地理人レポート

展示や新グッズ作りに向けたコラボレポートと、空想地図&地図グッズ紹介をお届けします。

2023年 簡易的振り返り

2023年12月31日 | 振り返りと展望
今年は初めて一人年越しかも?コロナ時代入って以降、本郷自宅での年越しも増えてきましたが、昨年末は住人以外の人とほとんど会わずだったのに比べ、今年は日々色々な人と会う年末で、楽しく過ごしております。年越しは駆け込みゲストハウス予約でどこか行くか、とも思いましたが、(後述しますが)自室が少々快適になりつつあるので、年越しは静かに自室でも良いぞ、という具合です。自室大改造は12月29日に始めたので、直前ながらどうなるか分からぬものです。(BEFOREがひどすぎるので写真は載せません;汗)

それでは年末なので振り返りをば…!


◉ 空想地図(界隈)の広がり

今年6月に5冊目の本、「空想地図帳」(学芸出版社)を出しました。私自身、空想地図作者として取り上げられることが多いものの、若手で優れた作者が出てきて、質も勢いも負けてまう…アウ〜〜となりつつあったので、それなら彼らの地図をいっそ紹介しよう…と、「空想地図キュレーター」を始めてみました。

実はそれだけではなく、昨年の地理系ブックカフェ空想地図開店に始まり、コロナ禍明けの波も重なり、空想地図作者が集まる機会が増えます。大阪の「架空言語・架空地図学会」は開催回数が増え、東京の「空想地図学会」の参加人数も増えています。らの(加藤太一)さんがこの空想地図学会の主催と、ZINE「空想と地図」の編集を始め、キュレーターの動きが私以外から出てきていることは心強いのですが、これ一人でやるの大変じゃない?ということで、私含めて4人の体制(空想と地図の企画室)になりました。その他、国際地図学会で吉田桃子さんが空想地図についての研究(いずれ博士論文に)を発表したりと、空想地図が密室趣味を脱した象徴的な年だったのではないかと思います。

個人的には今年は2件の空想地図制作を手掛けており、1つは来年リリースされるゲーム(ストリームヒーロー)の舞台で、6人の共同制作の巨大地図です。空想地図制作が共同作業になるなんてね〜。中村市より楽しかったですわ。もう1つは(地図制作としてはそう大きくない割には爆発的視聴率で話題になった)VIVANTでした。


◉ ここに来て、海外で滞在&制作&展示の機会を得る

7月末から8月末まで、1ヶ月少々台湾に行っておりました。三文字昌也さんと2021年に渋谷・目黒で開催した「アジア都市透視展」の台湾バージョンアップ版、「亞洲都市透視展」です。台・基隆の港町の芸術祭の1枠で、港の盛り上がりの渦の中におりました。絵になる風景の中で日々を送る、というところだけはドラマっぽいのですが、日々淡々と(日本の)仕事をしつつ、プラスして展示関連の作業を進める…という、少し作業が増えた感じの日々だったので、ワーケーションで言うとケーション要素はそんなになかったのですが、「海外1ヶ月滞在とか、この歳でできるんだ」という発見でした。またどこか行きたいと思いつつ…このテーマで行くなら次は韓国かしら〜(あては全くありません)


◉ 著述作家感が醸し出される

今年「空想地図帳」(学芸出版社)が出た話はさきほどしましたが、昨年は「考えると楽しい地図」(くもん出版)、来年…といってももう1ヶ月半後くらいに、子供の科学サイエンスブックス「世界が広がる!地図を読もう」(誠文堂新光社)が出ます。さらに2冊抱えており、すぐそれに取り掛かるので、そこから発刊は続くはずです。1冊目(2013年)から2冊目(2019年)まで空きましたが、近年著書のペースが上がっており、なんだこれは著述の人になってきてるのか…?という感じです。

それはいいんです。最近道路交通関連の業界誌、専門誌から記事を頼まれることがあり、(そういう話は好きだけど専門的なことは書けないヨ…)と思っていたら、「随想」みたいなコーナーで、コラムやエッセイを(空想地図)作家として自由に…というものです。確たる価値を持つ専門性が身につかぬまま、怪しい文化人風味が醸されているようで…いや、もうそうなったらその傾向が進む前提で、ゆるふわ人生設計していかねばなのだよな、と思う等しています。


◉ 住んで12年、もう少しで40歳だぞ気づいてんのか…?

…気づいてますとも。気づいてはいるんですが、だから何…?という感じだったんですが、最近体のコリというか衰えというか、ようやくここ1、2年で感じ始めました。(ダッシュするとめっちゃ息切れする、とかね)自宅(本郷はなれ、というシェアハウス)に住み始めてはや12年、住み始めは26歳だった人間は38歳になっていました。既に過去最長期間住んでいる家になってるんですよね…マジスカ〜!


◉ 年末にいきなり始めた、自室の大改造

2011年(26歳)から2015年(30歳)頃まではこの部屋もまだ余裕があったんですが、2017年に美術館での展示が始まり(制作品増える)、2018〜2019年に制作グッズ爆増、先述の著述ラッシュも関連して本も紙も増えるわで、自室はスラムになってました。一部電子化したり事務所移したりしましたが改善されず、スラムになってから6、7年は経ってたと思います。

26歳のノリで4畳半生活を続けていたんですが、そういえば同年代や上の年代の人で、一人暮らししてる人は数部屋ある家に住んでたりすることに気づきました。じゃ広い家に引っ越すかー!ってなるかって? いや…現在なかなかの激安家賃で、固定費を上げることに抵抗があるため、どうにかこの部屋に居るままで環境を改善できないか…と、11月に思い始めました。

「面積がないなら高さを上げれば良いじゃない!」香港の都市計画を見習い、(パイン材の安直な)家具や整理用品を爆買いて棚を増やします。端に高層の棚を集中させ、中央に低層の棚を置いて最低限の開放感を保ち、空いた空間にプロジェクター(買いました)を置いて風景の映像でも流せたら遠くに行く気分を安直に味わえるのではないか、といった具合です。4つの棚を12/29に組み立て、床に積み上げられた紙達をとりあえず棚には入れた…という感じなので、整理はこれからです。


◉ 「歳とったんだぞ」の買い替え

そういえば、台湾にいたときに洗濯&乾燥機がなかなか強力で、夏服(の繊維)が壊れたりしましたが、そもそもこれは15年以上前に買ったものでした。そりゃそうやな…と思いつつ、服や持ち物は気づけば5〜10年使ってボロボロになってるものもありました。そう、2年くらいしか経ってない感覚のまま5年くらい経ってるし、5年しか経ってない感覚のまま12年経っているのです。

そこで、リュックやら服やらを買い替えまして、最近身につけているものはほとんどが今年の調達品です。雰囲気は変わってないのでイメチェン感はありませんが、あらゆる紙やコード類をそのままリュックに投入していたのを、ファイルバインダーやスマートな小袋に入れる等、大人としての嗜みを導入してみました。これで荷物内の劣化や、チラ見えする際の雑さが解消されるはずです。そう、「お前もう歳とってんだぞ」を言い聞かせた結果のソレです。


◉ どうなる2024年?

