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見応えのあるNHKドラマ、『ライオンのおやつ』!

前に僕のお気に入りの小説、『ライオンのおやつ』について取り上げたが、この小説がNHKでドラマ化された。小川糸の作品はかなり好きで読んでおり、彼女の代表作でもある『食堂かたつむり』は映画化されているし、僕が特にハマった『ツバキ文具店』は多部未香子主演でNHKにてドラマ化され、DVDも持っているほど気に入っているが、NHKとの相性が良いのか、今回もNHKでのドラマ化だ。恐らく安定の出来映えは約束されていると思われ、放映前から楽しみにしていた。



ドラマ『ライオンのおやつ』は、6月27日からNHK BSプレミアムドラマとして放映が開始され、全8話。今このブログを書いているタイミングでは第7話の放送なので、いよいよ終盤である。



主演は土村芳(つちむら かほ)。彼女を初めてテレビで認識したのは、同じくNHKの朝ドラ『べっぴんさん』。芳根京子が演じた主人公すみれの女学校時代の同級生を演じていたが、なかなか良い感じの女優さんだなあ、と思っていた。その後も色々な映画やテレビドラマに出ていたが、今回主役として久しぶりにドラマで見たように思う。



この『ライオンのおやつ』は、若くして余命を告げられた女性が、瀬戸内の島のホスピスで過ごす残りの日々を描いた小説なのだが、正直そもそもこういった“死”をテーマにした小説は苦手で、これまであまり興味が無かったし、普通なら僕が絶対買わないタイプの本だった。しかし、何故だかとても暖かい雰囲気を感じてしまった表紙の挿絵に惹かれ、また、『ライオンのおやつ』と言う不思議なタイトルにも導かれて、ついつい本を手に取って購入し、一気に読んでしまった。



末期癌のステージ4。若くして余命を告げられた主人公の海野雫は、瀬戸内の島のホスピスで残りの日々を過ごすことを決め、瀬戸内の穏やかな景色のなか、本当にしたかったことを考える。当然ながら、余命を告げられた時は信じられず、受け入れることが出来なかったが、延命治療よりも、穏やかに最後を過ごすことを選んで、これまでの人間関係を断ち切り、一人でこの瀬戸内のホスピスにやってきたのだ。そこで、何とも心が暖かいホスピスの“マドンナ“や、住人たちとのふれあいを通して、雫は少しずつ死に対する恐武Sや不安を軽減して行き、また残りの短い時間をャWティブに捉え、最大限エンジョイして行く様子が、とても活き活きと描かれている。



テレビドラマも毎週楽しみに見ているが、土村芳は適度にいい意味で地味な雰囲気が主人公を演じるのにとてもマッチしていた。ドラマは小説をかなり忠実に再現しており、小説を読んだ時に思い描いていたイメージにとても近い。特にホスピス、ライオンの家のイメージや、ホスピスで一緒に過ごす人々がとても活き活きと描かれている。またホスピスの“マドンナ“役には、鈴木京香が演じており、これがまたなかなか上手くマッチしている。



この物語には、可愛いビションフリーゼのワンちゃんも登場する。以前ホスピスで息を引き取った人が飼っていたワンちゃんの六花を、ホスピスのみんなでお世話をしているのだが、雫の幼い頃の夢の一つとして、ワンちゃんを飼うことだった。余命僅かにして、一つ夢が叶った瞬間でもあった。



また、雫は淡く、束の間の恋心も物語の中で抱くことが出来るのであった。ホスピスの近くで明日葉を栽狽キる青年に心を寄せるが、この青年を竜星涼が演じている。ホスピスの住人や職員には他にも和田正人、かとうかず子、濱田マリが出演しており、毎回ホスピスの誰かのエピソードにフォーカスして物語が進んで行く。



物語の中で、雫の生い立ちなども語られるが、雫は若くして母親と死別し、父親(石丸幹二)の手一つで育てられる。父とはとても仲が良かったが、父が再婚すると決めた時から、雫は同居せずに自立することを決めたのだったが、病気のことも父に決して伝えないまま、ホスピスに入居。そんなとても辛く切ない過去や現状なども全て背負った上で、まさに人生最後の時までを精一杯の幸せな時間の中で迎えようとしているシチュエーションがとても切なく、心に響く。余命僅かの人が思うことを本当の意味で共感出来るわけもないが、どこかで自分のことのように感じてしまうという意味では、感情移入してしまう自分がいた。しかし、もし自分が同じ立場だったら、そもそも絶望の中で発狂して、やけになって、何かとんでもないことをしでかしてしまいそうだ。余命宣告など、正直受け入れる自信は全くない。恐らく大半の人がそうであろう。



ホスピスでは毎週日曜日、入居者がリクエストできる「おやつの時間」があるのだが、毎回食べる前に、選ばれたおやつをリクエストした人のコメントが読み上げられる。本のタイトルになっている“ライオンのおやつ“とは何のことか気になっていたが、実はこのホスピスの名前は”ライオンの家”で、そこで出されるおやつの話なのであった。また、このホスピスでは、百獣の王ライオンのように、周りを気にすることなく、マイペースで自由に生活が出来るようにとの願いが込められていたのも納得。『ライオンのおやつ』とは何とも良いタイトルだ。



テレビドラマ版は、小説のイメージと暖かさをとても良く表現していた。脚本監修には岡田恵和が参加しているだけあって、とても上手く、良いテンモナ展開していく。小説を既に読んでいるので、物語の展開としては既に知っているのだが、それでもテレビドラマとして改めてビジュアルで入ってくる物語は、更に味わい深いものがある。土村芳の演技も見事で、毎回泣きそうになってしまうシーンが登場し、胸を打つ。さすがNHKらしく、とてもそつなく、良いドラマに仕上げたものだ。最終回まで毎回じっくり観賞して行きたい。
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