日本人のノーベル賞受賞者が出て、街は祝賀ムードだが、蟷螂はその事に水をさす気は更々ない。人類の幸福に貢献する業績を残した研究者が、ノーベル賞によって報われる。国籍を問わずに人類の進歩や平和に貢献した人たちが、社会的に認められる。それが日本人であれば、誇らしい。だが、いつもこの時期になると必ず話題になる人物がいる。本を出版すればマスコミで盛大に取り上げられ、ハルキストなる造語で形容される村上春樹だ。でき損ないの青春恋愛小説や、読むに耐えられない空間小説を上梓し続け、その上今頃は眠れぬ夜を送っているに違いない、鼻持ちならない雑文家。蟷螂はこの時期になるといつも心に一人の作家の名前が浮かび上がる。『丸山健二』だ。著作の数では村上を圧倒し、いや、世界に出しても恥ずかしくない内容の小説を書き続けている丸山健二こそ、ノーベル文学賞に相応しいと、毎年この時期になると考える。村上春樹ほど世界各国で出版されているわけではないが、世俗にとらわれない小説を紡ぎ、そのスケールの大きさは春樹の比ではない。近年は超長編小説ばかり書き綴っているが、過去は中編の良作ばかり書いていた。もちろん丸山健二がノミネートされればそれはそれで不安感が残る。それは、丸山健二がノーベル賞を断らないかということだ。芥川賞を23才で受賞して以来信州の山奥に籠り、あらゆる賞を辞退し続けている丸山健二がノーベル賞を辞退する勇気ある姿。本物の、今では死語となった本物の文士の姿を、その日そこに見ることができるかもしれない。
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