2022年から高校の探究学習の授業を持ち始め(半期)、今年からは通期になり、毎月どんな仕事が来るか分からない不安定の極み、連続単発仕事野郎からは脱しました。いきなり終わる可能性はあるんですが、去年も今年も受講人数最大で、希望者も多いようなので、続きそうではあります。何より私にとってはこの学校はかなり合っているな…と思っており、昨年は「久々にやる気が出た」という、驚きの波でもありました。中学校時代「一番なりたくないのは学校の先生」と言ってた人間がこうなるとは、驚きの始末です。

去年の今頃は、先述の空想地図制作のお仕事2件のメールが来て打ち合わせを始めた頃でした。今もまた、空想地図+αになりそうなお仕事のキックオフ的な打ち合わせを始めたばかり。そして本2冊を進めないといけないんですが、それ以外は全く決まっておらず、どうなるかは分かりません。年単位の非常勤とはいえ年間のお仕事が1つあることや、商業出版の冊数が6(〜8)冊出るということを土台にして、(どうやら専門家ではなく謎作家枠としての需要が大きいようなので)なるべく訳の分からない仕事を受けていくべく、妙な形のアンテナを磨いて2024年を迎えようと思います。



あと、今年の海外渡航は韓国&台湾のみだったので、もう少し遠くに行こうと思います。(そろそろ…ヨーロッパ…とか…行っても良い…ような気がするんですけどネ゙〜)

それでは皆様良いお年を…そして良き2024年を迎えられますよう…!

2022地理人の振り返り (4) 能動性を起こす新たなアクション

2022年12月31日 | 振り返りと展望

受動的に似たような依頼が来続けても、アウトプットの新たな展開を生む小技を前投稿で紹介しましたが、ここから先は能動性の開拓です。

能動的な面がある方なら何の問題もなく、ただ動くのみです。
いや、むしろそんな方はすぐ動いているでしょう。

しかし、そうはいかない人間は、能動性が起きない原因をあぶり出しつつ、自分内の能動性の動力になりそうな要素を抽出し、能動的に動く仕組みを作るしか道がなさそうです。

●空想地図が進む熱とブレーキ

いやいや、空想地図って能動性の産物やん…というツッコミも来そうです。ええ、あれは確かに自発的に作りましたけども、空想地図作りが進んだのは中学時代と会社員2年目、所属組織(学校・会社)が最も嫌だった頃、人生の底みたいな時期でした。他にやることがない状況に、現実逃避熱が加わり、一気に進みました…が、ちょっとこれ、今後再現するのは難しいのです。良好な人間関係を切って嫌な仕事をする、なーんてそんな自己犠牲的な展開は求めちゃおりません。

…てなわけで、今はなかなか進みません。もう一つ、遅々として進まない傾向があるものがあります。それは、著書です。空想地図とは違って、依頼が来てから始まる仕事なので、普通の仕事のようですが…どちらも地理人(今和泉)作になり、相手の求めるニーズや結果…から逆算して必要なものをアウトプットする、というわけにもいかず、求められているか、価値があるかは置いといて、自分の中からネタを絞って出し切る…という、わりと地獄のような作業です。



自作事案と、依頼事案に分けてみると、それぞれの作業の進み方は全然違います。依頼事案は、他の仕事、他の作業を並行して進められますし、期限内に終えられます。しかし、自作事案はそうもいきません。

作るものの規模が大きい場合、作業を細かく割って工数・期限を設定し、途中に関係者への会議や期限を設定して進めれば、依頼事案は進みます。…が、自作事案はなかなか進みませんでした。

・全然工数も作業日数も読めない
・関係者がいない
・期限をオーバーしてもさほど問題が起きない

…という事情です。いやいや、それでも(著書の場合)関係者はいるし、問題が全くない訳ではないのですよ。進まない中、どうにか進んだときのことを思い出すと…というか、それは今なのですが…

●自作事案が(珍しく)進む年末年始

何かがひらめいて進められるときで、他に並行する仕事がないとき…でした。しかも、上の表に書いたように、1日目は稼働しない、2日目に稼働し始める(けど遅い)、3日目くらいからようやくエンジンがかかるのです。エンジンがかかってしまえばあとはグイグイ進みますが、問題はその他の作業(やメール・メッセージの返信等)に疎くなります。いやぁ社会不適合感が…ありますよね…(だから自作事案は好きではない…でも作らないと…自分の看板たるものが生めない…)

ちなみに、空想地図帳の原稿の期限を年末に設定し(先延ばししての年末なんですけどね…汗)、ほぼ、終わりました。ほぼ…すんませんまだ残ってます。ただ、12/25昼までは他の作業が並行する期間で着手できず、ここで他の年末タスクを終えます。12/25夜から着手しますが…本格的に進むのは26夜から。そこからノロノロと準備と確認が始まり、27夜からグイッと進みます。28日からは早いんですが、ちょうど年末年始、他の作業を並行しなくて良い期間です。しかも第8波の勢いがあるので両親宅には行かないと決めたため、年越しは自宅。予定ががら空きなのです(12/26から住人以外誰も会ってない)。そんなわけで、集中モードです。

(そして、その集中モードから寄り道して、怒涛の図解振り返りアワーですが、これも文章と作図アウトプットの勢いの流用です…終わってまた年越し前後で、空想地図帳の最後の詰めに戻ります…)

