D'Trick mania

Le champagne et la santé, hier et aujourd’hui

長野まゆみ 『若葉のころ』

2010-04-07 | book
このシリーズは4冊目で完結。

人間関係としては主人公が想い人と結ばれてハッピーエンド、というのを情感豊かに背景の自然を描写しながら書いている。
終わり方は『彼ら』同様タイトルに結びつけていく手法でしめている。

しかし、なんだかすっきりしない。


もう一度読み返してみる。

気づくのは「」が付く台詞が多い事。
それが分かりにくく、自覚しているかのように台詞の意図する心情を更に書き説明している。

背景描写は草花についてが多く、行動範囲が限られているとはいえ、それ以外の要素が少なく事。
また情景描写がストーリーの中で浮いているように、取ってつけたように感じる。

言うまでもなく主人公以外の扱いがおざなりで都合良く動かされているように思える、のは『白昼堂々』から分かっていたとは言えなんだかなーと思ってしまう。
これは読者の嗜好によるのかもしれないが、私は最後まで有沢が言うように氷川の「どこがいいのかさっぱり解らな」かった。


期間をおいた書き下ろしの作品故、時間がなかったとかページが足りなかったという理由はないだろうから、主人公の心情に重きがおかれた本作は「恋愛小説」だったと結論するしかない。



単行本:2001年11月
文庫本:2005年4月


「…凛一君は、花を挿けるときにあまり手を加えずに、あるものを選びとってもってきちゃうという挿け方なんですよね。作品に自分の感情を移入しないんですよ。江戸時代までの人のように「自己」はない。気分のいいときはこういう花、っていうのは嫌いな人なんです。でも「その花が欲しい」という人なんです、凛一君の場合は。」

「(化粧井戸)の場面を書いたときに、突然違う世界が開けちゃったんです。私にとってもあの場面とあの設定は魅力的だったんですけど、この筋の中ではまるで関係ない。それにそっちへ行ってしまうと終われないので(笑)、気がつく人だけ気がつけばいいんです、その深さに(笑)。」

(逆にどうしてこの小説にこのテーマが出てきたのかなと思ったんですよ。『テレヴィジョン・シティ』以来、久々のテーマじゃないですか、この躰の中野空洞感みたいなものは。)
「そうなんですよ。でも、その空洞感を持っているのは凛一じゃないくて、千迅の方なんです。…」

(文藝別冊より 著者談)



「書き下ろし作品。凛一が京都のK大学2回生の春を迎えるところから物語が始まる。アメリカに行った有沢の突然の帰国、氷川との関係の悪化、そして凛一が知らなかった家族の思い出を経て凛一は自らの気持ちと向き合う。氷川もまた、亡き兄への想いからの解放を望んでいた。お互いに惹かれあいながらも、どこかすれ違いが続いていた凛一と氷川の関係にひとつの答えが出されるシリーズ完結篇。…」

(別冊文藝より 大串尚代評)

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2 コメント

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おそらく… (aoi)
2010-04-08 19:10:00
4作も書き進めているうちに、キャラに気持ち入り込みすぎて台詞増えてますますあれな小説みたいになっているんじゃないですかね…。
と、読んでるときに思いました…。

この2人(凛一と氷川)ほんとにすぐ別れそうですよね。
だいたい氷川ってやつは…(以下略)
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そうかー (Marie)
2010-04-08 23:36:49
入り込みすぎているんですねー。
納得。
なら著者以外(主人公以外)氷川の良さは分からんさー。笑

先輩は誰が好きですか?
ふふ
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