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最近読んだ小説レビュー Vol.31

2007年05月06日 | 小説レビュー
周囲の友達とかは、家族で旅行だったり、テーマパークへ遊びに行ったりと聞いて、はぁ、なんだったんだろうゴールデンウィークって……って感じで最終日。

まあそんな中でも、どうにか小説だけは読めました。電車の移動時間にだけど……(-"-;)。

読破したのは、金原ひとみの最新単行本『ハイドラ』!


『ハイドラ』

<感想>

過去の金原作品と比べると、過剰な性描写や感情を吐露したような殴り書きがなくなり、ほぼ冷静な視線で書いてるような印象を覚えた。

一作目『蛇にピアス』と二作目『アッシュベイビー』では、小説っぽいものを書こうとしていた。物語をつくり、そのなかで人物を動かそうというような印象だったのが、三作目『アミービック』では一転し、小説という型を取り払い、先入観や小説という概念を取り払ったような、まさにいい方向へ吹っ切れた作品となっていて、個人的には彼女の最高傑作だと思った。四作目の『オートフィクション』はまだ読んでいないのだけど、聞いた話や内容を知るに『アミービック』の延長線上にある形だと思う。

で、今回の『ハイドラ』で彼女はまたシフトチェンジした。
今までのような表面的な荒々しさはないものの、主人公の内面には冷静な荒々しさが垣間見れる。主人公像は、過去の作品に共通する、拒食体質の女性を貫いてるけど、過剰な性描写がほとんどといっていいほどなくなり、むしろそこはあっさりと消化している。

また、彼女は作品を出すたびに文章が上手くなっていて、リズムも良くて、句読点を彼女の呼吸のように故意に使い分けているのも感じ取れた。

「彼女の才能」という陳腐な括りで言うのはあまり好きじゃないけど、
毎回、違う引き出しをもっていて、それを魅せてくれるので、次はどんなものを書いてくれるのか、という期待を抱かせてくれる。

あと、個人的には彼女は、書き始めと終わらせ方がすごく上手いと思う。ゆっくりと滑り込むように物語に侵入して、すーっとフェードアウトするような自然な感じで、好きだ。

タイトルセンスも、素晴らしい。単語一つが多いのだけど、古臭くなく新しさを見せ、作品をその一言で表現できてると思う。『ハイドラ』も好きだけど、特に三作目の『アミービック』は素晴らしい。気になる人は、一読してから、表紙を入念に見ればわかります。





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