オイラは、ボイラ 寒がりボイラ

6月から9月まで迄の4か月間は、失業状態ですが、冬期間はボイラーマンとして出身高校を暖めています。

北の旅人は、東京で何を求める。

2017年02月28日 07時20分15秒 | 北のポエム・北海道発のエッセー
北石美也は、北海道の日本海に面した田舎町に生まれた。父は出稼ぎ労働者、母は、水産加工場で働いていた。
美也は鍵っ子であり、学校から帰ると自分でおやつを作り、夕食も自分で用意して食べていた。
母が残業で、夜9時ごろまで帰らぬ日が度々あったから空腹を我慢できなかった。
美也の母は、袋のインスタントラーメンを箱買いし、美也に預けていた。
地元の高校に入学し、3年間を終えた美也は、自分の進路について漠然としか考えていなかった。
憧れの職業とか、父の仕事についても興味がなかったので、とりあえずこの田舎から都会に出ようと
考えたのだ。ほかの同級生は、札幌に就職するものが殆どであった。しかし、美也はどうせなら
高校の修学旅行で行った東京に行こうと決めていた。田舎の静かな環境とは別世界の人混みの中で生活する
ことに憧れを感じていた。卒業して直ぐの3月7日に北海道の田舎町を旅立った。
まったく宛のない職探しをあえて選んだのは、下積みから始めて、成り上がってやろうと考えたからだ。
とりあえず職業安定所に行けば、職は見つかると思い、東京に着いたらまず始めに職安に行こうと考えていた。

千葉の柏市で一泊した美也は、次の日の朝8時に目覚めた。前夜は、フェリーの2等寝台で大揺れの中、
中々眠ることが出来ず、その分昨日は、早い時間から熟睡した。ホテルの朝食バイキングを食べてから、荷物を
まとめて駅を目指した。東京を目指す為に柏駅に向かった。ハローワークプラザ柏の案内看板を目にして、足が止まった。駅の西口から東口に抜けるとビックカメラの大きなビルがあった。直ぐ左にはそごうデパートがあり、大都会の
風格が揃っていた。そごうの直ぐ横のビルの3階にハローワークプラザ柏があった。
どのような仕事があるか、ちょっとだけ寄り道していこうと思ったのだ。夕方までに東京に行って、東京見物を
した後、ホテルでゆっくりしてから、明日仕事探しをしようと考えていたから心に余裕があった。
職安で、職業斡旋担当の人に話しかけてみた。30代のメガネをかけた細身の美しい女性が窓口に座っていた。
「住み込みの寮で、どこか良い仕事はないでしょうか。」と漠然とたずねると「職種は、どのような物を希望ですか。」とやさしく、尋ねられ、美也は言葉が出なかった。とりあえず、何かの工場でコツコツと働きお金を貯めようと考えていた。
「どこかの工場で給料が良い所ないですか。」と切り出した。「場所は、どこが希望ですか。」と聞かれ「東京」と答えるとくすっと笑顔を見せた。窓口の女性は「どちらから来られたのですか。」と美也の大きな荷物を見て微笑んでいた。「北海道から来ました。」と答えた美也に目を細めて「ご苦労様です。千葉は工場が多いので東京まで行かなくても、色々な仕事がありますよ。土地が広くて、住みやすい町です。房総半島の方は暖流の影響で冬でも暖かいですよ。」と紹介された。「東京まで、電車で1時間以内のところにも工場はたくさんありますよ。」とやさしく話されているうちに、美也は、この人の言うことを信じて、千葉の工場で働いてみようと決心した。




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