J大病院の診察日までずいぶん時間が開きました。
やはり高貴な方の心臓にメスを入れた教授がいるので、混んでいたのでしょう。
当日の足は、昔、職場で知り合ったタクシーをお願いしました。
誰かにこの気持ちを伝えたかったのです。
そしてJ大の受診日まで、またしても検索です。
度々検索していると、これまでヒットしなかったある施設が頻繁にヒットするようになりました。
SEO対策を万全にして検索エンジンのトップに来るようにしているのでしょうか。
そういう類の広告を出している施設には手を出さないようにしていたのですが、ちょっと覗いてみると『ダ・ヴィンチ』という手術補助ロボットを使った手術を実施していて、右わき腹に4か所ほどの穴を開けるだけで手術が可能だというのです。
当然心が動きました。
そして調べまくりました。
すると、その施設は東京に開院したばかりの心臓専門の病院であること、また、代表は金沢大学で教授を務めていた人で、ドイツの医科大学病院への留学経験もある医師でした。
オンラインでの相談も受け付けているという事なので、ダメもとでメールを出してみました。
心臓財団からの返事はひと月後くらいになるという定型文が届いていたので、当然多忙な先生ならば、定形文のメールが返信されればいい方だと思っていましたが、驚いたことに、メールを送って1時間も経たないうちに、返信が届きました。
秘書の方からもメールをいただき、J大学病院で診察を受ける前日にセカンドオピニオンとして診てもらえることになりました。
その瞬間、暗かった心の中に微かな希望の光が差し込みました。
その病院は東京西部の住宅街にあるのですが、幼いころから青春時代に至るまで、三鷹台にある祖母の家へはよく遊びに行っていたので奇縁を感じました。
それでも個人病院です。
不安が全くないと言えばうそになります。
下町の外れから西のオシャレな住宅街までの移動も問題です。
それに費用は自費になるということが記載されていました。
金額は380万円(現在は保険適応)。
380万というお金をどのようにして工面するか、その点も悩みました。
ケチで名高い同居人の同意を得られそうにもありません。
その先生の病院ではMICSという内視鏡手術も行っているとありましたが、術後直ぐにリハビリをしている高齢者の動画を見るにつけ、次第にダヴィンチに心が傾いていきました。