- 千人の人が修行に打ち込んだ場合、指導者がよく、各人の心掛けもよければ、千人が千人、阿羅漢向に達することが可能です。そして、少なくとも一週間や二週間は、その状態を維持することが可能だろうと思います。
- そこから阿羅漢果に達することができる人は、その千人のうち五十人ぐらいだけなのです。そして、そこから菩薩になっていくのは、その五十人の中で五人内外にすぎません。これほど厳しい試練が待ち受けているのです。
- 阿羅漢の修行として最も大切なことは何でしょうか。これには、主として二つの徳目があります。
- 第一の徳目は、「一生涯、すなわち死ぬまで自分を磨きつづける」という心構えを持つことです。人間の心はガラスのようにすぐ曇りができて汚れるので、ガラスを磨くがごとく、毎日、自分を磨きつづけることが必要なのです。
- 第二の徳目は、謙虚な姿勢です。なぜなら、阿羅漢の段階でいちばん危険なのは増上慢であり、小さな悟りで満足し、小成してしまう人が出やすいからです。
- 特に、阿羅漢の状態では霊的現象が起きやすいので、注意が必要です。阿羅漢の状態になると、他人のオーラが見えたり、守護霊の声が聞こえたりすることがあるので、「自分は自分は偉大な光の菩薩である」と錯覚することも多いのです。
- したがって、みずからを謙虚に見つけていくことが大切になります。霊的現象が起きたとしても、それに慢心することなく、一つの経験として静かに受け止め、玉石のなかの玉を選んでいく工夫をすることです。
- すなわち、霊的感覚においても安定感が大事なのです。
- 第一に、一生涯を通じて己を磨いていく姿勢を忘れないこと。第二に、謙虚さを特に肝に銘ずること。そして、謙虚さを忘れる原因の一つに霊的現象があるので、それに対して注意すること。阿羅漢の修行においては、これらが大事なのです。
「釈迦の本心」 第6章 人間完成の哲学