ケアトリハ

介護とリハビリの仕事をしている方、目指している方、介護やリハビリってどんな世界なの、という方に読んでいただきたいです。

言葉遣いや態度

2020年03月23日 | 介護とリハビリ
医療や介護の現場では、言葉遣いについて気になることが多々あります。

私は、理学療法士になる前は、介護士でした。
介護士になる前は、一般的な会社で働いていました。
当然のことですが一般的な会社では、お客様相手の商売が多いため、お客様に対する言葉遣いや態度といった「接遇」について、しっかり研修を受けます。

一方、医療や介護の現場はどうかと言いますと、最近では養成校で接遇の授業を受けたり、就職してからも接遇の研修を受けたりと、患者様・ご利用者様に対する接遇を身につけましょう、という流れが主流となっています。 なぜ、最近では主流になっているかと言いますと、それ以前が主流でもなんでもなく、ものすごくあいまいでひどかったからです。
具体的に申し上げますと、現時点で20年~30年以上のベテランの従事者さんほど、言葉遣いや接遇ができていない人が多いと思います(誤解があってはいけませんので追記しますと、できている人ももちろんいます)。

私が介護業界に就職したばかりの頃、人生の大先輩でもあるご高齢のご利用者さんに対してタメ口、命令口調で話している若い職員さんが多くいたことに驚きを覚えました。

私は、ご高齢のご利用者さんに対してタメ口で話したり命令口調で話している様子を「異常」であると判断できました。
それは、私が子どもの頃から祖母と暮らしていたことや、一般的な会社で働いていたことから、目上の方への言葉遣いや礼儀、態度について、当たり前の様に見聞きして、時には叱られたりしていたからです。

では、20年以上のベテラン従事者さん達は、いわゆる「最近の若者」でもないのに、なぜ言葉遣いや態度が悪いかと言いますと、おそらく先輩達の態度が良くなかったのだと思います。
私が介護士として新人で働いていた頃、それから理学療法士の学生として実習に参加していた頃、指導役としていろいろな先輩や指導者について教えていただきました。
その多くの先輩達は、ほとんどの人が患者さんやご利用者さんに対してタメ口や命令口調でした。 

A先輩「ちょっと見ててね、こうやって声かけて筋トレやってもらうから…」
   「Bさん、ちょっといい? 今から足に重りをつけて、筋トレしてもらうね。 ちょっと重いけど、がんばってね。 今日は学生さんがついてるから、何かあったら彼に言ってね」
Bさん「…はい、分かりました…。 学生さん、よろしくお願いしますね。」
私  「よろしくお願いいたします。」



ちなみに、このBさんは、もともと社員が100人以上いるような会社を経営なさってた社長さんで、認知症といった会話や判断力の低下などはなく、軽い脳梗塞によって手足に麻痺があり筋トレや歩行練習を必要とされる75歳の患者さんでした。
元社長さんであれば、昭和の厳しい時代に熱心に働いて、多くの社員さんやそのご家族の面倒さえも見ていらしたようなまじめな方でしょうね。

そんな背景は、このA先輩には伝わることもないのでしょうね。 A先輩の目には、ただただ「自分のことができない、助けの必要な弱い立場の患者」としか映らないのでしょうね。

A先輩からの命令的な、自己をまったく尊重されていないようなものの言い方に対しても、Bさんは怒ったりイライラしたりすることもなく、ただまじめに筋トレなどの課題に取り組んでいらっしゃいました。

こんな先輩や指導者の様子を、目の前でしばらくの期間観察していたら、教わる側の人間は、「あぁ、こうやって言えば、患者さんはやってくれるんだ…」、「あぁ、高齢者とは、こうやってコミュニケーションを図ればいいんだ…」と、何の疑いもなく学習していくのでしょうね。

現在の80歳前後の方々は、厳しい時代を耐えて、物のない時代に試行錯誤を繰り返してがんばって生き抜いていらした人が多いですよね。 そんな人たちからすれば、若い人のちょっとした乱暴なものの言い方なんて、生きるか死ぬかの苦労に比べれば全然平気なのかも知れませんね。 「耐える能力」が高いのでしょうね(^-^;

これからの時代は、そんな言葉遣いや態度を受けましたら、ぜひぜひ文句をおっしゃってくださいね。
直接文句が言いにくいようでしたら、ぜひ「ご意見箱」もご利用ください^-^

病院や施設を良くしていくためには、各施設に任せてばかりではうまくいきません。 時には、外部からビシッと言ってあげないといけないこともあります。 ぜひぜひ、お客様である患者さんやご利用者さんの生のお声も、お聞かせください。

紙オムツでなきゃ、ダメ?

