステムにモグり込む。おやすみなさい。いい夢を。

昨日、このエリアに熊は生息していないという情報を得て安心したのか、いつものような悪夢を見ることなく熟睡できた。

我々のハンモックシステムは次の通り。

SのS氏 Travel Hammock、モグ500、ハンモックビビィ Tyvek

SのW氏 Travel Hammock、ウンカイ、ハンモックアンダーキルト240、ハンモックビビィ Tyvek

この俺  Travel Hammock、モグ350、ハンモックビビィ Tyvek

朝の気温はマイナス5℃ほどだったが三人とも寒さは感じなかった。

今回もまた、ハンモックビビィ Tyvekの底力を目の当たりにした。

朝は昨日のおでんの残り汁に豆腐を入れたスープ。二人は具がてんこ盛りのトーストを二枚ずつぺろりと平らげた。なかなかのファイターだ。それにしてもあの小さいバックパックにパンも入っていたとは・・・。

身の回りからちょこちょこ片付けて完全撤収。しかし美しい広場だな~。

しばらくこんなに美しい森が続く♪♪

よいしょっと。

緩い起伏にうっとり。朝日もいいね。

この広くて緩い起伏のエリアに、等高線がかたつむりみたいな線を描く窪みがある。遠くから目を凝らして見るとその奥には小さな池があるようだ。せっかくだからと池に近付いてみると、池などなくそこにはただ冬枯れがあるだけだった。おかしいな、さっきは池に見えていたんだけど。あれは幻?

池がないなら先に進もうとトラバース気味に尾根に戻る。下山は大雑把に言うと北東に尾根を下るのだが、下り尾根にはいくつもの分岐があるので違う尾根に入らないように注意しなければならない。椅子の木に座ってご満悦のSのW氏。

谷を過ぎて最初の尾根を北。みんなで確かめながら進む。しばらく下ってみるが何となく変だ。何となく変なのだが、何が変なのかよくわからない。ここはどこなのか?このまま進もうかどうしようか?しばらく悩んだが何となく変なので先ほどのかたつむりまで戻ることにする。いつの間にこんなに下ってしまったのだろう?戻るのがキツい。もったいないと思いながらもかたつむりまで戻る。こういう時に一番確実なのは現在地が特定できるところまで戻ることだ。もしかしたらここはかたつむりじゃないかも?とも思ったが、尾根を挟んですぐ南の、等高線が小さいかたつむりみたいな線を描く地形も入念に調べる。地形図のとおりかたつむりの目のように尾根が二つ張り出しているので間違いない。ここがかたつむりと断定してやり直し。

しかしどうも解せない。さっきは「かたつむりの先の谷を過ぎて最初の尾根を北」と地形図を読んでいたのだが、よく見るとそれはまったく関係のない尾根だ。それなのに三人ともこの尾根に引き寄せられてしまった。大人三人がそろって何かに化かされたのだろうか?いったいどうしてあの尾根に入ってしまったのか?いったい何が起きていたのか?それは謎のままだ。

その後は細かな分岐に気を付けて、ちいさなアップダウンを繰り返し順調に尾根を辿る。途中にちょっとした露岩があったりして、なかなか楽しい尾根ではないか。などと言いつつ、実はこんな露岩のちょっとした高度がめちゃめちゃ苦手。

沢の音が聞こえてくると間もなく・・・。

重機に均された林道延伸工事中箇所に飛び出す(笑)なんのなんの、これもシノギングではよくあること。こんなことがあっても舌打ちなどせず工事関係者ににこやかに挨拶をして先に進もうではないか。こうしてサンカクスタンドの二人を連れだしてのお泊りシノギングは無事に終了した。

最後に美しき森での決して笑ってはいけないやつ。

多忙な中、シノギングにお付き合いいただいたSのS氏、W氏、ありがとうございました。

出張シノギングに向けて何かしらのヒントが得られたなら幸いです。

そして、みなさま長いブログにお付き合いいただきありがとうございました。

 

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