なるべくこの状況を作り出すため、
今後は「1週間以上(理想は10日間)空けるタイミングを作る」ことに努めたいと思います。1〜3月も1、2回は作りたいと思います。

長々と書きましたが、これは空想地図と著書をどう切り抜けるか、という話で、決して新しいアウトプットや展開を考える能動性のお話ではありませんでした。その話はこれから。

●「何かに応募する」という未踏の境地

本も展示も、その他もろもろ、自分から動いたことがない他力本願みがありますが、それ以上に、タイミングも内容もあまりコントロールできず、先述の投稿のように似たものになりやすい、という傾向があります。

そうか、自分で応募する、という手があったのか…と、誰もが気づいてそうなことに気づきました。いや、気づくも何もその枠組みがあることは知っていたんですが、自分にできることではない…と、具体的なアクションを検討したことがありませんでした。

例えば助成金とか…何かのプログラムに応募したり乗ったりするとか…
そういう枠組みを活用しても良さそうです。

なにしろ、作家シフトになってしまった結果、自力で利益を担保できる事業を立てられる方向に行かないので、「事業を起こす」でない限り、このような流れになるかと思います。


前投稿の図と比べると、線が描かれる場所が随分違います。
これについてはどんなものがあるのか、機会も方法も全く疎いので、周囲の皆さんに少しずつ力を借りながら、その可能性を探っていきたいと思います。

助成金のポイントは、その資金力ではなく…
それより、プロジェクトが仕事化することで、期限までにミッションを果たし、報告しなければならないというケツができることで、進まない自作事案を「(進む)依頼事案」化して進められるであろう、ということです。

「依頼事案のほうが進む」のは、共感する人もいるかもしれませんが、そうでない人も多いのかもしれません。なにしろこれまでの著書では、なるべく書いている途中で、内容に関する方向性や形、仕様等をバチバチに決めて縛って進めていきたいのですが、完成形を縛らず、途中介入せず、まず自身の中にあるものを吐き出した方が出るのではないか…と思っているようで、編集者はむしろそれを遠ざけることが多かったのです。

展示は期限がバッチリ決まっていて、最近の展示は関係者を巻き込めているので進むようになりました。共著だとたぶん早く良いものを書き上げますので、次にお声掛けいただく編集者さん、ぜひ共著をご提案下さい…(と思ったんですが、向こう2、3年詰まっているので少々お待ち下さい…)

●過度にやることを絞ってきた代償

10月にやりたいことを100個出してみたんですが、これは短期的、長期的な方向性を見出す材料になりそうです。それぞれ具体的に落とし込もう…と思って、年末に間に合わせようとしてたんですが、間に合いませんでした。これは年度末か、また歳を取るあたりでやりたいと思います。

最後に、今年の気付きです。

とある方が「地理学科卒で、地図会社2社しか受けなかった…1社受かったので今に至るが、どちらも受かってなかったらどうなっていただろう…」と話していたのを聞いて、あれ?と思うことがありました。

地理学科から地理を活かした就職は、研究者や中高教員になることが多く、地図会社は募集人数が少ない・・・という話から、地理系就職を断って、大学3年からそもそも地理学科を抜け出して別大学・別学部に編入しています。
(大学や高校に赴いている今からは想像がつかないんですが、学校に居たくなかったので先生の選択肢はまっさきに削ったら、残りが地図会社…)

さらに、次の大学で、まちづくりのゼミに入り、都市設計コンサルタントでアルバイトをしますが、平成の大合併で自治体の数が減り、仕事がたくさんあるのは数少ない大手くらいで、中小は厳しい…なら、この業界の就職はやめよう…

私の中では当然の選択だったんですが、受かる可能性もわずかながらあったのかも知れないんですよね。ちなみに地図会社もまちづくり関係の会社も、就職活動時、1社も受けてません。1社くらい受けても良かったのかも知れない、と今更思いました。

(しかし変な話で、受けてもいないのに、高校・大学の授業、地図会社、まちづくり系プロジェクトとの関わりが妙にできてしまったので、結果的に就職しなくても良かったんですが)

そう、ここで、可能性が薄いとバッサリと最初から切る、という癖に気づきます。大学1年のときの懸賞的奨学金に応募したのは…他に誰も応募してなかったからだし、競争率の高い門…というか競争がある入口は最初から行かず、競争がほとんどない門にしか行かない傾向があります。

そして…
やることを、他者よりもできそうなことに絞るのも過度な癖だと自覚しました。例えば、地図・地理・デザイン関係、作図等視覚的な整理、公共交通移動、領域を跨いだ人とのコミュニケーション、初対面の交流…等、割とできることに関してはやりますが、それ以外、やっても並かな…くらいのことは、過度にやらないフシがあります。

時間は有限で、つまり私が使える工数も有限。他者よりも要領は悪いので、人並みに人と同じことをやっていたら劣勢になる…優勢に動けることだけを選択してそれに集中すべし、という基本思想が、いつしかできていたようです。

普通運転免許を持っていない(その他資格という資格を持っていない)、ほとんど料理をしない、英語力もほとんどない、その他色々…できたほうが良かったよな…そして苦手でも試みる姿勢は大事だよな…と思う瞬間が多少あった一年でした。まぁ強み集中戦略を取ってきたゆえどうにか生き残ってるのでこれも後悔ではないんですが、この戦略が今後新しく始めることの可能性を狭める気もするので、苦手でも試みる扉を、ひとつくらいは開けようと思いました。

というわけで長々と振り返りましたが、実りある2023年を迎えたい所存です。皆様もよき2023年になりますよう…!

