ケアトリハ

介護とリハビリの仕事をしている方、目指している方、介護やリハビリってどんな世界なの、という方に読んでいただきたいです。

自律神経のお話「胃腸の場合」

2020年03月14日 | 医療
2020年3月4日のブログ「心臓」に続きまして、自律神経のお話です。 今回は「胃腸」のお話です。

自律神経とは、「交感神経」と「副交感神経」という2つの神経の総称です。 この2つの神経は、主に体内の臓器の活動を活発にしたり(促進)、休ませたり(抑制)する神経です。
この2つの神経は、いずれか一方が働いている時、もう一方は休憩するというように、拮抗した働きを持っています。 自律神経の働きは自分の意思ではコントロールできません。 周囲の環境や、精神的・身体的な変化によって、自動的に働いている神経です。

心臓の場合、「戦う」とか「逃げる」といった「命に関わる状況」におかれると、交感神経が自動的に活性化され、心拍数が増えたり、心臓の拍出量が増えたりして、筋肉をたくさん使って逃げ出せるように、戦えるような状態にしたり、手足の血管を収縮することで末梢にある血液をできるだけ心臓などの中心に集めようとする反応が起きます。

では、「胃腸」はどのような反応を示すのでしょうか?

胃腸の主な働きは、食べたものを消化したり、消化した栄養素を吸収したりといった、栄養摂取に関わることです。 ですから、胃腸などの働きを活発にするために、筋肉でできている胃腸の運動を促進するためたくさんの血液を胃腸に送り届ける必要があります。

ただし、先の「心臓」の場合のように、「生きるか死ぬか」の場面では、戦ったり逃げたりするために手足の筋肉に優先的に血液を送る必要があります。 したがって、生きるか死ぬかの場面に遭遇した場合、「胃腸の消化と吸収」は二の次になります。 

交感神経が活性化している時、「心臓は活動が活発」になりますが、「胃腸は活動が抑制」されます。 この自動的な切り替えは、本当によくできていると思います。

胃腸の働きは、交感神経が活性化されている「生きるか死ぬか」のような場面では抑制されますので、血流はある程度抑えられ、抑えられた分の血液を手足の筋肉に送り、ひとまず生き延びるために酸素をたくさん使えるようにします。

そして、無事に生き延びてほっと一息つけたのち、交感神経から副交感神経にスイッチが切り替わり、心臓は穏やかになりリラックスした状態になります。 その後、胃腸に血液がたくさん送り込まれて、消化と吸収が活発になります。 胃腸の動きは、副交感神経が活性化している時に活発になります。



皆さんも身の覚えがあると思いますが、朝、学校に遅刻しそうなため、朝ご飯を急いで食べ、慌てて走りながら学校に向かうとお腹が痛くなることはありませんでしたか? これは、胃腸に食べ物が流れこんできたため、副交感神経が活性化されて胃腸の動きを促そうとして胃腸に血液を集めていた矢先、体が走り出しましたので、急に交感神経が活性化されることとなり手足の筋に血液が集まり始めます。
こうなると、消化が必要な食べ物が胃腸にあるにも関わらず、消化や吸収、食べ物の移動のための胃腸の動きが減少してしまうため、胃腸に負担がかかって機能低下が起こる→痛みが起こる、ということになります。

自律神経は、周囲の環境や精神的・身体的な変化によって自動的に働いています。 動くときは動き、食べて休む時は食べて休む、といった、ゆったりとした生活リズムが、自律神経の本来の働きにもよいのでしょうね。 食べながらせっせと動くとか、働き過ぎて頭も体も休む暇がない…というのは、やっぱり心身に負担がかかっている、という証拠なのですね。

ゆったりと、生活していきたいものですね^-^

ファミレスのボタンとナースコールの共通点

2020年03月10日 | 医療
■■■ ファミリーレストランにて ■■■
お客さん: (ファミレスの客席にあるボタンを押す) ピンポーン
しばらく、誰も対応しない。
……。

お客さん: (もう一度、客席のボタンを押す) ピンポーン
……。
ウェイトレス: …大変、お待たせいたしました…。 
お客さん: いつまで待たせるの…、もうずっと待ってるんですけど…。
ウェイトレス: 本当に、申し訳ありませんでした…。

→ ファミレスの客席に設置してあるボタンは、注文などの用事があるお客さんが、店員さんを呼ぶためのもの。

■■■ 病室にて ■■■
患者さん: (病室にあるナースコールのボタンを押す) ピンポーン
しばらく、誰も対応しない。
……。

患者さん: (もう一度、ナースコールのボタンを押す) ピンポーン
……。
看護師さん: …何ですか!?
患者さん: あのぅ…ちょっと汗かいて、着替えたいんですけど…。
看護師さん: そんなことで呼んだんですか? 忙しいんで、勝手に着替えててください。

→ 病室に設置してあるナースコールのボタンは、何か困ったことや相談ことがある患者さんが、病院の職員さんを呼ぶためのもの。


寒いとおしっこに行きたくなるのは…

2020年02月22日 | 医療
冬の季節は、布団から出られなかったり、外出を控えてしまったりしちゃいますね。
年度末はあちこちでいろいろな行事がありますが、小さなお子さんがいるご家庭ですと、卒業式など学校の体育館でしばらく過ごしていると、寒くてついついトイレに頻繁に通ってしまいます。



ところでこの、寒いとトイレに行きたくなる、という現象は、血圧と関わっているってご存知でしたでしょうか^-^?

