そいつは不意にやって来た。
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いつもと同じ時間。
(今日の205はなん編成だろう?)
ずっとそんな日が続くと思ってた。
置き換えられるのを知りながら…
近づいてくる
(VVVF音)
(白色LED)
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清潔感と真新しさの車内。
物珍しそうに車内を眺めるサラリーマン。
でもすぐに、いつもどおり
端末に、新聞に、車窓に
視線を移す。
(ああ、やっぱり鉄道車両なんて、
単なる移動用の箱なのかぁ)
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聞きなれない自動放送。
そしてまた駅に着く。
反対のホームから、
やっぱり物珍しそうに見つめる乗客。
そんな外の世界とを隔てる気密性。
ガタンガタン。
そんな音も、
くぐもってしか聞こえない。
街並みに反射して見える車体。
洗練されたデザイン…ピカピカの新型車両。
そこに、
幼い頃から慣れ親しんだ
「さいきょうせん」の面影は、
どこにもなかった。