1年ぶりにお会いした師匠は、だいぶ年を召されたなという印象だった。
コロナ禍以降、チェロのレッスンには定期的に通わなくなってしまった。
それでも、春の発表会の時期になると先生のほうからお誘いいただき、何度かレッスンをしていただく。
今年もぜひ参加してくださいとご連絡をいただいた。
幸い、手術も、術後抗がん剤も、チェロを弾くのには支障がない。
ベートーヴェンのソナタを弾くお許しをいただけたので、今年も参加することにした。
「この曲を選ぶとは、正直、ビックリしましたよ。これまでの路線と全然違う選曲をしたね」
先生にはそう言われると思っていた。
確かに、初めて自分で弾きたいと思って挑戦したチェロソナタはラフマニノフだったし、これまでベートーヴェンのソナタはまったく興味がわかず、弾くどころか聴きもしなかった。
ところが去年、大学のOBオケでベートーヴェンの1番を弾いたらすごく楽しかったので、チェロソナタも楽しいかもしれないと思ったのだ。
ベートーヴェンはチェロとピアノのためのソナタを5曲作曲している。
1番と2番は立て続けに作曲しており、ベートーヴェン自身のピアノと、ジャン·ルイ·デュポールというチェリストとでプロイセン国王の前で演奏している。
1796年、ベートーヴェン26歳の頃。
ピアノはチェロための伴奏というよりも、ピアニストであるベートーヴェンの技量をアピールしているかのようで、まさしく、チェロとピアノの為に書かれているので、聞き応えがある。
ロストロポーヴィッチが使用していたチェロは、なんとデュポールが使っていた楽器であることをEが教えてくれた。

なんて素晴らしい。
ベートーヴェン自身による初演の時と同じチェロの音色が、今聴けるのでR。