人の体は、常に一定の状態を保とうと自動的に調節されています。 これを「恒常性」といいます。
血圧も脈拍も体温も、多少の個人差はありますが、常に自動的に一定に調節されています。

血圧は、「血液の量」と「末梢(手足など)の血管の硬さ(収縮度合)」で決められています。
血液の量が増えると、血圧は上がります。 逆に血液の量が減ると、血圧は下がります。 血液の量を測るセンサーは体の中心部にあります。
水分をたくさん摂り過ぎるとセンサーが感知して一時的に血圧は上がりますが、上がった血圧をもとに戻そうとして自動調節機能が働き、すぐにおしっこで体から出そうと反応します。
逆に脱水状態などで水分摂取量が減るとセンサーが感知して血液の量も減り血圧は下がりますが、体に水分を摂らせようと「のどが渇いた」という感覚を伝え、水分補給を促します。

一方、「末梢の血管」という手足にたくさん伸びている血管は、外気温の影響で開いたり閉じたりします。 暑い時には体を冷ますために血管を開いて(拡張)、体表から動脈の熱を発散します。 だから体がほてって見えるのですね。
そして寒い時には体から熱を出さないように血管を狭めて(収縮)、体表から熱の発散を防止します。 その時、手足に送られていた血液が減少し、減った分だけ体の中心に血液が集まってきます。 するとセンサーが感知した結果を脳が「あれ? 血液の量が多いのかな?」と感じてしまいます。 その結果、多くなった血液を減らそうとして、おしっこにして体から出そうとします。 これが、寒い時におしっこに行きたくなる、というメカニズムです。

寒い季節は汗をかく頻度も減りますので、余計におしっことして排泄されやすくなります。 そうはいっても、水分を摂らないことでの脱水は、夏だけでなく冬でも要注意です。
こまめな水分補給は、年間通して行ってくださいね^-^

血管を若く保つためには…

2020年02月13日 | 医療
お年とともに血管が硬くなることで、「動脈硬化」が進んでいきます。
血管が硬くなる原因には、さまざまな理由があります。 そんな中で、多くの皆さんが、心がけることでどうにか予防に近づけられることがあります。

それが、「有酸素運動」です。

有酸素運動とは、比較的軽い負荷の運動で、公園やプールでの「ウォーキング」や「自転車エルゴメーター」など、無理のない範囲で長い時間運動をし続けることができるような、そんな運動のことです。
有酸素運動を続けると、じっとしている時よりも血流が増えますよね? この「血流」がとっても大切なのだそうです。

血液の流れが勢いを増すと、血管の内側の壁に血液が「こすれて」あたります。 血管の内側の壁のことを「血管内皮細胞」といいます。
内皮細胞に血液が勢いよく「こすれる」と、内皮細胞は大喜びします^-^
大喜びした内皮細胞は、一酸化窒素(NO)という物質をよりたくさん産生します。
このNOが、とっても大事なのです。

NOは、血管を「ふわっと柔らかくしてくれる作用」を持っています。
ふわっと柔らかくなった血管は、カチカチの状態の時と比べ、心臓から流れてくる血液をふわっと受け止めてくれますから、その分 血圧が少しだけ下がる方向に作用します。

難しいことをお伝えしておりますが、結論から申し上げますと、「有酸素運動で血液の循環をよくすると、そしてそれを継続すると、血管が若返るようになる」ということです^-^

この文章をご自宅で、ソファーに腰かけて、おつまみを召し上がりながらの動脈硬化が気になる皆さんは、どうぞ今度のお休みの日には、ウォーキングを10分程度でも行ってみてください^-^ 血管を若い状態で維持することは、脳梗塞や心筋梗塞などの予防にもなります。

いつまでもお元気な状態で過ごして、ピンピンコロリを目指しましょうね^-^

医療従事者症候群 MSS

2020年02月11日 | 医療

病院や施設で働く職員さんの中には、毎日たくさんの患者さんや利用者さんのお世話をしているうちに、「麻痺」してる人が時々います。

例えば、長い間寝たきり状態となった意思疎通が困難な高齢者さんのお世話をしている間に、その方のことを同じ「人」として見られなくなってしまいます。
だから、つい本音が口からこぼれます。


本来でしたら思っても口にしないでしょうけど、返事ができない人は、もう「人」じゃない、とでも思っているのでしょうね。

このように、長い間かけて病院や施設で勤務して、患者さんを人として見られなくなり、そのうちに平気で暴言を吐いたり失礼な言動をとってしまう、しかもそれに対して悪いことをしているという自覚もなくなっている人のことを、私は「医療従事者症候群 Medeical Staff Syndrome:MSS」と呼んでいます(造語です^-^;)。
MSSに罹患してしまった職員さんは、感情面・感覚面に麻痺をきたします。 そんな職員さんのお話も、今後紹介させていただきます。