菜の花の花盛り・・・江部乙町の菜の花畑です。
元気が出る黄色ですね!
潮流 (5月26日)
「わしの分まで生きてちょんだいよォー。」山崎一さん演じる”おとったん”のセリフが響き渡ると、客席が
水を打ったような静けさに包まれました。原爆の残酷さを親子の情愛で描いた井上ひさしの2人芝居「父と
暮らせば」です。(30日まで上演)▼生き残ったことに負い目を感じ、恋心を封印する娘と恋の応援団長
を買って出る父。実は父は原爆で死んでいて、幸せになりたい、と願う娘の心の中の幻影でありことがわか
ってきます。被爆者の女性が一歩を踏みだすまでの物語。山崎・伊勢佳世コンビのユーモアあふれるやりと
りと、美しい広島弁が、やさしくて切ない。▼「バタフライ効果」という言葉があります。一羽のチョウの
羽ばたきが、海峡の対岸に嵐を起こすことが、可能性としてあるという理論です。ひさしは演劇で核廃絶の
ムーブメントを起こそうとしました。「これら切ない言葉よ、世界中に広がれ」と念じながら▼1994年の
初演から27年。翻訳本は6ヶ国で出版され、上演回数は500回以上に。ひさしの念願だった核兵器禁止
条約は、被爆者の運動もあって今年ついに発効しました。しかし、日本政府は背を向けたまま。ひさしの嘆き
が聞こえてくるようです。▼ヒロシマ・ナガサキを「人類史の折り返し点」と位置づけ、60歳で執筆。
「初めて自分が戯曲を書く意味がわかった」と三女の井上麻矢さんに語ったそうです。▼「記憶せよ、抗議
せよ、そして、生き延びよ」が信条。「記憶」のバトンは確実に受け継がれています。
(しんぶん赤旗より)