2022地理人の振り返り (3) 受動からのアレンジで新展開を作る

2022年12月31日 | 振り返りと展望

停滞感〜と言い続けても停滞感は停滞感なだけだし、
持ち場いいな〜と思っても、場所があっても動かねばどうにもなりません。

じゃどう動くかやんけ…
しかし…

地理人、とても受動的。これは私が自覚し続けていることです。ただ、私が言いまくっているだけでそうは見えない人もいるようなので、受動的な割にはうまく(この回路を)こねくり回して生きているのかもしれぬな…とは思いました。

●能動/受動、インプット/アウトプットの図で整理しよう

さて、原始的には能動も受動もなく、ただ、さまざまな地図を見ていた末に空想地図を描き始め、各地の都市探訪した結果で空想地図をブラッシュアップしていった…これはシンプルなインプット→アウトプットの構図です。一人で完結しており、この段階では仕事にもならないし、広がりもしません。



会社を辞め(多くの人が知らなかったり忘れてたりするんですが、2009年から2年間会社員をやってるんですよ!)た2011年から4〜5年間ほど定番となっていく流れがこちら。
依頼が来て、準備・作業して、アウトプットする、という流れです。
これは、著書や記事、展示が主ですが、その他も基本的にはこの流れでした。

しかしこの問題は、アウトプットがワンパターンになる、ということです。
当初は新しいアウトプット先が増えていくばかりだったので良かったのですが、2016年以降、同じことを続けてて良いのか…?ということに限界を感じ、流れを変えることを試みます。といっても、受動的なままで。

●来た提案を少しアレンジして返すひとひねり



(はい、だんだんよくわからない道路標識みたいになってきましたね…)

2015年頃までは、アウトプット先やアウトプット方法が増えていたで良かったのですが、似たようなアウトプット先や方法で同じことをすると、ほぼ同じことの再生産になってしまいます。しかしありがたいことに①仕事の依頼が来ると、ここでひとひねり、②「こういうのでも良いですか?」と別の提案をして、受け入れられたら③新しい試行錯誤をして、④新形態をアウトプットします。

一番大きな実例はこちらです。

2016年、「空想地図の描き方」の内容で提案いただきつつも、空想地図以外のアウトプットを試もうと「新たな現代都市地図の読み方」を逆提案し、企画が通過、2019年に刊行。

続いて、この回路がもうひとひねりします。

●来た提案をアレンジしてから他者を巻き込むふたひねり



早い話、小者の自分にできることは限られている訳です。
もうひとひねり加えた新パターンは、依頼が来てから、他者を巻き込む提案をして、他者を巻き込むという流れでした。

具体的にはこちらです。
(しまった、自サイトで紹介記事残さなきゃ…)
2020年に「空想地図の展示」という依頼で来たのですが、地図のみならず、地図を目次として空想都市のあらゆる日常の断片を再現し、視聴覚で感じられる都市を味わっていただく…という内容でした。音楽から音、デザイン、文章、映像とさまざまなプロに参画いただきました。時間的には突貫でした。
(巻き込まれた人:キシリ徹、佐藤香織、タナゴ、寺井暁子、TOK.S、ばつまる、ホンダノホンダナ、Mr. Densha、渡邉絵理、綿谷エリナ)

(しまった、自サイトで紹介記事残さなきゃ…)
こちらも2020年に来たお話ですが、展示の内容は特に指定がなく、自由度が高いものでした。空想地図…と全く関係なくて良いのです。そこで、全くこれまでと異なる、アジア各国、各地域の街の、誰も注目もしない何気ない一面を捉え、架空でその国(地域)らしい街のイラストを描き、その街を形作る傾向や重力をつかむ、という展示でした。これは引き続きやっていきたいと思います。
(巻き込まれた人:三文字昌也)

引き続き、このスタイルは取っていきたいと思います。

ちなみに先日、新しい本の企画提案が来まして、共著に持っていこう…としたのですが失敗しました。しばらく単著沼が続きます。いつか共著を書きたい……

ただ、受動スタートだと、来ないと始まらないし、さすがにアウトプットの異なる提案も、予算が変わるような提案もできません

残るは、能動アクションですが…
能動性が…ない…

さぁどうする?
続いては、能動性を引き出す仕組みを考えます。


2022地理人の振り返り (2) 持場型と浮遊型

2022年12月31日 | 振り返りと展望

さて、前投稿ではあったことのダイジェストを書き連ねましたが、
大事なのはここから。図解です。

●持場型と浮遊型

あなたは持場型?浮遊型?
…という性格診断でもないんですが、場所を持っている人…場所に限らずイベントやプログラム、何かしら発信できるメディアをもっている人や集団を持場型と、何もなく、むしろその他人の持場を行き来する人を浮遊型とします。

持ち場なんて大きな会社が持ってるものでしょ〜個人は浮遊するものよね、と思って生きてきた節もあるのですが、最近、身の回りの身近な人が持ち場を持ち始めており、持ち場って持てるのか…という所感を持っております。所属している会社や学校を自分の持ち場だと思う人もいると思います(いいな〜そう思える学校や会社がある人生←一度もない)。



ワタクシ、浮遊型の極みのですが、空想地図のかほりを周囲の広範囲に飛ばし、さまざまな場にお邪魔し、場の力を借りる等して楽しんでおりました。

自分から誘わない割に、人見知りがないのが地理人。ひょこひょことさまざまな界隈に出て話したり…時に聞き役になったり(意外と多いんですよ)…という具合ですが、この人間関係の築き方を「たんぽぽの綿毛」と形容していました。自力で動力は持たないが、さまざまな方向に浮遊して生き延びる…と。しかし友人に言ったところ「んーー、地理さんは地下茎かな。ふわふわしてない。」とのことでした。



仕事面でもこのように…自分では明確な事業や場所を持たず、明確な事業や場所を持っている方々から呼んでいただいて生きておりました。こうしてよき持ち場を多数見ることになります。

●持ち場を広げる人々具体例

最近だと別視点は、2011年に「東京別視点ガイド」(ブログプラットフォーム)、2018年に「マニアフェスタ」(プログラムやイベントの主催)…と来て、
来年には都内のどこかで新しい拠点を運営するのだとか。持場を一つ一つかためている感があります。木賃文化ネットワークは場所そのものが複数の人や活動が生まれるプラットフォームになっています。2018年創業の流動商店は2019年に持ち場を始め、小さなイベントを主催したり大きなイベントの裏方をしたりしています。先日忘年会に伺ったfor citiesは、コロナ禍頃の始まりだったと思いますが、Podcastで視聴者を増やし、世界各国でプログラムを実施し、レジデンスも始めるようです。うぉー、三拍子揃っとるやないかい…。

特に後者2団体はこの3年で活動を広げており、まっ、眩しい…と思いながら見ておりました。(コロナ禍なんぞ私からしたら「冬眠」だったのですが、と言い訳しようと思ったんですが、コロナ前はバリバリ動いていた訳でもないのよな…)

