尾張屋へ愚母をつれてそばを食いに行ったとき、調理場の男性とホールの女性の間で突如喧嘩が始まって困った。愚母は天ぷらそば私はざるそばをオーダーしたが、なんだかすごい剣幕で、互いに一歩も譲らない。ホールの女性はまだ若そうだが、調理場の男性は中年か。尾張屋といえば、娘がオジキの塾に通っていたことがあり、たしか著名な女子進学校に合格したはずだが、もうすっかり婆さんになっているだろうなぁ……などと感慨に耽ったが、言い争いはなかなか収まらない。私が間にはいるのも馬鹿馬鹿しいので、放っておいたが、たしか三社祭りの週だった。私自身も食べ物屋の倅なので、調理場とホールがやりあうのは至極当然だが、客の視線から観ると甚だ見苦しい。他山の石とはこの事だなぁと思った。
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