鬼才ティム・バートン監督は僕の好きな映画監督の一人。彼の作品はかなり観ているが、振り返ってみると、僕が一番最初に観たティム・バートン作品は1985年に公開された『ピーウィーの大冒険 (英語タイトル: Pee Wee’s Big Adventure)』だった。
1985年と言えば、ちょうどアメリカNYのハイスクールに通っていた頃で、音楽業界では80’s音楽やMTVで大いに盛り上がっており、映画では『Back to the Future』やスピルバーグ監督の作品、『ビバリーヒルズコップ』、トム・クルーズ主演の映画などが大ヒットしていた華やかな時代であった。
映画『ピーウィーの大冒険』の主役、ピーウィー・ハーマンはコメディアンで、本名はポール・ルーベンスという。この映画によって全米でブレイクして、テレビ番組、『Pee Wee’s Playhouse』という子供向け番組でその人気を不動のものにしていた。しかし、その後スキャンダルなどもあって俳優・コメディアンとしては落ちぶれてしまい、結果映画で爪痕を残したのはこの『ピーウィーの大冒険』のみと言っても良いだろう。
今年の7/30にポール・ルーベンスが亡くなったとのニュースが流れたというのもあって、何だかこの『ピーウィーの大冒険』がむしょうに観たくなり、先日DVDを買おうと思い立ったのだが、亡くなったからなのか、DVDは売り切れているケースが多く、入手にかなり苦労した。かなりマニアックでマイナーな映画でもあり、恐らく日本では知らない人も多い作品ではないかと思う。しかし、僕は多感なハイスクール時代に観たこともあり、とても思い出深い映画となっている。
この映画は、あのティム・バートン監督初の長編映画としても知られている。今観返してみると、いかにもティム・バートンらしい奇抜でマニアックな笑いや演出が随所に見られ、結構面白いし、前半にはヒッチコックへのパロディー(オマージュというべきか(笑))などもあり、後半は撮影所でゴジラやキングギドラなども登場するおまけ付き。
グレンチェックのぴちぴちスーツに、つんつるてんのズボン、赤い蝶ネクタイのピーウィーが、自慢の愛車の“赤い自転車”を盗まれてしまう。インチキ占い師の占いで、自転車はテキサスのアラモにあると言われ、遥々地の果てまで自転車を探しに行くことになったピーウィー。このあたりはロードムービー的な面白さもある。そしてどんどんとんでもない大冒険が始まっていくという、ドタバタおバカコメディー映画である。
冒頭はピーウィーがマニアックな自宅で目覚めてからの一連のルーティンを紹介するところから始まるが、この家がまたとても変わっており、『チャーリーとチョコレート工場』的な面白さがある。そして、ピーウィーの“赤い自転車”を持っているが、超お金持ちの同級生、フランシスがこの自転車を狙っていた。ある日、街で自転車を厳重にチェーンぐるぐる巻きにして停めて買い物をしていたが、戻ったところ鎖が切られ、自転車が盗まれているのを発見。警察まで巻き込み、慌てて自転車を探しまわるが見つからない。失意の中、占い師の店にフラっと入ると、自転車がテキサスのアラモにあるというのだ。
自転車を探す旅に出るピーウィーは様々な人に出会いながら、最後はハリウッドのスタジオの中に逃げ込み、ハチャメチャな展開になって行くのだが、最後はこのハチャメチャな大活躍を買われ、なんとこの自転車の旅を題材に映画化されることになるというオチ。そして公開された映画は、イケメン俳優がピーウィー役を演じており(ちなみに、映画中の映画の相手役女優を、当時大人気であったセクシー女優、モーガン・フェアチャイルドがゲスト出演しているのも懐かしい)、まるで007のようなサスペンス大作になっていたが、旅の途中で出会った人々がドライブイン上映会に招待されており、ハッピーエンドとなる。
久しぶりに観たが、やっぱり当時映画館で観たハイスクール時代が懐かしく思い出されたし、でもやっぱりくだらない超B級映画だということを再認識(笑)。でも改めてティム・バートンの劇場第一作という目線で観ると、結構新鮮な面白さがあった。ティム・バートンの作風が好きで、後に残らないおバカ映画を観たい人にはお勧めな1本である。