●浮遊型にとっては不利だったコロナ禍



さて、持ち場を持たずに浮遊していたコロナ前ですが、私はどこの所属でもないので、イベントや何か入れる余地があるときに、するっとあらゆるコミュニティにお邪魔していた、水色の❸の層でした。こうして越境できていた部分はあったのですが、このスタイルはコロナ禍で最も影響を受けます。❶❷が集まるか、❶❷がオンラインでMTGするか、という時代の始まりでした。コロナ禍になって久しくお邪魔できてない浮遊先はたくさんあります。明けて、これからまた余地が戻ると良いですが。

浮遊型でいることのポテンシャルが下がった代わりに、持ち場を持つ人が増えたコロナ禍。持ち場があることは、浮遊しにくくなる足かせになるのでは…と思っていたのですが、持ち場があることで、別の持ち場で覚えてもらい、行き来を増進しやすくなる側面があるな…と感じました。

長らく、持ち場…と並ぶキラーコンテンツ「空想地図」を携えて浮遊していましたが、空想地図は少しずつ広げたり直したりしても、見た目はあまり変わらないまま10年以上経っています。では空想地図以上の強いキラーコンテンツを携えられるかというと怪しい…これが私が長らく自分に対して感じている停滞感です。

コロナ禍明けても、コロナ前と同じ持ちネタで歳取って同じ浮遊は…難しいでしょう。色あせてくってもんです。

●新しいものを作ったほうが良い

2019年に東京都現代美術館で展示してから、ありがたいことに都現美の招待券が届きます。そして毎回行くのです。これが良いチャージになってまして。多数のおもしろいアートに触れる、のもあるんですが、展示はその作家の一生涯を見ているようで、「この人、大学で先生して家族も持ってて忙しいのに作品こんな作って旅してんの…?」と驚きもします。

私、大学で先生してないし、家族も持ってないのに、新作そんなに作ってもいないやん何してんねん…と、いいピリピリ刺激をもらいます。

展示の機会をいただいたときに新作を作ったりはしましたが、そうでないときにも作った方が良いよね…と。それを試行錯誤できる場所(工房的実験空間)があっても良いのではないか、と思う等しています。




…って、アンタ今年オフィスを改装したじゃん、その場所は持ち場では?何かしたら?…というツッコミが来てもおかしくありません。いまのところ空想都市展のプチ展示空間、かつ地理人収集古地図書庫にはなっています。持ち場を活かすには、何か主催したり誘ったり、場所を使う能動的なアクションをせねばなのだが、浮遊しかしてなかったので、(そういう能動的アクションを起こす)持ち場慣れしていない…。

というわけで、2023年はもっと広く「持ち場」について考える一年にしようと思います。


2022地理人の振り返り (1) 今年のダイジェストは高校・本・そして…?

2022年12月30日 | 振り返りと展望
2022年が終わるー!
歳を取るにつれてあっという間感が増すという先人の言葉、その通りでした。あっちゅう間や…
(振り返りがしたい…と思い続けてひと月以上経ちましたが、年末になったので、やります。)

●武蔵野大学高校(探求授業)講師はじまり


本郷に住んで11年、(各種メディアで)空想地図野郎として取材・出演してから9年と、長い年月が経っております。
各所で同じことの繰り返しも増えてきて、成長がないな…と思う等しました。さらにコロナ禍もあり新鮮な刺激も少なめ。停滞感をひしひしと感じていたところに、一筋の光が…

高校の授業です。えっ…!?

大学の授業のゲスト講師として1回の授業でお話やワークショップをする、ということはありました。ありましたと言っても10大学12授業、合計47回(年平均4回)と案外多いんですが、今回は【通算10回】でした。空想地図の話やワークショップを1回して終わり…ではないのです。しかも受講者20~30人…の予想に反して57人。めちゃ多い。

どうする、私経験ないんやで…とプログラムを試行錯誤。空想地図を作り、架空の店舗のロゴを作ってレシートを刷り、架空の商品のパッケージを作る等して計10回。しかも長時間講義すると寝ちゃうので新たなグループワークをいくつも生み出したり、これはなかなか刺激的でした。5~7月、9月は週の半分この授業の準備をしていたと言っても過言ではありません。停滞感を打ち砕くが如く、予想外かつ未経験で刺激的なスタートでした。来年は前期・後期ともに担当します。後述する本とともに、教育文脈が始まる1年でした。

このお話は、2018年に探求学習のプログラム(Learning Creator's Lab)にお邪魔したところ、参加していた先生伝いに、今年いただきました。面識ができてから4年後に話が来る…というのは珍しい話ではなく、知り合うタイミングと私を呼びたい事案が発生するタイミングは大体一緒じゃないのです。数年経っていても覚えてもらっていた…ということが、ありがたいですよね…。そんな人や機会を大事にしようと思いました。ええ。


●著書4冊目が9月に出て、続いて5冊目まもなく出ます


ワタクシ、何かの市場で確かな価値を出すプロになった訳でもなく、事業が軌道に乗ってきた訳でもないまま、30代も後半に。転職市場ではほぼ見込みのない危ない人間になってしまったことは、安定志向の私からすると想定外でした。こうもゆるふわな中、なぜか著書だけが増えていきます。

1冊目が人文系書籍として空想地図の本を、2冊目が同じく人文系で現代の地図読解の本を、3冊目は実用書で方向音痴指南本を、4冊目は…まさかの児童書カテゴリですが、小学校高学年から大人まで読める地図の本です。類書がこれまでいくつも出てるだろうよ…というテーマながら、案外類書が突いていないポイントを今風に(答えのない問い等を踏まえて)説いたと思います。ネットの反応は全然なく、売れているのか……は大きな謎です。

