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ジブリ最新作、『借りぐらしのアリエッティー』の静かなる感動

週末に家族で映画『借りぐらしのアリエッティー』を見てきた。スタジオ・ジブリの最新作だが、今回は宮崎駿の企画・脚本を元に若手監督の米林宏昌を監督に起用した。『崖の上のャjョ』などに代表される、宮崎駿自身が監督を手鰍ッ、大々的にPRされた作品等に比べればやや控えめな作品に映るが、本作は静かなる感動の余韻が見終わった後に残る、素晴らしい作品であったと思う。



映画の設定は、古い家の床下に住む小人たちの物語で、人間に発見されてはならないというのが揩ナあり、見られたら引っ越さなければならないというもの。原作は1952年に出版されたメアリー・ノートン作の『床下の小人たち』という作品で、宮崎駿と高畑勲が40年前から温め続けた企画だが、2008年頃からついに映画化に向けて動き出したようだ。



アリエッティーは14歳になる小人の活発な女の子で、父のャbドと母のホミリーの3人暮らし。人間に見られないように長い間この古い家の床下で密かに暮らしてきた。この家から電気や水、そして様々な生活物資を少しずつ借りながら生活しているまさに『借り暮らし』。物語設定のスケールとしては、これまでのジブリ大作のようなファンタジーの世界観では無く、全てこの家の周りで起っている小さな物語で、しかも4-5日間の出来事に過ぎない。しかし、小人であるアリエッティーから見ると人間の世界も途轍も無く大きく見え、普通の世界もファンタジーのようなスケール感に広がってくるから不思議なものである。物語の前半に、アリエッティーが父親と一緒に様々な道具を持って人間の住む家の中に潜入し、角砂糖とティッシュペーパーなどを調達しようとするシーンは、それ自体がかなりの冒険になっており、ワクワクさせられる。そして両面ガムテープなどを駆使して壁などを登る発想はとても新鮮な場面を作り出すことに成功している。

また、この映画の魅力の一つが、床下に作られたアリエッティーたちの家。植木鉢を暖炉にしたり、灰皿を水貯めにしていたり、切手が額に入れられて壁の絵画になっていたり、ワインボトルを明り取りにうまく使っていたりと、人間界にある何気ないものを使って巧みに作られている小人の家の発想は実に面白いし、ドールハウスの部屋を覗き込むような何とも言えないワクワク感があるのだ。



アリエッティーたちの床下の家は舞台美術監督の種田陽平氏が手鰍ッたものだが、忠実に人間大に再現した展示が現在東京現代美術館で開催されているので、こちらもぜひ見てみたい。



さて気になる物語だが、アリエッティーが床下に住む家に、12歳になる人間の男の子、翔がやってくる。間も無く心臓の手術を行う予定で、それまでの間静かな場所で生活した方が良いとの配慮から、翔の叔母、貞子のこの家に手術までの1週間だけ住むことになったのだ。家には叔母の雇うお手伝いさんのハルがいるだけで、実に静かで自然豊かな小金井の一軒家という設定だ。しかし、翔が家にやってきた日、猫が睨む草むらの中に、偶然にもアリエッティーを見かけてしまう。翔は昔この家に住んでいた母に、この家には小人がいるという噂は聞いていたが、翔はアリエッティーに興味を持ってしまう。アリエッティーも、人間に見つかってはいけないと警戒心を持ちながらも、この親切で優しい心を持つ翔に好意を持ち出す。翔に見られてしまった以上、引っ越さなければならない為、家族3人で新しい住まいを求めて引っ越すことを決意する。

また途中で同じく小人種族の男の子、スピラーと出会い、彼のサメ[トで新しい家に引っ越していくことを決意するのだが、ラストに近い、引っ越していくアリエッティーとの別れ際のシーンで、翔がアリエッティーに告げるセリフがあまりにも感動的であった。種族の継承を予感させるスピラーとの出会いと旅立ち、そして翔の心臓手術の成功を予感させるアリエッティーとの出会いがとても神秘的で生命の輝きに満ちた一瞬として、忘れ得ない特別な出会いであったことを見事に描いている。

映画音楽は、日本では無名に近いフランス人歌手のセシル・コルベルが音楽を担当しているが、ケルト音楽的な神秘的な旋律が物語と見事に調和している。

声優陣もなかなか多彩だ。アリエッティーには志田未来、母ホミリーに大窒オのぶ、父ャbドには三浦友和、ハルには樹木希林。翔には神木隆之介、貞子には忠コ景子。スピラーには藤原竜也。面白いのが、声優陣が登場人物のキャラクターにも結構顔が似ていてそのまま実写版でも出来そうな雰囲気である。



『借りぐらしのアリエッティー』は、恐らく興行成績的にはこれまでのジブリ大作を追い抜くような作品では無い。しかし、恐らく見た人は感じてくれると思うが、見終わった後に残る静かな感動の余韻に浸れる、そんな名作が完成したという印象で、個人的にはジブリ作品の中では一番のお気に入りとなった。また、DVDが出たらじっくりと堪能したいと思う。

コメント一覧

バーバリーブルーレーベル
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お世話になります。とても良い記事ですね。
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