週末のレイトショーを観に、いつものように新百合丘のイオンシネマに出かけた。今回鑑賞したのは、横山流星、佐藤浩市主演のボクシング映画、『春に散る』。僕は何故か昔からボクシング映画が意外にも好きで、古くはロッキーシリーズ、最近でもクリードシリーズは全て観ているし、ボクシングをテーマにした映画やドラマなどはいつも気になって観てしまう。子供の頃に夢中で観ていた『あしたのジョー』の漫画やアニメにもその原点があるのだと思う。
そんなわけで、ボクシング映画『春に散る』の存在をテレビで知り、公開開始早々観に行くことにした。主演の横浜流星も結構好きというのも観たいと思った大きな要因である。横浜流星と言えば、昔空手でチャンピオンになったこともあり、芸能界でも武闘派俳優として有名だが、彼が吉高由里子と共演していた2020年の映画『君の瞳が問いかけている』の印象が強かった。この映画はボクシングではなく、キックボクシングをテーマにした映画であったが、映画の為に鍛え上げられた横浜流星は圧巻であったし、元々2012年公開の韓国映画、『ただ君だけ』のリメイクだったせいか、どこか哀愁漂う韓国映画らしい展開に、かなり感情移入してしまった良い作品だったので、今回も同様の期待感を持って観に出かけた。
結論として、佐藤浩市をはじめ、ボクシング経験のある片岡鶴太郎や哀川翔、そして山口智子などの豪華俳優陣が脇を固めている点で、それぞれの演技も素晴らしかったし、また佐藤浩市とのトレーニングシーンや、チャンピオン役の窪田正孝との対戦などのボクシングシーンはかなりリアルに殴り合っているようで見事なリアリティを持って表現されていたのはさすがであった。また橋本環奈も佐藤浩市の姪っこ役で登場し、渋い演技を見せていた。
このように、俳優陣もボクシングシーンも良く出来ていたのだが、唯一ちょっと残念だったのが、比較的平凡だったストーリー。だいたいこの手のボクシングものは、最後勝ってハッピーエンドとなるか、負けるけど、大きなものを得て終わるセミハッピーエンド、そして試合結果はともあれ、最後主人公、又は主要人物が亡くなって終わる哀しい結末の3つのパターンに集約される。今回の『春に散る』はこの3つ目のパターンだった。別にどれになってもいいのだが、タイトルからの予想や、物語展開序盤からその後の展開や結末がすぐに見えてしまった感は否めず、ストーリーにもう少しひねりが欲しかったし、佐藤浩市がアメリカから戻り、横浜流星のコーチを引き受けるまでのくだりも、もう少し丁寧に描いてくれた方がより感情移入出来たのではないかと感じてしまった。折角の山口智子の使い方もイマイチであった。
総じて悪い映画ではなかったし、それなりにかなり楽しめたものの、横浜流星の映画としては『君の瞳に問いかけている』の方が、映画全体に恋愛要素や暗い設定・空気感などを描いて、内容的に良く出来ていたし、ボクシング映画として見た場合も、他の有名なボクシング映画に比べ、少し中途半端感があったように思う。豪華な俳優が終結して、横浜流星もボクサーの資格までとって体当たりで挑んだ映画だっただけに、シネコンで観る映画としては少々残念であった。