「空想地図帳」
年末の時点で98%くらいは書き終えました。100%書き終えるはずが…年始で残り2%を仕上げます。年度明けくらいには出るのではないかと思います。

さらにその後、1~3冊出るかも知れず、なぜか著書だけが増えていく人生、のようです。


●空想地図作者による空想地図の広がり

先述しました「空想地図帳」は、さまざまな優れた空想地図作者の空想地図を紹介する本です。ええ、もはや私は作者として追い越され…ました。なので、もういっそすごい空想地図紹介するゾ、のスタンスの始まりが、↑この本です。昨年末から今年年始にかけてオンラインで「空想地図塾」を実施しました。全5回、課題が出て、作者は課題に沿って描いて、参加者で講評するというものです。私は講師というより一参加者で、私も課題はやるし、講評してもらう側にもなりました。この内容は新刊「空想地図夜」にも入ります。

加えて駒沢大学駅付近に、地理系ブックカフェ「空想地図」がオープンしました。私が生まれた年に空想地図を描き始めていた空想地図作者の先輩によるオープンです。空想地図作者のみならず「地理系」カフェもなかったので、地理系の人々が集まるカフェとなっています。年末には久々に「空想地図学会」もあり、空想地図作者同士の交流も増えてきました。

ところで…
来年は大型空想地図制作案件が2件ほどあります。2件とも、未だ言えないんですが、作る面積が広く、私一人の手では作れないので、作者の皆さんの手を借りると思います(予算は…取ります)。


●アートめぐりと新しいものづくりへのベクトル

実は3月に同時に2箇所で展示をしておりました。2つとも全く別(気仙沼・尼崎)で、同時だからこそ展示物も全く別です(平面印刷物は同時でもいけるが、そうでないものも増えてきたため)。

また、隅田公園で11月、居間theaterプロデュースで、占い風パフォーマンス「うらないうら道」を実施。謎にパフォーマーデビュー。


展示に関しては今後の予定はまだありません。2017年から平均して年1回ほど来ている…ものの、おっとここで途切れるかもしれません。がしかし、今後ないとも言えません。このまま行くと同じ展示を巡回し続ける…のもまた停滞です。はっ…インプットせねば…!

ということで、今年は密かに各地の芸術祭めぐりをしておりました(石巻、新潟、東京墨田、琵琶湖、瀬戸内)。あまりあれこれ考えるよりもまずは量を見てシンプルに感じる時期にしよう…と思い…とにかく行くことにするので、今後もめぐります。なお、何か新しいものや空間を作る試行錯誤をするのに場所があったほうがおもしろいよな~と思う等しています。この件の分析は続編ブログにて。

図解で迫る今年の振り返り&来年以降の方向性、については続編(次記事)にて。
それでは、良いお年を~。来年もよろしくお願い致します。


2021年簡易的振り返り

2021年12月31日 | 振り返りと展望
例年、怒涛の振り返りをするのですが、本年の振り返りはそれよりは簡単に〜
(今年はあんまり進捗がないもので)

◎コロナ影響と仕事
仕事やその他活動には色々ありますが、なかでも…
・(A)表に出ず、粛々と準備やアウトプットをする仕事
・(B)実作業は少ない、あるいは報酬は少ないが表には出て反響を得る仕事
この2種類あるとしましょう。(B)は単体で見れば小さいものの、(A)を呼び込む起爆剤になったりもします。さて、昨年からのいわゆるコロナ禍では(B)の機会が少なくなります。(B)単体の金額は、(A)に比べてかなり少なかったりもするので、(B)がなくてもそこまで困りませんが、その影響で(A)が減りそうな気もします。オンライン(SNS・動画等)に弱く、どこの組織にも属さず、継続的仕事関係者がいない私のような人間だと、過去の(B)の蓄積で生きながらえることになります。まぁ、低調ながら生きながらえたと思います。

なかでもおもしろいのが「空想都市トラベル」。宝探しゲームをプロデュースするタカラッシュとのコラボで、コロナ前はリアルイベントができたものの、できなくなってキットを発売するようになります。そこで中村市を舞台にした謎解きキットが出まして、シリーズもう3、4作出ています。毎回テイストが結構変わるのがおもしろいのですが、異なるターゲットに届いているのか、結構な変化に飽きない常連さんに響くのか、それなりに売れています。ありがとうタカラッシュ。(写真は昨年のものです)


◎展示
イベントはほとんどないものの、展示はありました。

・アジア都市透視展(3月)…空想地図、というか地図から脱し、イラストへと表現を広げ、都市デザイナー三文字とのコラボという次の一歩へ踏み込んだ機会でした。緻密な手描きという未経験の試練でしたが、引き続き進めたい所存です。


・フロム・ジ・エッジ展(10-11月)…昨年の銀座の展示(空想調査員が見た、空想都市展)の再演なので、創作活動そのものの振り返りは割愛しますが、現代美術展がこれまでほぼ開かれてこなかった鹿児島での反応(初めて触れました、という人も多々…)と、このタイミングで親戚以外の鹿児島との接点ができたのは良かったと思います。


◎著述
あらゆる作者の優れた空想地図を紹介する「空想地図帳」、日本全国旅エッセイ、小学校中学年向けの地図読み方本…課題図書3冊溜まってます。さらにもう1冊控えて待ってもらっています。今年には出るかと思われましたが、進みがとても遅かったのでまだ出せず…とても反省しています。陳謝…。

◎シェアハウス更新と家賃相場上昇、気仙沼から得る地方生活の着想
2011年11月に始めた弊シェアハウス、つまるところ自宅である本郷はなれ、粛々と10周年を迎えておりました。時期もコロナ、かつうちがあまり集客しないタイプの住居専用型ハウスゆえ、そんなことも言わずに10周年は粛々と過ぎたのですが、始めた頃は10年も続けるとは思ってなかったのです。かといって、10年後にどう過ごしてるかを考えてもいなかったのですが。

無事今回も更新でき、契約上はあと2年続けられはしますが、大家さんは契約開始時にすでに高齢、高齢者の10年後はさらに高齢、家も築50年から60年に。続けられる限りは住みますが、大家事情(代替わり相続税)を考えると今後5年続くのか?怪しいな〜と思っております。さらに、コロナで周辺の家賃相場は上がっています。日によって通勤、日によってリモートワークができる、と言えば聞こえはいいんですが、通勤もできて、かつ家も仕事できる環境を要するとなると、ワンルーム住まいの世帯が2DKに、2DK住まいの世帯が3DKに…と、広い家を求める人々が増えたようです。それによりワンルームを上回る家の需要は増え、アフターオリンピック…とは関係ないところで、東京の家賃は上がっております。おまけに10年前と異なり、シェアハウスに向いた物件は業者にすかさずGETされるので、この家の次に、似た環境で似た家を再現するのは非常〜に難しいのです。

