天上天下唯我独尊

夢に生き、夢のように生きる人の世を
憐れと思へば、罪幸もなし・・・

四行詩集 ~無花果の実り~ 25

2008-02-17 00:55:44 | 「無花果の実り」
1.木材が腐っているのなら、緻密な設計も逆効果だ。
  人心が堕落しているのなら、法律を改めても効果は無い。
  曲がった木でも、墨縄を当てて鉋をかければ、真っ直ぐ使える。
  大工の腕が悪ければ、金と時間を費やすだけで、全てが傷ついて廃材となる。
「何程制度方法を論ずるとも、其の人に非ざれば行はれ難し。人有って後方法の行はるるものなれば、人は第一の宝にして、己其の人に成るの心掛け肝要也(西郷南洲遺訓第20章)」

2.天井裏や床下の柱に香りのよい蜜を塗布しておけば
  間もなく蟻に食われて家は潰れる・
  役所でも教会でも、甘い利権を滴らせているなら、そこから間もなく腐敗が始まる。
  覚えておけ、金は何でも腐らせる。腐ったものは切り捨てられる。

3.自分は太陽だなんて思っていたら、側に明かりを置こうとは思わない。
  自分は英明だなんて思っている君主の側には賢者はなく、誰も知恵を絞ろうとしない。
  昼間でも、奥深い部屋の中では燭台が必要だ。暗い所には蛇が潜む。
  家の中を隈なく明るくしようとするなら、計り枡の上に燭台を置け。
「誰も、明かりをつけてから、それを穴倉の中や、枡の下に置く者はいません。燭台の上に置きます。入って来る人々に、その光が見えるためです。体の明かりは、あなたの目です。目が健全なら、あなたの全身も明るいが、しかし目が悪いと、体も暗くなります。だから、あなたのうちの光が、暗闇にならないように気をつけなさい。もし、あなたの全身が明るくて何の暗い部分もないなら、その全身は丁度明かりが輝いて、あなたを照らすときのように明るく輝きます(ルカ伝11:33)」

4.気の利く大工は、解体した家の材木を仕立て直し、子供たちの机を拵えてくれる。
  人情を知る大臣は、長年勤めて引退した人材に箔をつけて、新人の教育に当らせる。
  木のことをよく知り尽くし、愛して労わる心がなければ、温もりのある家は建てられない。
  質のよい木は撫でれば撫でるだけ、漆などよりも味わい深い艶が出てくる。
「万の物、何によらず夫れ夫れの能有り。材木にて言はば、松は松の用有り、檜は檜の用有り、其の用々に随って用ゆれば甚だ重宝になる事也。松を用ゆべき所へ檜を使ひ、檜を使ふべき場に松を用ゆれば、其の能違ひて役に立たず。人の使ひ様猶以て同じ理と覚ゆる(徳川宗春/温知政要)」

5.砂場に砂で作った城を守り通すなんで、子供でも考えない。
  強い風が吹けば吹き飛ぶし、潮が満ちてくればそれまでだ。
  民衆の要望によって設けられた制度を維持するなんて、正気の沙汰ではない。
  砂の城に引っ越すというなら、蟹にでもならねばなるまい。
「無法を行っていた町を、我らはどれほど滅ぼしたことであろう。それらは屋根屋根の上に崩壊した。見捨てられた井戸と高殿はどれほどあったか(コーラン22:45)」

6.砂に水をかければ、家の土台になるとでも思うのかね。
  民意を議事にかければ、国家の土台ができるとでも思うのかね。
  一年で家を建て直さねばならないなんて、それでも建築家と言えるのか。
  十年で制度を見直さねばならないなんて、それでも法律家と言えるのか。
「だから、私のこれらの言葉を聞いてそれを行う者は皆、岩の上に自分の家を建てた賢い人に譬えることができます。雨が降って洪水が押し寄せ、風が吹いてその家に打ち付けたが、それでも倒れませんでした。岩の上に建てられていたからです。また、私のこれらの言葉を聞いてそれを行わない者は皆、砂の上に自分の家を建てた愚かな人に譬えることができます。雨が降って洪水が押し寄せ、風が吹いてその家に打ち付けると、倒れてしまいました。しかもそれはひどい倒れ方でした(マタイ伝7:24)」

7.安定する家の基本構造は、どこの国、いつの時代でも変わらない。
  安定する国家の原理構造は、どこの国、いつの時代でも変わらない。
  重さは上から下にかかるだけだから、すべてのものは安定する。
  下の者が上の者を責めることを許したら、如何なる秩序も定まらない。
「神を畏れかしこみ、お喜びを求めて、建物を建てた者の方が勝っているか、水に侵されて崩れかけた崖の上に建物を建て、諸共にゲヘナの火に転落した者の方が勝っているか。神は不義の徒を導き給わない。彼らの建てた建物は、自分の心が切断されるまで、心の中に不安の種となってとどまる。神はよく知り給う聡明なお方である(コーラン8:109)」

8.土台の石も屋根に乗せれば、重さで家を傷めてしまう。
  頼りになる宗教も政治に乗り出すと、謹厳さで国家を軋ませてしまう。
  屋上に上ると、見晴らしはよいが、家がどうなっているかはわからなくなる。
  国の管理人になりたいならば、屋上には上らず、床下に潜ってまめに点検せよ。
「彼らより以前にも、陰謀を企てた者がいた。神は彼らの建物を土台から破壊し給うた。それで屋根が上から落下し、懲罰は思わぬ所から臨んだのである(コーラン16:26)」

9.由緒正しい王の都は格式高く聳える山、上に行くほど冷たく厳しく息が詰まる。
  自由の都は堕落した海、一向平等を求めて、無意味に波打ち騒いでいる。
  山は風と水を供給して野を富ませ、海は泥と水をかき集めて干上がらせる。
  水が下から溢れて来たら、家畜どもを連れて箱舟に入れ。
「いざ真理が現れると、彼らは言った、『これは魔法だ。我々は、こんなものには背を向ける』。彼らは言った、『なぜこのコーランが二つの都市の指導者に下されなかったのか』(コーラン43:30)」

10.大陸と大陸の衝突によって、高山は生じる。
  勢力と勢力の衝突によって、王者は生まれる。
  大陸と大陸の衝突する所にあるから、山はどんどん高くなっていく。
  権勢と権勢の争いを仲裁するから、王家の権威はどんどん高められていく。
「人々は、山について汝に尋ねるであろう。言ってやれ、『主はそれらを粉砕し給うであろう。そして、坦々たる平野にしておき給う、そこには歪みも高低もみられない』(コーラン20:105)」

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