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新海誠最新作「天気の子」鑑賞後レビュー【ネタバレ含む】

2019年07月22日 | 映画感想文

公開週なので、大きなネタバレは避けますが、どうしても物語に言及する上でネタバレに抵触してしまうことがありますので、閲覧にはご注意ください。できれば今作を観終わった後での閲覧をおすすめします。

 

 

 

「天気の子」観てきました。

脚本・監督の新海誠はもちろん、プロデューサー、キャラデザ、音楽担当は「君の名は。」全て同じなので、テイストはほぼほぼ統一されていました。もはやジブリのように、同じスタッフが作られているので、観たい映像がそのまま出されているので安心感がまずありました。

 

「君の名は。」みたくOP映像はあるのかなと思っていたらなくて、そこは差別化してきたのかなと。個人的にはそこも定番化しても良かったのにとも思いました。

 

インタビュー記事を読んでいたら、脚本が完成してRADWIMPSの野田くんに見せたのふぁ2017年の夏くらいって言っていて、そこからわずか2年以内で完成させたのは驚きでした。「君の名は。」の成功があったので、制作費も大きく使えるため、スタッフ増員をしたのかもしれませんがそれでも2年以内であのクオリティは素晴らしいです。

今を描きたいからできるだけ早く完成させたかったという監督の気持ちはわかるのですが、まさにここ数年の日本の異常気象を題材に「今」そして「日本の未来」を描いています。

今作の特徴としてずっと雨が降るシーンが続くのですが、ドラマならただただ雨を降らせるだけですが、アニメってそれを書き加えなければいけませんから、水滴一つ一つの描写がとにかく繊細でした。今作の舞台が東京ということもあり、前作と比べて地方へ行ったりはないので、前作の背景バンクを一部使ったり背景パーツを再利用したのかもしれませんが、それでもすごいです。

ただストーリーはというと、前作がすごく緻密に練られていたという印象でしたが今作はちょっとコンパクトにまとめられていたかなという印象で、短時間で作った感がちょっと垣間見れました。観た方なら同じ疑問を感じたかもしれませんが、須賀という男との出会いが唐突な件、まず拳銃の件、ヒロイン陽菜の年齢問題、そのヒロインと弟がアパートを借りられた問題、アパートの冷蔵庫の扉逆向きな件、線路走るけど誰も止めない問題、家出した理由がしょうもない件、等々あらは探せばいくらでも見つかってしまうのですが、そこはまぁ何とか物語のテンポを最優先した結果ということで目を瞑れます。

ただ、今作の根本的謎であり、核の部分である積乱雲の上の世界のことが曖昧に描かれてしまったこと、およびそこへワープできた理由が不透明なことがちょっと残念でした。「君の名は。」では、巫女というだいだい入れ替わる家系で、ヒロインは選ばれし子だったからという理由付けがありましたが、今作のヒロインはたまたま廃ビルの屋上にある神社に行ったらたまたま天候を操れる晴れ女に選ばれて、たまたま「100%の晴れ女」になってしまう。なぜ彼女がなれたのかの理由は明かされない。それにその神社の場所も「君の名。」とは違って都会の中の誰でも行ける場所にあるので他の人も来ることができただろうになぜ彼女だけが「100%の晴れ女」になれたのか、そこは描かなくちゃいけないと思いました。

そして、ラストで主人公がヒロインを取り戻しに廃ビルの屋上の神社に行って、鳥居をくぐったら積乱雲の上の世界にワープできるのですが、その理由も描かれません。「君の名は。」では口噛み酒というキーアイテムがあって、それを飲むことで再び入れ替わることができたのですが今作はそこも「なんとなくワープできた」という解釈で省いています。ファンタジー映画というくくりで見ればそこもまぁ瞑ることはできますが、劇場を出る時にカップルが「途中からちょっとついていけなかった」「なんでワープできたんだろ?」「謎だよね?」っていう会話をしていたので、多くの人が疑問に抱いているのかなとも思います。やはり、なんとなくではなく「主人公だから」という理由をつけないとせっかくの映画が安っぽくなってしまうので、制作時間が限られていたとはいえもうちょっと練ってほしかったかなと思います。

とはいえ、今作の音楽を担当しているRADWIMPSは前作同様すごく良い仕事をしています。映像とストーリーの動きにしっかり歌モノの劇伴がカチッとハマってくれて、感情の高ぶりが他の映画と一線を画しています。特にラストのヒロイン救出時の「グランドエスケープ」はまさに主人公とヒロイン、そしてそれを観ている観客の感情の動きと歩幅を合わせるようにリンクしていて、ここ!っていう時にサビがやってるハマり方は本当に鳥肌が立つほど気持ちが良くて、涙が溢れました。今作にRADWIMPSが携わっていなかったらきっと評価は大きく変わっていたと思います。三浦透子さんという女性ヴォーカルを起用したのも大正解でした。

 

総括としては、あらは目立つけど最後の畳み掛けに号泣した自分がいたので、前作同様今作も素晴らしいの一言です。一人田舎から出てきた家出少年が都会の大人や、ヒロインたちとの出会いによって絆が生まれて、恋愛感情が生まれて、その感情につき動かれていく主人公とその主人公を全力で応援する仲間たちに涙が止まりませんでした。主人公とヒロインの恋愛の描き方に関しては「君の名は。」よりもド直球で今作の方が好みです。新海監督は、大きな分岐点で選択肢を選ばなくてはいけない主人公が、自分勝手な選択をしてしまう。それが観客によっては賛否を生むだろうと言っていたのですが、個人的には主人公が選んだ選択に同意です。もちろん別の監督なら、もう一つの選択を選んだ物語にする可能性もありますし、そういう映画は山程観てきました。でも、やっぱり主人公が未成年で、少年というところがみそで、きっと主人公が20代の大人だったらもう一つの選択をしてたかもしれません。純粋で真っ直ぐな主人公の熱い思いに同感してしまうし、だからこそ須賀さんや夏美さん、凪も主人公を全力で手助けしたんだろうと思いました。ここも感極まって号泣しちゃいました。やっぱり観客が観たいものってこの結末だと思います。「君の名は。」はちょっともどかしかったです。

 

これは完全にネタバレなのですが、言わないとおそらく見逃してしまうと思うので知っていてもいいと思います。

「君の名は。」といえば、今作も新海監督作品恒例の前作の主人公がカメオ出演しています。しかも今作にはガッツリ瀧君が出ています。背景の一部に写り込んでいるとかではなく、主人公たちと会話までしてしまう。ヒロインの三葉も出てきて主人公と会話します。しかしながら、2人同時にではないんです。ファンが観たいのは2人がその後どうなったかであって、ファンサービスなら「2人があれから結ばれたんだ、良かった」ってわかるシーンにしてほしかったです。こういうところに新海監督の意地悪な部分が出てると思います。

 

あと、CMでお馴染みの白戸家のお父さん犬も喋らないですがどこかに写り込んでいるそうなので、見つけてみてください。とはいえ、一回目はどうしてもストーリーを追っちゃうので全然見つけられませんでした。

今作もきっと成功すると思いますし、早くも次回作が観たいという余韻に浸っています。オススメですので観ていない方はぜひ!

 

「天気の子」エンディングテーマ「愛にできることはまだあるかい」 RADWIMPS MV


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