ケアトリハ

介護とリハビリの仕事をしている方、目指している方、介護やリハビリってどんな世界なの、という方に読んでいただきたいです。

行列のできる高齢者施設

2020年03月09日 | 高齢者施設
時々、こんな行列が見られる施設があります。

少ない職員さんで、多くの入所者さんを食堂から各フロアの居室へご案内しなくてはいけない時、エレベーター前で1時間以上も前から行列に並ばされていることがあります。
決して、おいしい食事を食べたくて、利用者さんが自ら行列を作っているわけではありません…。

例えば100人の入所者さんのうち、50人が車椅子をご利用なさっているとすると、そのうち数名はご自分でエレベーターの利用も可能な方がいたりします。 そういった方は、食事の時間になればご自分でエレベーターを使って食堂のあるフロアへ移動できます。
しかし、車椅子の移動に介助が必要な、例えば50人のうちご自分で移動できるのが5人だとすると、残りの45人の方は職員さんの誘導介助が必要です。

そんなに前もってエレベーター前に並ぶ必要もありませんが、職員さんの心の余裕の無さと、部屋まで呼びに行くのが面倒くさいという思いも手伝って、1時間以上も前からエレベーター前に並ばされてしまう…ということが、たびたび見かけられます。
並ばされている利用者さんは…正直辛いです。



その場にテレビがあるわけでもなく、並ばされている間、職員さんが時間つぶしに声をかけてくれるわけでもなく…、ただただ、静かにその時を待たなければいけません。 むしろ、「まだ食堂に行けないの?」なんて文句を言おうものなら、「見りゃ、分かるでしょ! 忙しいのよ!!」なんて声が職員さんから返ってくることも…!?


100歩譲って、どうしても前もって並んでいただかなければならない状況なのであれば、職員さんはその列のそばを通るたびに、「お待たせして申し訳ありません」、「あと○分ほどでご案内できますので、もう少々お待ちください」など、お声をかけて差し上げる必要があるでしょうね。

職員さん達は「人がいないから仕方ないでしょ!!」と、人手不足を理由にサービス業であること、それから利用者さんは「お客様」であるということを忘れてはいけません。 どんなに混んでいる飲食店の定員であっても、待たされている文句を従業員に言った際に、「うるさい、仕方ないだろ、おとなしく待ってろよ」なんて言われたことありませんよね? そんなこと言う従業員のいる飲食店(高齢者施設)、どう思いますか?

病院を良くするためのご意見箱

2020年03月01日 | 高齢者施設
病院や施設をいくつか回ってきていて思うことがあるのですが、ひと昔前は本当に不親切な病院や施設が多かったです。 最近でこそ、ようやく「患者様第一主義」とか「ご利用者様第一主義」などとホームページの最初の画面に大きく載せているところが増えました。 けれど以前は、「病院は医者を始めとして医療者が治してあげるもの、患者は医療者の言う通りに薬を飲んで生活をするもの」という暗黙の了解のような雰囲気がありました…よね^-^?

そういった雰囲気はようやく薄れてきていますが、それでもまだ、古い体質でずいぶんと上からの目線で患者さんやご利用者さんに命令みたいな説明をしているところもあります。

そんな時、これからはもう我慢はなさらなくていいと思います^-^ 
ただし、直接その場で文句を言っても、逆に「うわ、モンスター・ペイシェント(患者)だ…、面倒くさっ!」と、適当にあしらわれてしまうかも知れません。 そこで私からの提案です^-^

「病院・施設に設置されている『ご意見箱』に意見を書いて入れる」です。
ただし、文句を書いて入れても、あまり効果がないと思います。

ポイントは次の通りです。
1.まずは「ご意見箱」がどこに設置されているか?
2.書く内容は「文句」ではなく、「嬉しかったこと・感謝の気持ち」である
3.嬉しかったことや感謝の気持ちをくださった職員さんを、名指しで褒める
4.感謝の気持ちを書いた後で、ほんの一言、今回の困ったことを記す

そもそもですが、感謝を伝えたいような職員さんが一人もいなければ、これは少々難しいのですが…(^-^; お一人くらいはいらっしゃいませんですかね?

