真田広之が主演・プロデュースしたことでも少し前から話題にはなっていたアメリカのテレビドラマ、『SHOGUN』がなんとあのエミー賞の主要部門を総なめした(18部門で受賞!)ことが今週大きなニュースとなっている。テレビドラマ界のアカデミー賞とも言えるエミー賞で、日本をテーマにした時代劇が受賞し、更に真田広之を始め、日本人が主要キャストを勤めたドラマがアメリカで認められ、評価されたことは途轍もない功績である。
僕の場合『SHOGUN』と言えば、どうしても1980年に全米4大ネットNBCで放送されたドラマ『将軍(SHOGUN)』が強く印象に残っている。ジェームズ・クラベル原作のベストセラーで、実在した三浦按針 (ウィリアム・アダムス)の目から見た日本の侍を描いた大河ドラマであったが、当時三船敏郎、島田陽子が主演して、当時としては大ヒットしたのが懐かしい思い出だ。特に、島田陽子のアジアンビューティーとしてアメリカで大きな話題となり、彼女も世界的に有名になった。
今回の『SHOGUN』はその意味で、この1980年のドラマの“リメイク”に当たるわけだが、今回は按針さんが主役ではなく、徳川家康にインスパイアされた真田広之が演じる将軍が主人公でもあり、前作とは少し切り口が異なっているようだ。また島田陽子が演じたポジションを、今度はアンナ・サワイが魅力的に演じており、またまた大きな話題となっている。
『ラストサムライ』はまだよく出来ている方だったが、それ以外の真田広之が出演したハリウッド映画は、かなりの“なんちゃって日本”が表現されており、日本人から見ると違和感満載の作品が実に多かった(正直『ブリットトレイン』、『ウルヴァリン』、『ジョン・ウィック』もかなりお粗末な日本が描かれていた)。この苦い思いも含め、今回“本物”を作り上げるべく、真田広之が『SHOGUN』では“Authenticity (本物)“に拘ったことも容易に想像が付く。
1973年に、僕の崇拝するブルース・リーが『燃えよドラゴン』で初めてアジア人によるハリウッド主演映画が世界を席巻し、ハリウッド、いや世界におけるアジア人のイメージを変え、地位を向上させたインパクトは凄まじいものがあったが、50年以上経った今、また新たな“壁”を一つ突破したことは、海外で仕事をする同じ日本人としても本当に誇らしい出来事である。
真田広之は、僕の最も好きな日本の男優の一人だ。その昔、“もし生まれ変われるなら、こんな顔になりたい”と真剣に思っていたものだ(笑)。元々は千葉真一が主宰するJAC (ジャパン・アクション・クラブ)に所属し、そのイケメンぶりと華麗なるアクションで1980年代にはアイドル的な人気を博したのが懐かしい。今も渋いイケオジだが、若い頃から相当なイケメンぶりであった。
僕も『戦国自衛隊』、『吠えろ鉄拳』、『伊賀忍法帖』、そして以前ブログでも取り上げた『里見八犬伝』などを見てきたし、その後も日本のテレビドラマの中でも僕の好きなドラマベスト5に入る『高校教師』に主演、また映画では『たそがれ清兵衛』や『リング』などに主演し、単なるアクション俳優としてだけではなく、“本格俳優“としてのキャリアも着実に重ねてきた。
そして、2003年の『ラストサムライ』以降、ハリウッドにて『ラッシュアワー3』、『ウルヴァリンSAMURAI』、『47 RONIN』、『ブレットトレイン』、『ジョン・ウィック/コンセクエンス』などに出演しながら、海外でのアクションや時代劇で実績も積み重ねてきたのを僕も目の当たりにしてきた。トム・クルーズ、ジャッキー・チェン、キアヌ・リーブス、ヒュー・ジャックマン、ブラッド・ピット、ドニー・イエンなどのハリウッドスターとも豪華共演を果たしたことで得た人脈・信頼関係や、ハリウッド界での様々なコネクションを広げて行ったことが、今回ついにプロデュースまで手掛けて、作品全体のグリップを効かせることが出来た『SHOGUN』としてついに花開くことに繋がったのだ。こうして僕も40年以上真田広之の活躍を見守り続けてきたわけだが、『ラストサムライ』からの20年だけをとっても、このような形で今回実を結んだのは本当に感無量である。
実は、僕が一番好きな真田広之の主演作は、1982年に公開された香港との合作カンフーアクション、『龍の忍者』だ。もちろんブルース・リーやジャッキー・チェンからの流れで、カンフー映画・忍者映画がそもそも大好きだったというのもあるが、この映画での真田広之のアクションは切れ味が抜群で、彼の最も旬だった本格武道アクションを観ることが出来る貴重な作品。しかも、これが真田広之として最初の“海外主演作品“とも言える映画であり、アジアでの成功も海外進出への大きなステップになった筈だ。
今回の『SHOGUN』はまだ観ていないのだが、現在ブルーレイを取り寄せ中なので、今年の秋はじっくり全10話を楽しみたい。そして、真田広之のこれまでの苦労と功績を噛みしめながら、アメリカ人、そして日本人両方の視点で観賞してみたいと思う。