四季の山を歩き、思い、創造する。
凌 手記
沢沿いの楽園を求め、お泊りシノギング ~ついでに暑さを凌ぐ~ 【前編】
恒例のシーズン毎の撮影という名のシノギング。今回は「沢沿いの楽園」がテーマ。地形図を頼りに、ルートを選定したが、果たしてその実態や如何に。。
いつもとは違うエリアにドキドキしながら、バスに揺られて辿りついたは終点のお堂。やっているかも分からぬ古びた「ふれあい処」前にて凌ぎ始めの下準備をする。
準備を終えると暫くは車道林道歩き。気温はそこまで高くないが、歩き出すとじめじめ暑い。目星をつけた入渓ポイントまで湿気を耐え凌ぐ。
所々崩れている所も凌ぎつつ...
なんとなーく沢に下りれそうな尾根の末端に着くと、やはりそこにはフミアトが。一先ず沢には下りれそうだ。しかしながら、ゴウゴウと盛大に聞こえる音が気がかり...恐る恐るフミアトをタドル。
何てことはなかった。下りると大きな堰堤があり、そこから落ちる沢の音が鳴り響いていたわけだ。でもやはり連日の梅雨空のお陰か、水量は豊富。
入渓に伴い、身なりを再度整える。最近沢歩きで試している「地下足袋」と「草鞋」のクラシックスタイル。ほぼ消耗品だが、草鞋のフリクションはかなり良く効く。巻きつける緒が抑えになり、クナイとの相性も抜群。
大きな渓相と水流に少々ビビりながらもいざ入渓!
ちべたい。やっぱり沢歩きは良いね~。大の大人3人がワチャワチャしながら歩む。
写真では分かりづらいが、大きな釜をのぞき込む。碧く澄んだ色でとても綺麗だ。怖さもあるが...
と、ここまでは良かったが、巨岩帯に突入し、次第に激流と深さが増す。進めるかなぁ。
渓流内をタドルのは無理と判断し、左岸の高捲きを試みる。
へつり気味にタドルも、右は壁、先はグズグズの土砂でドン詰まる。このまま進むのは我々の装備では困難なため、潔く引き返す事に。鬱蒼とした様相が良いだけに辿れないのは残念だが、ある意味凌らしくなってきた。
ここで一旦沢に別れを告げ、林道へと戻る。幸い大筋の林道が沢沿いに続いており、先に同じく下りれそうなポイントも何カ所かあった。ただその大筋に戻るまで地味にジグザグに下ってきていた。素直に戻るのも面白くないので、尾根沿いに辿り戻る事に。
そうして藪漕ぎのはじまりはじまり笑
嫌らしい笹薮を越え、開けた尾根に出るも、中々の急登。当然汗だく。沢に戻りたい―。
再び林道に合流すると、藪内の露と汚れと汗とでビチャビチャ。平坦な林道をクールダウンしながら次のポイントを目指す。
第2のポイントは支流沢筋から下りアプローチ。さて、無事合流できるだろうか...
ここの沢筋は狭く、適度な傾斜と水量で中々良かった。沢から立つ靄がまた幻想的であった。
先ほどの暑さへの鬱憤を晴らすべく、ジャブジャブ、ジャブジャブ。
着々と下り本流に近づいていく。すると、おや?何やら大きなサウンドと共に先の視界が拓けているような...
優に10mはあるであろう大滝でまたしてもドン詰まり。巻けそうな所もない。今日はそういう日なのであろうか。。一向に本流を辿れない。
目と鼻の先にあるのに下りれない歯がゆさ。上から見る本流は先ほどの巨岩帯とは変わってとても良さげな雰囲気。仮に下からこの滝を見上げていた場合「あそこの上に立ったら恐いだろうね~」とか言いながら撮っていたであろう写真に、写り込まんと下をのぞき込んでみる。当然の恐怖。
改めて地図を確認し、次なるポイントに目星をつける。×印が増えていく。。
下ってきた支流を登り返す。これはこれで充実しており、何だが沢歩きに満足してきてしまった節もある笑
とはいえ楽園は本流の先にある(恐らく)。気を取り直して、沢から離れ隣の支尾根へ直登。懲りずに尾根から林道回帰を目指す。
既視感の強い藪漕ぎと急登の尾根をタドル。これは夢か?現実か??
そうして再び林道へ戻り、少し進んで今度は尾根沿いで下ってみる。第3のポイント。
3度目の正直!いや、2度ある事は3度ある...??また盛大に育った藪をかき分け尾根に入る。
入ると直ぐに藪は落ち着き、経験則からこの尾根は「いける」と直感する。急ながらもジグザグに下っていく。
途中枯れ沢の小さな谷に合流し、そこから本流への合流を目指す。地形図的には先ほどのような大滝のような崖は無いと思われるが。次第に沢の音が近づいてくる。ふと藪のアーチから抜け出ると。。おやおや??
ようやっと本流に繋がった!渓相も少し落ち着き、歩くには申し分無さそうだ。皆、安堵の笑みを漏らす。
念願の本流へ入渓。ここまでの道のり、華やかではない実にいい凌ぎっぷりであった。凌の中でも更に”乙”なルートだったなぁ笑
林道周辺は針葉樹がメインだったが、この沢沿いは広葉樹の緑が広がっており、実に綺麗だ。調べても歩かれた記録は出てこず、結構穴場の沢歩きルートやもしれない。
遺跡のように残る石垣堰堤?もまた乙だねぇ。
と思えば、倒木の荒れ具合や鬱蒼とした緑が醸し出す沢ならではの景観が、凌ポイントを上げてくれる。ついついじっくりゆっくり歩いてしまう。
そうこうしていると地形図上の平坦地へ突入する。ここまで本流を辿って来る予定だったが、思いがけないショートカット(ある意味遠回り)により、あっさりこの地点まで到着してしまった。ここから先にあるであろう”楽園”に向けてアンテナを張り巡らせながら、逐一確認し、進む。
その間も暑さを凌ぎながら沢を歩く。平坦地は広く続いている。こうなると人間とは欲深いもので、良さげな場所があっても、「この先にもっと良い場所があるかもしれない...」とズルズル引きずり彷徨い始める。取り分け沢や谷というのは地形図では読み取れない部分が多い。本当に楽園はあるのかー??
ふと杉林にはなるが、等間隔に広がるエリアに辿りつく。
「この一帯には何かある」
再びそう直感した我々は、各々しらみつぶしに歩き回る。ここでもないそこでもないと、確認し合いながら、ようやく”楽園”と思しき場所を見つけ出すと、ザックをおろし一息つく。
ふー。さて、取り掛かりますか。
果たしてその”楽園”の全容は如何に...
【後編】へ続く。。

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