ところでアタクシ、一人法人があり(地理人研究所)、そちらも密かに事務所がありました(シェア事務所)。展示物や書籍の倉庫化してたんですが、これまたアジア都市透視展でコラボした三文字のプロデュースでセルフリノベ、書棚と小上がり収納が完成。仮眠ならできる環境が整います(片付けはこれからなので写真の空間は完成形ではありません)。ここがコンパスの針となり…もし今の家をロスしても東京の拠点は確保した…という具合です。おそらく私は東京の人間関係を保ち、東京の仕事をし続けます。しかし東京に高い家賃を払って一人暮らしをするか?というとそれは得策ではなさそうです。そして、実際の町や場で何かをする…という試みは東京より地方のほうがしやすく、東京ともうひと地域、二拠点を持つというのは現実的に悪くなさそうだ、という気運もあります。


11月から5回連続で訪れているアーティストインリサーチ気仙沼や、年末に訪れた豊岡等、これまであまり回ってこなかった、人口がそう多くはない地方都市の土地勘をつかみながら、地方生活のリアリティ情報を収集中。今後も暇をみつけて少しずつ回っていくと思われます。


それよりなにより、まずは本を書き上げねば!来年こそは、2冊は出るはずです。はい。がんばります。。
なお、珍しく新しく自主的に始めた「空想測量会議」(識者を集めて空想地図を詰める)をもとに空想地図を修正。今月から「空想地図塾」を(年末年始を跨いで)5回開催、オンライン無料ということもあり、妙に賑わっております。こちらもよろしければご参加下さいませ。


「お前の未来はない」空想地図作家の終わりとはじまり/地理人振り返り2020 (3)

2020年12月30日 | 振り返りと展望

ワタクシ、9月末に「お前の未来はない」と言われ、未来の行き詰まりを突きつけられました。誰が言ったって?・・・私です。

今年は、凄腕の空想地図作者が増えています。そのプレイヤーは大学生や高校生。コロナで遠くに行けない代わりに多くの時間が生まれたためこの勢いは進展した…と考えればコロナ影響ですが、関係ないかもしれません。それでは実際に見てみましょう。

手書きにして、今や幻となってしまった(※新規製作・刊行しなくなっただけで、残部は書店等にまだ多数あり、購入可能)1万分の1地形図です。よく見ないと見えないのですが、等高線は1メートル単位で描いてあります。その他、道路の車道と歩道が描き分けてあったり、何より全ての建物が描かれています。ひとつひとつ小さな建物が…戸建住宅や農家の納屋も…。芸が細かいというか、途方も無い作業量。さらに…

なんとこの方、架空の古地図をも作っています。この都市の旧版地形図です。右から読む旧字体であるだけでなく、この当時の地図記号(今は田を || で表現しますが、以前は水田、乾田、沼田がそれぞれ別の地図記号で、ここで描かれている || は水田)を再現。海岸線の線描グラデーションや、市街地の建物密集地の塗り方等、これまた芸が細かいのですが、自動車社会ではなかったこの時代特有の道路の広がり方や、河川改修されていない屈曲した川の様子、農村の様子が再現されています。

このツワモノはナニモノぞ、と思いますよね。ちょっと前まで高校生だったホヤホヤ大学生なのです。なんということだ…。

他にもいらっしゃいます。


こちらも新旧の古地図です。
旧城下町の城址が官有地や軍用地になって、戦後になると鉄道や道路が人やモノを集め、都市が広がっていく様子が描かれています。そして彼はさらに若かったはず…。

そして手描き勢に負けず、恐るべき知識とセンスと技術で空想地図を描くのが町田勢です。町田勢…と私が勝手に呼んでいるのですが、町田あたりにいる大学生2人です。ある時代の西洋画家を「印象派」と呼ぶ潮流があるように、あとで空想地図界の潮流を振り返るなら「町田派」とか言われているかも知れません。言われてるっていうか、私が言ってるのか…。

まさにこれは…昭文社街の達人シリーズの1万分の1道路地図そのものなのですが、全て架空です。彼はニュータウン開発、都市計画道路についてはかなり詳しく、宅地や道路の変化については、変わりゆく現地や、公示情報を追っています。情報収集力だけでなく、地図そのものも、いかにももともと農村だったところが都市化して郊外住宅地になった…その様子をありありと描いています。私の中で巨匠扱いになっており、気安く声をかけられない状態にありますが、用件ができたのでこれから声をかけることになります(ハラハラ…)。詳しくは彼のサイトをご覧ください。

最後に、もう一人の町田勢です。


彼もデザインは昭文社の都市地図そのものなのですが、近世から現代に至るまでの都市発展を追って、空想地図を作っています。城下町や主要寺社の形成、それらを結ぶ街道の形成を追い、それがそれ以降の時代の変化でどう都市化していったか、地名から道路や集落、その後の施設の作られ方、描き方は見事で、溜め息が出ます。私の語彙力と説明力が崩壊しています


というわけで、空想地図界は恐るべきレベルアップで大変なことになっています。見て楽しいだけでなく学ぶべきものがありすぎる、空想地図の見どきです。気づいている人は気づいていて言わないだけだと思いますが、私は既に彼らにその知識や技術、センスを越されています

そうなれば、私が空想地図作家を名乗って私ばかりがメディアに露出することへの不自然さが、そろそろ問題視されても良いのではないでしょうか。うちは歴史だけはあるけどおいしくない有名店、みたいなものです。

それゆえに、9月末に「お前の未来はない」と(私に)言われた訳ですが、そんな私に残された選択肢はふたつあろうかと思います。

私がレベルアップする
一人の描き手ではない、別の価値や機能、役割を見出す

結論から言うとどちらもやるんですが、私のレベルアップって限界があると思っています。なんたって彼らがすごい。とんでもない。それでもどうにか追いつこうと思っているわけです。

