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久々読書「野性時代 Vol.46 [9月号]」

2007年09月09日 | 小説レビュー
ここ数ヶ月、なかなか心の余裕ができず、立て込んでいたので、小説を全く読めてなかったんだけど、その中から何とか気力と時間を捻出して、小説を読むようにしていた。

それで、先月のお盆休みを利用して「真夜中の五分前」を読破したあとは、「野生時代9月号」の短編を一つずつ読んでいった。

金原ひとみの最新短編「Hawaii de Alaha」は、ハワイ取材を経てかかれたもので、恋人同士のハワイ旅行の日常が描かれてるんだけど、楽しい旅行が終わる間際になり、主人公に激しい憂鬱が襲う描写はさすが。

誰もが一度は実感したことがある感覚――例えば、三泊四日の旅行であれば、旅行一日目は果てしなく楽しく、二日目は現実を忘れてバカンス、そして、帰る前日は、どこか寂しさを感じ、帰り支度をするときに「帰りたくない」という激しい憂鬱に襲われる。

読んでる側が、それをまじまじと体験させられる。

(明日からまた仕事や~とブルーマンデーを感じている今の自分とリンクするから余計だけどね)

ラストスパートで、主人公の悲観的妄想が襲うあたりは、金原ワールドで、終わり方がすごく自然にフェードアウトする感じで、すごくいい。

彼女的には、短編をあと数本書いて次は短編集を出すらしい。

「ミンク」「星へ落ちる」「夢王」「Hawaii de Aloha」、新作が入れば、もう、ここ一年くらいの彼女の集大成になるんちゃうかなぁ。


伊藤たかみさんの小説は、過去に何作か短編を読んだけど、ポップですごく読みやすい。料理で例えると、濃くもなく、かといって味気ないわけでもない。安っぽい味ではなくて、あっさり味というイメージ。

ただ、伊藤さんの短編を読んで、共通して思うのは、「短編で終わらすのはもったいない」ということ。

「野生時代」に収録されている「不機嫌な虫」は、お父さんがどんどんエロくなって、痴漢とかしまくっているという設定があるんだけど、そこで「やられた!」と思った。だけど、それが後々もっと面白くできるのにしないまま終わっていくので、残念。

兄妹同士で「これからますます親父がエロくなるようなら、介護ヘルパーとか施設入れるのを考えないと・・・」って真剣に話し合ってるシーン、すごい面白いのに。


まだまだ買って読んでいないストックがあるから、一冊ずつ片付けていかないと。

でもやっぱ、小説って面白いね。

つまらない現実から少しだけど乖離できる。


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