「1」のご意見箱が、そもそもですが職員の詰め所(ナースステーションなど)の目の前にある場合、これは心理的に意見を入れづらいですよね。 これは施設側の作戦です。 わざわざ入れづらいところに設置しておく、ただし施設側の基準として「当然、意見箱は置いてますよ」がクリアできる、という職員さん側のお考えが見えてくるようですね^-^;



ですが、「2」にもありますように、書く内容は感謝の気持ちですから、どうぞ堂々と投函なさってください。
そして、その用紙を回収した(おそらく)病院や施設の職員で構成される「接遇委員会」などの職員さんが委員会の場で取り上げます。 ここで、書かれている内容が特定の職員さんの文句であると、それを理由に直接的にその職員さんを叱る、ということができない・やりづらいの風潮ですので、「まぁ、一応注意だけにしておきましょうか…」程度の指導が入るくらいです。 

けれど書かれている内容が名指しの感謝の気持ち(「3」)ですので、委員会のメンバーも、その褒められた職員さんのことを認識します。

私は、ここが大事だと思っています。 以前のブログでも、素敵な職員さんを守りましょうとお伝えしましたが、そういった職員さんを「この病院(施設)に必要な人だ」と職員間で認めさせることにつながります。 周りに嫌な空気を発する職員さん(本人は未自覚です)は、こういった素敵な職員さんのことを毛嫌いして、いじめ、退職に導くことが多々あると思いますが、職員間が素敵な職員さんの必要性を認めていれば、誰が良くて誰が良くないのか、ということが明確になってきます。

こうやって素敵な職員さんを一人でも多く在籍していただき、嫌な空気を発している職員さんの居づらい職場にしてしまえば、徐々に嫌な空気を発する職員さんの方から退職していくと思います。 それを後押しできるのが、おそらくご意見箱のポイント「4」になると思います。
皆さんが普段ご利用なさっている病院や施設が、今後も利用しなければならないのでしたら、どうぞその病院・施設を、自らの手で素敵な環境にしていってください。

本来の介護老人保健施設の役割

2020年02月18日 | 高齢者施設
病院は退院できるのですが、引き続き介護が必要な状態になりますと、介護老人保健施設という、病院と自宅の中間にあたる施設で、もうしばらくの間、リハビリを受けて生活動作のさらなる回復を目指して入所することがあります。

自宅に帰って、身の回りの動作を安全に行うためには、ベッドからの起き上がりや立ち上がり、時には車椅子などへの乗り移り動作(これを「移乗動作」といいます)を自立して行えるようになる必要があります。

そのため、介護老人保健施設ではリハビリも行いますが、生活の中にも運動の機会を組み込むために、介護士さん達とも協力して、積極的に利用者さんの動作の自立を目指します。

と、これが本来の介護老人保健施設の役割なのですが、実際にはそんな対応をしていない施設もあります。
利用者さんの動作能力のうち、どうしても足りない部分(例えば筋力など)を介助することで自立に近づけるのが本来のところ、「動作を待っていたら間に合わないから」という理由で介護士さんが全部手伝ってしまう、いわゆる「全介助」をしてしまう職員さんもいます。
その職員さんの気持ちも分かります。 「18:00の夕食の時間までに全員食堂にお連れしないと、食事介助が間に合わないし…、休憩に入る職員さんが入れないと俺が怒られるし…、俺だって休憩に入りたいし…」なんて気持ちで、全介助で進めた方があれこれと早く済みますからね。



でもそうすると、本来の介護老人保健施設の役割とは程遠くなってしまいます。


正直、私も20年くらい前、介護士として働いていた時は、こんな風に弱音を吐いていました。
でも、理学療法士になって、やっぱり介護老人保健施設で働く以上、その役割を果たさなくちゃいけないと思うようになりました。

そこで介護老人保健施設で勤務する介護士さん達に提案です。
どうしてもマンパワーの足りないことが、ついつい過介助になってしまいます。 そこで、早番や遅番、夜勤と入れ替わるような「デイタイム(10:00~16:00頃)」以外の時間は職員が少ないため、多少なりとも介助が多くなってしまっても目をつぶり、職員が多くいるデイタイムは、利用者さんの個々に合わせた、適切な介助量で対応する、というのはいかがでしょうか? もちろん、この動きを取るためには、全職員の理解と協力がないとできませんですが、これならばご利用者さんの身体活動の機会を、今まで以上に作ることができますよね。

少しでも入所されているご利用者さんの運動の機会を、過介助によって妨げないよう、できることから始めていくと、本来の施設の役割が担えるようになると思います。