コハクチョウは全長120㎝にも及ぶ大きな白い鳥であり、特に、青空に聳える雪山を背景にすると、その白さ、大きさが一層引き立ち、飛んでいる姿は美しいものである。体が大きく体力に自信があるのか、人が近づいても後ずさりはするものの直ぐに飛び立つという事は少ない。これに対し、ガン類は55~85㎝の大きさであり、警戒心も強く人が近づくと直ぐに飛び立って逃げる。
ガン類はコハクチョウと田の餌場を共有しているのをよく見かける。その際、ガン類は大きなコハクチョウの群れの中に入り自分を目立たなくしていることも多い。水辺の多くのカモ類は昼間仮眠するが、大きなコハクチョウを盾にしていることも多い。
石川にも前回紹介したナベヅルのようなツルやガン類の迷鳥が飛来することがある。また、自分の群れから離れて行動しているガン類などもいる。これらの鳥は、安全のためコハクチョウの群れに紛れていることも多く、コハクチョウの群れを丁寧に観察すると、思わぬ鳥に出会うこともある。
7日にはtulipculbさんが、サカツラガンがコハクチョウと一緒にいる写真の記事を投稿された。以前、koumisuzumeさんのブログの紹介欄にsakaturaganと書かれていたのをネットで調べ、写真でサカツラガンを見たことがあったことも思い出し、石川にも来るんだ! 実物を見てみたいと思って、コハクチョウの多い邑知潟が最適地だと思って出かけた。途中で、どうせ邑知潟に行くのなら、河北潟にもコハクチョウがいるからそちらも調べてみようと思い立ち、河北潟干拓地を経由して邑知潟に行くことにした。
河北潟干拓地で、コハクチョウの群れを丹念に観察していた時、幼鳥に似た色にも見えるが、一回り小さく、田の二番穂の上に茶色の頭、首だけが出ている鳥を見つけた。
首だけ見えるサカツラガン発見
ムラサキサギではないし、何だろうと思ってしばらく見ていたところ、やっと背中も見え、全体像がイメージできた。
2番穂の中のサカツラガン
サカツラガンだと直感した。
初めての遭遇であったので、大いに興奮しながら観察を続けていると、コハクチョウの群れが水を張った田の方に移動し、件の鳥も一緒に水の上に移動して泳ぎ始め、全身の写真を撮ることができ、サカツラガンだと確信した。
立山を背景にサカツラガン
水田で餌を探すサカツラガン
水上のサカツラガン
立山を背景に、水を張った田で数十羽のコハクチョウの群れの中に1羽だけ紛れており、白い首筋、茶色の後頭部・後ろ首が印象的であった。
日本に渡来するガンの中では最大級で、嘗ては冬鳥として浦安市付近に渡来していたが、近年は迷鳥として稀に渡来するだけになっているそうである。群れの外側に近いところに居ることが多く、コハクチョウより一回り小さく、乾いた田、水を張った田で2番穂などの餌を探す。
水の浅い田のサカツラガン
頭頂部から首の後ろは茶色、首の前は白っぽい色、羽の模様は、マガンやヒシクイに似ている。首の中程から胸、腹にかけては茶色で、腹には横縞があり、下尾筒は白である。頭からスムーズにつながる嘴は黒で、オスの方が嘴基部の白い斑紋が目立つ。頬は赤味を帯びた茶色。
サカツラガン オス?
頸を伸ばして飛び、黒っぽく見える。
立山を背景に飛ぶサカツラガン
茶色の顔周辺が特徴的な模様を持っているので、注意して観察すれば見つけることができる。立山を背景に4羽のコハクチョウと一緒に飛ぶサカツラガンは感動的であった。
邑知潟では、今年はあまり大きな群れを見ないマガンが数羽、コハクチョウと一緒に餌を摂っているところを撮影できた。今年はマガンが小さな群れで行動しているのかもしれない。
コハクチョウの傍で餌を探すマガン
コブハクチョウは、石川でも周年見られるようになって来た。体がコハクチョウより一回り大きく、コハクチョウの群れの中でも、自分達だけでいる時でも、我が物顔で行動している。
田のコブハクチョウ
川のコブハクチョウ