久しぶりに皆川博子の作品を手に取り、そしてなんらかのコメントを記載する程度の余裕が出来た。
読書というものは幾通りの手段と結果があるが、皆川博子の作品は色々な面で余裕がないと立ち向かえない類のものである。
そして旬というものがなく、特殊であり、ある意味普遍的であろう。
そんな中でも皆川博子のライトノベルと言える位の、表面的には平易で、題材としても割合一般的なモチーフ?の本作品。
さらさらと(皆川作品の中では)読みやすく、(皆川作品の中では)まずまず平穏なエンディングであったと思う。
あくまで皆川作品内でという事であるが。
ページをめくれば現実世界から異国の彼方へと連れ去り、冒険を楽しめるようなファンタジーの王道である、田中芳樹の『アルスラーン戦記』は、ようやく今更のんびりと読んでいるが、正当・王道のファンタジーである。
それに対して皆川作品は、異国の世界に誘うという点においては同じく、あるいは比類ないが、蠱惑的、麻薬的、二日酔いのない?深酒のように、酩酊し、余韻がいい意味でもそうでなくても長い。
もしかしたら悪夢をみて醒めた時に類似するかもしれない。
『少年十字軍』は他の作品よりはその傾向が薄い。
でも十分にその魅力と効果か兼ね備えており、アニメ的な表紙があろうと、後書きの背景があろうと、天使と悪魔と神と人間が交差する中世ヨーロッパに旅をすることは十分に可能である。
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