時間の外  ~since 2006~

気ままな雑記帳です。話題はあれこれ&あっちこっち、空を飛びます。別ブログ「時代屋小歌(音楽編)(旅編)」も、よろしく。

縄文少年 ヨギ

2008年04月02日 | 漫画・アニメ、そして特撮
水木しげる先生の生み出した「主人公」で、スターなのは、なんといっても「鬼太郎」「悪魔くん」「河童の三平」だろう。
実際、これらの作品は映像化され、大ヒットしたし、その後リメークもされたりした。

だが、この3大スター以外にも、捨てがたい主人公キャラはいる。
まあ「のんのんばあ」は3大スターに次ぐ存在になってきてるが、その他にも「血太郎」「コケカキイキイ」なども捨てがたい。
ここで私が触れたいのは「ヨギ」である。
ヨギ。正式には「縄文少年ヨギ」。
キャラ的には、「河童の三平」に近い風貌のキャラだ。

この作品の存在は知っていたし、断片的には持っていた。
だが、最近この作品が一冊の本にまとめられて出版(復刻?)されてるのを本屋で見つけた。
ヨギの話としては完全版なのかもしれない。分厚いし。
早速、購入。
普通のコミック単行本よりもサイズが大きく、紙質もいい。
だから、気持ちよく一気に読めた。読み応えがあった。

舞台は縄文時代。
少年ヨギの暮らす部族に起こる様々な困難、不思議な出来事、そして厳しい生活ぶり。
そして、部族のためにヨギがすることになる冒険。
厳しい生活と、それを何とかしようとする「ヨギの冒険談」としての印象が強い作品だ。
鬼太郎みたいに、特殊な能力を持ってるわけではないヨギだが、彼のまわりには色んな不思議なことが起きる。
で、それらをヨギ自身が目撃したり体験したりすることになる。

水木ワールドは、ここでもしっかりと息づいており、水木先生絶好調の頃の作品ではないだろうか。
牧歌的でのどかな面があるかと思えば、厳しい現実。
人の死にも出会う。身近な人が、情け容赦なく死んでゆく。
だが、あまりウェットではなく、どこかドライ。かといって、さほど冷たい感じもしない。
水木先生の作品は、どんな悲しいことも辛いことも、あまり悲劇的には描かれない(戦記ものを読んだ時は、さすがに悲劇を感じたけど)。だから、お涙ちょうだいでもない。
根底には愛すべき雰囲気(時にはユーモア)を感じるから、読んでてさほど重たい気分になったり深刻になったりはしない。
冷たい感じがしないのは、そのせいかもしれない。だから、イヤミもないし、押し付けがましさもない。

こういう題材なら、重たく描いて、涙の感動巨編にすることも可能なのに、そうはしない点が私は好きだ。
でも、しっかり冒険談にはなっている。
鬼太郎でもなく、悪魔くんでもなければ三平でもない、独自の世界がある。
ただ、全体を貫くこの部族たちの厳しい暮らしぶりは、他の作品にはない味わいであり、特徴でもある。
この「厳しい生活ぶり」を描くモチベーションとなったのは、もしかしたら先生の戦争体験が影響してるのかもしれない。
世の中、生きるというのは本来こんなに厳しいものなのだ・・というテーマも見え隠れする。

先生の作品&キャラの中で、スターになってもおかしくないヨギではあるが、なぜかあまり知名度がない。
それは映像化されていないからかもしれない。
もったいないと思う。
内容はもちろんのこと、「縄文少年ヨギ」というタイトルもいい。その響きがいい。

スターになりそこなった少年、それがヨギであり、この作品なのかもしれない。

そこそこの長さがあるので、もしかしたら鬼太郎、悪魔くん、三平みたいな定番キャラにするつもりで描いた野心作だったのかもしれない。

水木ワールドの隠れたスター・キャラとして、この作品はもっと知られてもいいと思う。

水木ファンには、安心してお勧めできる作品である。
きっと、ファンが望む水木作品&水木ワールドがそこにある。














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