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最近読んだ小説レビュー Vol.21

2006年06月14日 | 小説レビュー
最近は、順調にゆっくり確実に一冊ずつ読んでおります。

今回は恋愛小説特集! 

やっぱり僕は恋愛小説が好きだという事がわかりました。恋愛小説ならスラスラ読めます。そして、読んでいて楽しい。

それでは、さっそく二冊紹介します。


『忘れないと誓ったぼくがいた』/平山 瑞穂

<感想>
これは、一般小説ですけど、現代ファンタジーです。彼女が突然、消えていくという設定に目を惹かれ、衝動買いしました。

ヒロインは、病気でもなく地球外生命体でもありません、普通の女の子なのに、きっかけも不明のまま〝存在〟しなくなるんです。それにより、ヒロインを知ってる人の記憶も消えてしまうというもので、その設定だけで切ないストーリーになる予感と期待が生まれます。

で、読んだ感想ですが、面白くないわけじゃない。ただ、山場(クライマックス)にもうちょっと力を入れてほしかった。泣ける準備をしてたのに、素通りされた気分でした。もうちょっと演出に凝ってほしかったです。

あと気になったのは、演出が〝ドラマっぽい〟というか〝アニメっぽい〟ので、ちょっと演技臭いんですよね。すごく気になる、まではいかないんですけど、一昔前にみたドラマみたいに演技に1.5倍くらいのディフォルメがかってる感じで、ライトノベルでは違和感ないと思いますが、一般小説ではオーバーに見えてしまう。


『SWITCH(スイッチ)』/佐藤 さくら

<感想>
日本ラブストーリー大賞で、特別に審査員絶賛賞を取った作品です。この賞は、映画化前提で、その原作を応募するものだったので、映像化したときに〝見える〟ものでなきゃダメなわけで、この「スイッチ」は全体的に地味なんです。

映画化した時に、山場のシーンもなければ、これと言って目立つシーンもロケーションもない。だからと言って作品が面白くないわけじゃないので、それで落すのはどうか、と審査員たちが話し合って、特別に賞を与えられたそうです。

たしかに読んでみると、「これは映画化できないだろう」という意味がわかります。ドラマも難しいじゃないでしょうか。主人公が変なので、主役に向かない。

でも、ストーリーは面白いです。ハマりました。
主人公が、もう人間との関わりを邪魔臭いと思うタイプで、暗くて、ネガティブだけど、性的にはポジティブだったりで、共感できる人はどれだけいるんだろうって思うんですけど、読んでいくうちに、主人公に同感していくというか、主人公の事を理解できていくんですよね。

誰もが心の中に抱いている気持ち、外には出さないけどどこかで思っている気持ちを主人公がストレートに代弁しているので、主人公の生き方も正しいんじゃないかって思わされる。

それに、主人公を取り巻く人たちもキャラが濃くて、いいんです。特に「ドンマイ」という喫茶店を経営してるサル男が一番好きですね。

恋愛小説という枠で考えると、薄いけど、主人公の生き様としてその中核に〝恋愛〟が潜んでいる事はたしかなので、言い切れない事もない。

この作品に魅了された理由の一つに、等身大小説っていうのがあります。
これは、作者の私小説なんじゃないだろうか、と思うほどリアルな表現やリアルな設定が出てくるので、主人公が本当に存在してもおかしくないほど精巧に描かれている。

佐藤さくらさんの次回作はどう出るか、その期待でいっぱいです。


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