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徒然

マウリツィオ・ポリーニ

今年、マウリツィオ・ポリーニが亡くなりました。ご冥福をお祈りいたします。

思い返せば、中学生の頃に友達からベートーヴェン6大ソナタと称するギレリスのCDを借りて聞いて以来、ベートーヴェンのにわかファンになったわけですが、近所のCDを売っている店にあったのは、ホロヴィッツの悲愴・月光・熱情だけでした。それを買ってしばらくして、ポリーニのヴァルトシュタイン・田園・テンペストのCDも入荷されていましたので購入しました。

ポリーニのヴァルトシュタインは、ロンド楽章が派手なのですが、今思うと厨二病を若干拗らせていた自分にはカッコよかったのです。
それから高校の途中くらいまで、ポリーニにはまりこんでいったのですが、レコード時代の録音はその当時も好きではなかったと思います。ショパンのエチュードやポロネーズ、ベートーヴェンの後期のソナタ、さすらい人幻想曲、シューマン、ブラームスのピアノ協奏曲などを聞いてみました。確かにものすごくうまいのですが、感動的ではなかったと思います。でも、はまっていたので、頻繁に聞いていたと思います。

頻繁に来日していたようですが、インターネットも無く、コンサートを聞きに行く機会はありませんでした。まあ、あったとしてもチケットが高くてなかなか当時は手が出せなかったと思います。
1990年代後半くらいだったと思いますが、ベートーヴェンの後期のソナタとディアベッリ変奏曲、シュトックハウゼンなどの現代曲のプログラムで来日したことがありました。来たことも知らず、新聞で見つけてFMラジオでコンサートの録音の番組があったのを知りました。残念ながら聞き逃しました。

今は当時に比べてポリーニを聞くことは減りましたが、ディアベッリ変奏曲とショパンのバラードと幻想曲のCDはよく聞いています。
ディアベッリ変奏曲は一時期かなりたくさんの録音を聞いています。
シュナーベル、ゼルキン、ピーター・サーキン、ウゴルスキ、リヒテル、グルダ、アンドラーシュ・シフ、園田高弘など。バックハウスは手に入らなかったと思います。ブレンデルも聞きましたが、二度と聞かない。時間の無駄でした。
今でも一番よく聞くのがポリーニだと思います。ウゴルスキもクセがありますが好きです。18変奏やフーゲッタの美しさも魅力ですが、ウゴルスキは全体のバランス感覚が面白くて好きです。しかしポリーニの方が優等生的にうまいかもしれません。ディアベッリ変奏曲に関しては、演奏のお手本にするならポリーニかと思います。
全体のバランスと言えば、ウゴルスキのスクリャービンのソナタは、各楽章のバランスの取り方が素晴らしいと思います。2番は2種類の録音がありますが、1回目の方が好きだと思います。一曲としての繋がりと楽章としての独立性。良いバランスです。
ディアベッリ変奏曲に戻りますが、ポリーニの録音では、フーゲッタやフーガが好きです。どちらもベートーヴェンのフーガの中では比較的短いと思いますが、フーゲッタを美しく、フーガは全体のクライマックスとしてボリューミーに、かつ後半の弾きにくい部分をガッツリ弾き切るのは、ポリーニならではだと思います。
また、第3・4変奏の出だしの部分と後半の短調を予想させる部分のコントラストなどもよく考えられていると思います。それらは全体の構成を分かっていないと表現できないと思いますが、それも理解して演奏していることがうかがえます。
ベートーヴェンは音楽の建築家ですから、初めから終わりに向かって一方通行のように見ていく(聞いていく)だけでなく、全体を上から俯瞰して(楽譜を眺めること、構成を把握すること)考えて読み解いていく必要があります。つまり、第3・4変奏の短調の部分は、第29・30・31変奏を暗示しているわけですが、ポリーニの録音は、あちこちにそういった構成についても意識されているように思います。

2002年ころだったと思いますが、初めてポリーニのコンサートに行きました。サントリーホールでした。リストのソナタとクライスレリアーナの日と、ショパン・プログラムの日、どちらも聞きました。
リストのソナタは何回も弾き直しをしたり、ぐしゃっと誤魔化したりする演奏でしたが、その代わりにものすごい数のアンコールを演奏していました。木枯らし、沈める寺などの小曲で難曲をたくさん演奏してくれました。
ショパンの日は、隣のオッサンが最悪でした。知ったかぶりをするのと、ピアノに合わせて鼻歌を歌う。コンサート会場から消えて欲しい人種ナンバーワンです。おそらく妻だと思われる女性に、色々語っていましたが、一番おかしかったのが、ポリーニはステージ上に客席を設けて客がステージにも座るのですが、指が見えるからそこが一番良い高い席だと言ったことです。ピアニストを見に来るのではなく、陸上の大会に行った方が楽しめる人です。そもそもあそこは響の調整などの理由で席を設けており、学生などが安く買うのです。最悪な隣人でした。鼻歌など言語道断。叩き斬りたい。ちなみにSS席でした。

その後、何回かポリーニの演奏会には行きましたが、どれも結構良かったです。
しかし、最後の演奏会は大変残念でした。本来はハンマークラヴィーアだったのが、曲目の変更でショパンのソナタになり、当日行ってみたら、ショパンの小品やドビュッシーばかり。指の痛みが原因とのことでした。それが最後になってしまいました。おそらく来日自体が最後だと思います。

良い意味でも、そうでない意味でも、時代を作ったピアニストが亡くなってしまいました。
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