親の制止を振り切って就職したマルキ倅が、半年もたたずに会社を辞めると音をあげたのはもう6年も前のことだ。理由は二つあった。上司の虐めと残業だ。毎日深夜0時を過ぎなければ退社できず、出社は定時の8時30分。親の制止を振り切って飛び込んだのだから、辞めることにはこちらも依存はなかったが、少しばかり身体のことを心配した。身体は壊れたら治せるが、頭が壊れると取り返しがつかないと思ったからだ。それでも親としては精一杯の虚勢を張り、『今は初年兵だが、来年は一等兵、再来年は上等兵だ。そんなことではどこの会社に勤めても社会の落伍者になる』と叱責し、会社に戻したのがいけなかった。あれから5年半、余程居心地が良くなったのか、家にも寄り付かない。まぁ、ニート状態になり家でゴロシャラされたら、それはそれで問題だが、あのとき『よし、辞表の代筆はオレに任せろ』と親が乗り気になったら、マルキ倅の人生は変わっていた。なにしろ所帯まで持ちやがったのだから…
残業がニュースの俎上に載る度に、あの日のマルキ倅を思い出す。
残業がニュースの俎上に載る度に、あの日のマルキ倅を思い出す。