<先日の雪とドラマ『北の国から』>
関東に降った、先日の雪。朝、窓から外をみると真っ白な雪景色。わたしは赤いブーツ(防水靴)をはいて外に出ると、素手で雪にふれました。手のひらに雪の塊をそっとのせたり、キュッとにぎったり、それを新雪の上でころがしたり。雪をふんで鳴らしたり、空からおちてくる雪をながめていたり…。ちょうど最近『北の国から』を観ているのですが、私は北海道の出身なので、いろいろなことを思い出します。今日はただそんなお話です。
<雪かき>
翌日はあっという間に溶けてしまった、先日の雪。じつは、わたしにとっては心地よい雪でした。実際の雪暮らしはきついですが、ほんの1日だったと言うこともあって、懐かしい雪でした。__父がいつも白い息を吐いて、家の周りの雪かきしていたことを思い出します。子供の頃はとくに、雪かきをしないと道路には出られませんでした。車のエンジンを暖機しながら、父は雪を書いていました。『ウチが潰れてしまうべさ』と言いながら屋根の上に登って、雪下ろし。
「北の国から」の五郎さんをみていると、何だか父を思い出します。顔が似ているのではなくて、雪国で育ててもらったんだなと思ったり、白い息を吐きながら雪かきをしていた姿を思い出すからです。そんなに口数も多いほうではなかったことも。弟と雪合戦したり、雪だるまを作ったり、父がかまくらを作ってくれたりなど。純と蛍をみていると、子供の頃を思い出すのです。ソリやスケートや白鳥を見に大沼や香雪園に車で連れていってくれたこと。五郎さんの視点で子どもたちをみている場面では、ああ、父もこんなふうにわたしと弟をみていたんだろうなと、ふと自分に重なったりします。
…もちろん、じぶんのことばかりではなくドラマのストーリーに、ぐんぐん心惹かれています。『北の国から』は、わたしの10代〜20代の頃にオンエアでした。でも、うろ覚えだったりします。この物語はきっと今だから、しみじみと胸に沁みてくるのでしょう。こころに響く場面や台詞にあふれています。北海道の四季や時代を超えて丁寧に撮影されていて…こんなスケールの大きいドラマ、他にないのではないでしょうか。ドラマを観ていると、自分の生きた時代が重なっているから、あれこれ思い当たることや口づさんでいた流行歌が出てくるので、嬉しい。
<つらら>
つららは、『氷柱』と書くだけあって、氷の柱です。家の暖かさや屋根の構造が違うですから、今時はもうあんまり太い氷柱はないと思いますが、大きくて太い氷柱をみつけると、それを落として遊んだり、好きな形の頃合いをみて、そっと一本外したり。__危ないんですけどね。春に軒下から、ひとがみつかったなんてニュースもありました。
春が近づいてくると、つららはとけるので、先っぽからポタポタとしずくが落ちる。
透明になって、晴れた日には陽を透かしてとてもきれいだった。
赤いランドセルのころ、セーラー服のころ、三つ編み・白いソックス・ローファー、学生鞄のころ、なぜだか通学路のつららを思いだします。そして、建てなおす前の、庭に桜の木がある、一番古い時代の家の風景なども。…その家では春になると、満開の桜が窓の外に咲くのです。その時期は5月です。
<北国の暮らし、思い出話>
小学校にあがる前、家にはもちろん冷蔵庫はありましたが(家具調テレビも)、祖母は畑で作ったにんじんやじゃがいもを、雪の下の土に穴を掘ってそこに貯蔵していました。何でそんなことをするのかなと思っていましたが、乾かず、冷たい土の中で腐らず、あれはいちばん良い保存方法だったのでしょうね。また、外に水道管が出ていた時代には、朝、母や祖母が水道管にヤカンでお湯をかけることをしていました。一時期、牧場から一升瓶で牛乳を届けてもらっていたことも思い出されます。車で遠くからきていたのだと思いますが、玄関に牧場のおじさんと、わたしと同じ歳くらいの息子さんと二人で並んで、一升瓶の牛乳を持って立っている姿が今でも目に浮かびます。お鍋で沸かしてから飲むのですが、おそらくバターになる黄色い脂肪(?)が取れるし、沸かしてできる膜も厚かった気がします。ものすごく濃いのです。きっと栄養が満点だったでしょうね。それを思うと、のちに買っていたパックの牛乳はサラサラしていました。
<父のこと、そして田中邦衛さんのこと>
一昨年、わたしの父は亡くなりましたが、雪の日と、今見ているドラマ『北の国から』は、ずっとずっと昔の、懐かしい記憶を思い出させてくれました。お父ちゃんのセーター姿、帽子、温かい大きな手。とても、懐かしいです。
田中邦衛さんは一昨年、2021年3月24日に亡くなられたそうです。生涯俳優としてたくさんの役柄を演じられた邦衛さんですが、『北の国から』世代には「とうさん」「黒板五郎」「五郎さん」として親しまれています。
俳優座創立者の千田是也先生の葬儀のとき、俳優座養成所出身の田中邦衛さんは駐車場で案内係をしていた研究生のわたしの顔を覗き込んで「車はこちらでいいんですか?」と声をかけてこられました。うすい茶色の瞳が、あまりにも澄んでいて、きれいで、ハッとしました。…やわらかくて透明感のある声。同時に黒い喪服姿の邦衛さんは「北の国から」のドラマからそのまま出てこられたかのようで、一瞬魔法にかけられたように黙ってしましました。「… こちらで?」と追っておっしゃる邦衛さんに、役立たずのわたしは「ハイ、こちらです」とやっと答えたのでした。
雪がみせてくれた、思い出たち。
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つららがすっかり落ちると、春になる。
最後までお読み頂きましてありがとうございました。
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