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1978年に公開された『死亡遊戯』以降、ブルース・リーロスに陥っていた世界のブルース・リーファンにとって、“えっ、まだブルース・リーの未公開映像があったの!!”と本気で興奮したのを良く覚えているし、今のようにネットで話題が広がるわけでも無く、マスコミや映画雑誌などからの情報がジワジワと広がって話題になるまでそれなりの時間を要した時代である。
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この映画にブルース・リーは確かに登場する。しかし、その登場シーンは実際には賞味3分程度しかない。しかも、それは『燃えよドラゴン』で、寺院で少林寺の名を汚したハンについて、僧侶と話をするシーンの未使用フィルムと、極僅かだが、ハンの島で宿泊する部屋で、部屋の中の鳥籠や、デスクの上にあった武術書を取り上げるシーンと、妹がオハラに殺された様子をリーに説明する父親と部屋で会話するシーン。どれも『燃えよドラゴン』の未使用フィルムだが、本当に悲しいくらい僅かしか使用されておらず、後はそっくりさんのタン・ロンによるボディーダブルを使って映像を繋いでいる。これは『死亡遊戯』でも同じように代役を務めたのも同じタン・ロンというアクション・スターである。
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『死亡の塔』のストーリーだが、ブルース・リー演じる兄ビリー・ローが映画の前半20分くらいで殺されてしまい、後は弟ボビー・ローが兄の復讐を果たすという内容。興味深いのは、タン・ロンが、兄ビリーの代役を果たすと同時に、弟ボビーとしては顔出しのフル主演を初めて果たしているということだ。ある意味、ようやくブルース・リーのそっくりさんとしてではなく、胸を張って主役だと言える役を勝ち取ったことである。つまり、『死亡の塔』はブルース・リー映画では無く、正真正銘の“タン・ロン主演映画”なのだ。しかし公開当時、ブルース・リー映画だと思って観に行った僕を始めとする多くのブルース・リーファンの怒りと落胆は大きく、映画の途中で、“なんだよ、これ!金返せ!”と思ったのを良く覚えているのだが(笑)、その後タン・ロン映画だと割り切って観賞すれば、それなりにクンフーアクションは優れており、面白いカルト映画である。
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ちなみに、このタン・ロンは韓国の俳優で、ブルース・リーに憧れ、『ドラゴンへの道』でのブルース・リーの役名であったタン・ロンをそのまま喧シにした。武道も得意だったことから、生涯ブルース・リーのそっくりさんとして活躍した俳優なのだ。タン・ロンは正直ブルース・リーのようなオーラは無く、顔も似ても似つかないが、アクションはかなり得意だったことから、『死亡遊戯』ではアクションシーンの代役として大抜擢されたのである(顔のアップダブルは、アクションは出来ないが顔がもう少し似ていた別の役者が演じていた)。そんな代役としての陰ながらの活躍がようやく認められ、この『死亡の塔』で主役に起用されたのだ。
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タン・ロンはその後も幾つか映画に主演するが、生涯ブルース・リーのそっくりさんというレッテルから逃れることは出来ず、2011年に54歳で亡くなってしまった。アクションに長けていた為、ブルース・リーのそっくりさんでなければ、もっと色々な香港アクション映画でも活躍出来たかもしれないが、でも逆にブルース・リーのそっくりさんを演じていなければ、ここまで名が知れることも無かったかもしれず、果たしてどちらが本人にとって幸せだったのだろうと思うとなんとも複雑であり、と同時にその運命を振り返ると切ない気持にもなってしまう。
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尚、『死亡の塔』は、ある意味『死亡遊戯』にも若干ストーリーが似ており、地下に創られた“塔“である敵のアジトに潜入し、次々と強敵を唐オていく展開。このアジトがSF映画チックなセットだったり、明らかにキグルミのような虎に襲われたりと、かなりチープな設定が結構笑えるが、日本ロケ(増上寺でも大々的なロケを敢行)も行っている意欲作なのだ。
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ブルース・リーの映画権を全て持っていたゴールデン・ハーベスト社のレイモンド・チョウプロデュース作品という意味では、本筋のスタッフ陣が手鰍ッた映画であり、ジャッキー・チェン映画を監督したことで有名になったウー・シー・ユエン監督作であり、また武術指導もユエン・ウーピンが手鰍ッているという意味では大変貴重な作品なのだ。ちなみに、ユエン・ウーピンはジャッキー・チェンを一躍有名にした『スネーキーモンキー蛇拳』、『ドランクモンキー酔拳』を監督し、『グリーン・デスティニー』や『グランド・マスター』、『イップマン』など比較的最近の香港映画でも監督を手鰍ッ、ハリウッド映画でも『マトリックス』や『キル・ビル』の武術指導を担当したことで、世界的にもその名を知られる大物監督なのである。
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このように、改めて『死亡の塔』を様々な観点で観賞すると、何ともカルトな映画ながら、純粋なタン・ロンのアクション映画としては比較的良い出来映えであり、映画自体も大いに再評価出来る作品である(但し、あくまでもブルース・リー映画に分類すべきでは無く、逆にタン・ロン主演映画に、ブルース・リーが特別・友情出演をしているとして捉えれば、愛着も生まれるというものである)。