3/11(土)から神保町シアターでスタートした5回目の開催となる『恋する女優 芦川いづみ』映画祭に参加した。今回のお目当てはとてもわかりやすく、まだDVD化されていない2本の芦川いづみ主演作、『東京の人 』と『白い夏』を観る為である (今回上映される20作品の内、18作品は既にDVDで持っているのだ(笑))。
まずは映画祭初日の3/11(土)に朝一の10:30から『東京の人 』の上映回があったので、朝9時から神保町シアターの前に並び、チケットと整理券3番をゲット。最初は1-5番の整理券から入場出来るので、まさに念願の一番乗りである。
小さなロビーには、所狭しと芦川いづみの写真、ポスターで今回上映される20作品が紹介されているが、手書きのポップなどもあって、いつも手作り感がとても好感が持てる。それにしても、毎回芦川いづみ映画祭はお年寄りの方が殆ど(笑)。僕はほぼ間違いなく参加者の中で最年少だと思うので、毎回若返ったような気持ちになる。
今回観賞したのは1956年に公開された日活モノクロ映画、『東京の人 前篇/後篇』。何故か前篇、後篇となっており、それぞれ1時間程度あるが、今回立て続けに前篇・後篇が公開されたので計2時間の作品だ。川端康成の文芸大作が原作で、監督は西河克己。主演は当時大人気女優であった月丘夢路、新珠三千代が競演しており、そこにまだ若い芦川いづみが更に競演している点で、今観ると何とも豪華な顔ぶれである。
この映画は、冷静に話に目を向けて見てみると、かなりドロドロとした人間模様を描いた映画だ。とある社長の会社が倒産に追い込まれ、とんでもないことに独立する為に集めた資金を持ち逃げしてしまう。そして社長に想いを寄せる秘書(新珠三千代)の説得もむなしく、社長一人で行方をくらましてしまう。そんな社長の家族(妻(月丘夢路)と3人の子供たち)は家を売るハメになり、新たな生活を強いられる形で振り回されていく。この3人の子供たは、上の兄・長女と、二女は腹違いの兄妹。つまり、失踪した社長と血が繋がっているのは二女(芦川いづみ)だけ。二女と、秘書は社長を探そうと奔走するが、そんな中、妻は二女の盲腸の手術を過去に手掛けた医者(葉山良二)と恋に落ちてしまうが、元々この医者は、二女にほのかな恋心を抱いていたが、その母との関係を持ってしまうのだ。また血の繋がっていない兄は、二女に恋心を寄せ、舞台女優をやっている長女の妊娠騒ぎなども交えて、かなり人間模様が複雑に絡みながら泥沼化していく。
さて、この映画における芦川いづみだが、1956年の映画ということで彼女の初期作品だけあって、まだ初々しい彼女の魅力が満載だ。いきなり映画の冒頭は、母と一緒の入浴シーンで始まり、映画全編を通してかなり出番も多く、印象的なシーンも多い。よって、月丘夢路、新珠三千代という大女優を前にして、彼女は立派な主演陣の一角を担っていると言える。初期作品の中では、『青春怪談』の雰囲気が結構好きだったが、この『東京の人』もなかなか味わいのある芦川いづみ作品であった。
モノクロ作品でもあり、比較的地味な印象もあった作品だが、観てみるとそのドロドロした人間模様も交え、東京ロケもふんだんに盛り込まれている点で、当時の東京の街並みや駅や羽田空港なども確認出来るという意味で、とても歴史的な価値のある作品だ。そして芦川いづみの魅力もしっかりと盛り込まれているので、とても見応えのある作品であった。