2020年03月03日 | 介護とリハビリ
脳梗塞や脳出血などで片側の手足に運動麻痺が起こってしまうと、これまで当たり前にできていた動作ができなくなってしまうことが多いです。
それは、歩くことも難しくなることがありますが、ベッドで寝ている姿勢から起き上がって腰かける、なんて動作でさえ難しくなることがあります。

そんな日常生活の中で介護が必要になる行為の一つに排泄、つまりトイレの介助があります。
トイレの個室内で、ズボンを下げて、下着を下げて、便座に腰かけ、用をたし、陰部をトイレットペーパーでふき、立ち上がり、下着を上げ、ズボンを上げて、トイレの個室から出る、といった一連の動作のどこかに介助が必要になると、「トイレ動作に介助が必要な状態」と判定されます。

脳梗塞などによる片麻痺の方に難しい動作は、「立ち上がり」や「腰かけ」といった姿勢を変える動作と、片手で行う「ズボンや下着の上げ下げ」などです。 これらの動作が、軽い介助があればどうにか行え、ゆくゆく自立に近づけられる人は、リハビリや介護の現場で積極的に練習していきます。

しかし、立位が保てないような状態であったり、そもそも尿意・便意がない、ベッドから起き上がれない、といった状態であったりすると、トイレ動作の練習の優先順位は下がります。 このような状態の時に、紙オムツを使うことが一般的です。

この紙オムツには、赤ちゃんの紙オムツと同じで骨盤をぐるりと包みこむような作りですが、一枚のコストもかかりますので、トイレに行けない患者さんなどで排尿があるたびに交換していると、費用がとてもかかります。
そこで、高齢者や成人の患者さん・ご利用者さんには、併せてパットという女性用のナプキンのような役目の商品を、紙オムツと併せて使用します。

このパットは、一枚ずつの単価が紙オムツよりも安いため、陰部に一枚当てておき、1回の排尿分を1枚で吸収してくれますので、パットのみの交換で済みます。 万が一パットから漏れてしまったり、排便があったりして紙オムツ自体が汚れてしまった場合は、紙オムツもパットも交換する必要がありますが、これらを使用すればパジャマや布団のシーツを汚す心配もありません。 病院や施設では、このトイレの代わりのオムツ交換という介助を、職員が交代制で担当します。

ただ、オムツ交換を行う人数が増えれば増えるほど、オムツ交換の介助にかかる時間が増えていきます。 

そこで、業務を楽にしたい職員さんは「紙オムツ内のパットを何枚も重ねて、2~3回の排尿があっても紙オムツすら汚さずに済む」という発想で、パットを3~4枚少しずつずらして陰部にあてがい、強引に紙オムツを閉じてしまう、横着をする場合があります。 こうすると、オムツ交換という業務の回数が減らせる代わりに、骨盤周りだけがモコモコに盛り上がった奇妙なシルエットが出来上がります。



これは非常に、良くありません。 特にリハビリにお連れする患者さんやご利用者さんの場合、立ち上がり動作練習や歩行練習の際に、モコモコ感がひどすぎて姿勢よりも腰回りに気が向いてしまいます。

この患者さん(もしくはご利用者さん)がリハビリのためにベッドから起きて運動することは介護の職員さんもご存知なのですが、それでもモコモコ状態にしているのはどうかと思います。 介助があれば立ち上がれる、歩行練習すらしている、というのであれば、トイレにご案内して排泄介助をすればいい訳ですから、少なくとも職員の多い昼間の時間帯に紙オムツでなければいけない理由もほとんどありません。

最近の紙オムツやパットは、吸収力がとてもよく、1枚のパットでオシッコ2回分くらいは大丈夫、なんて商品もあります。 このようなパットはたしかに高額ですので、施設の負担、ご家族に負担を強いる、という点で、すぐに購入するのは難しい場合もあります。
しかし、いくら人手不足の介護業界とはいえ、患者さん(ご利用者さん)の排泄介助の場面で働き方を改革しなくてもいいと思います。

現在紙オムツ対応をしている方の中で、本当に紙オムツ対応でなければならない方は、どの程度いらっしゃるのか、一度施設内でじっくりと検討していただくとよいと思います。