先日、こんなツイートをしたのですが、まだ構想段階で正式には決まっていません。オンライン「空想地図塾」。これは私が講師になって色々教えてやろう、というものではなく、私が学びたいのです。ただ、彼らに先生になってもらうのもアレなので(一流の職人が、それを教えるのに長けているとは限らない…というかたぶん彼らも職人肌)、空想地図の独習メソッドを模索し、技能向上の方法を編みだす試行錯誤の始まりです。私だけでなく他の描き手にも有益ではないか、と思っています。いつやるか、そろそろ決めなきゃ…。

続いて、別の価値や機能を見出すという話。前回の振り返りで「作家として生きる」話をしていたものの、それをひっくり返すような話ですが、空想地図"作家"のままではいかんなと。

彼らが技術と知識、センスに長けた職人であり、太刀打ちできないのなら、私に残されたアクション、アウトプットは何なのか。上記の独習メソッドもそうですが、空想地図を作ること、鑑賞することのプラットフォームづくりかと思っています。Twitterで空想地図を追っている人は、彼らの存在に気づいていますが、多くの人は私の空想地図にしか気づいていないかと思います。まず最初に、多くの人がこうした空想地図を見て、この記事で書いたような空想地図界の現状を知ってもらうのが先決だな、と思っています。

そのために…

来年内に学芸出版社より「空想地図帳」を刊行予定です。さきほどは今年の空想地図の進展を紹介しましたが、これまでにもRanoさんをはじめ、凄腕空想地図作者はいます。今回紹介していない今年の空想地図もあります。古地図から現代の地図、街の様子が見える詳しい地図から、地域全体を見渡す地図帳まで、さまざまな地図があり、それぞれの地図から都市や地域の成り立ちを読み解くことができるのです。

ここまで来ると、空想地図は誰にも頼まれずに作られた、一人趣味のありもしない地図…ではなく、まちづくり関連の研究者、実務者にとって有益だ、と言うことです。作者としては一人前でなくとも、その中でなぜか商業出版の企画が通りやすい私ができることは、著述、刊行によってその道筋を作ることなのではないかと。

そう、そのために、これから私は各作者に掲載の許諾を取る連絡をするのです。掲載料…的にもそうおいしい話ではないし、りーべ君以外は会ったことがないし、多少の緊張を催すのですが、OKしてくれる作者が多ければ多いほど、内容は濃いものとなります。

それと同時に、さきほど「私の語彙力と説明力が崩壊しています」と書きましたが、問題は私の紹介力です。私にとって当たり前であえて紹介、説明することを省こうとする無意識…を言語化しなければなりませんし、私の知識や観点にも偏りがあるので、どこかで必ず知識不足が出てきます。これらをどうカバーし、良い本にしていくか…が、まず短期的な目標ではあります。

空想地図は私一人の一芸である…という誤解があるとすれば、この本でそれを解き、空想地図を見る人を育て、私だけでなく空想地図界の現状をしっかり把握する人が増えることを狙いたいと思っています。このままだと私は、私一人でこの件について悩む孤独状態で死にそうでしたが、やっと人とこの悩みを共有し、解決策を探っていく一助になるのではないか、って自分本位の話ですか…!??

スミマセン。ではまた。(つづく)

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「企業案件がほしい」を戒める。しかし、作家として生きる…え…?/地理人振り返り2020 (2)

2020年12月28日 | 振り返りと展望
昨年の振り返りの振り返り

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昨年の振り返りでは「企業案件がほしい」「ワンオペを脱してコラボしたい」「展示とは何か」「ほどほどヒットを狙う」「誰かと海外に行く」なんてことを書いてました。今年は「ワンオペを脱してコラボ」した「展示」があり、珍しくことを進められました。ただ、もちろん海外には行けないし、一番違うのは「企業案件がほしい」を改めようと思ったことです。いや、長期的にはほしいんですが、お前、まだ早いぞ、と戒めた年でした。

というのも、以前から少々企業案件はありました。2016〜17年頃、そのピークは来ました。自治体や企業のまちづくり地域活性化関連や、地図会社の新商品開発、新たな地域の区切り方、分類の提案等。よぉーしこうして企業さんに地理情報の独特の切り口を提供する価値提供をするぞ、と思って法人にしてみた、という経緯もあります。

しかしこうした仕事は単発で終わるか、長く続いて2年でした。こうした仕事はあまり表に出ることがなく、その仕事が次の仕事を呼びにくい、というのもあるでしょう。しかし大きいのは、私が外から見られる印象は、あくまで空想地図や著述を中心としたアウトプットが主軸で、そこからの話題提供や新たな道筋作りへの期待があった、と見て良いと思います。

「若かりし頃の暇な時期に作った空想地図の蓄積」の「副産物の活用方法と活用先」(≒企業案件)ばかりを考えていましたが、これは空想地図作家として新たなものを生み出すほうが先なのではないか…と、後述するとあるきっかけで思うに至ります。



薄紫色のB1が、ほぼ企業案件です。2016〜18年にピークを迎え、それ以降その割合は下がっています。その代わり上がっているのが、C1とC2、つまりはアートや著述、物販等、皆さんから見える、作家っぽい側面です。もともとこちらは単価が低く収入源にならなそう、と思っていたのですが、数を重ねれば大きくなり、著述や展示だと企業の1回限りのお仕事よりは(金銭的に)良かったりします。お金の話っすか…?いやいや、実は1回の単価の額はさほど重要ではありません。

大事なのは、その仕事が次の仕事を呼んだり、その仕事そのものがその後も続くかどうかです。企業案件はさきほど書いた通り、単発か、長くて2年でした。著述や展示、物販こそ一発屋で終わるのでは、と思っていたのですが、こちらは案外2年以上続いているのです。そうか、こちらのほうが引きが強いのか…。

さらに衝撃を与えたのが、今年秋の日本能率協会マネジメントセンター(略称JMAM)での出来事です。通称JMAMショック。テストに出るので覚えておきましょう。

JMAMが主催する成長志向のビジネスマン向けのプログラムの一貫で、空想地図ワークショップをテスト実施してみたのですが、なにせお相手は研修やワークショップのプロ。これまでワンオペ試行錯誤の孤独が続いてたので、プロとともにプログラムをブラッシュアップできる!よっしゃ、という心持ちでした。どこでどんなワークを入れるか、その導入や順番、長さ、伝え方…等どう改良していこうか、そしてそこから何か学んで吸収しよう、と思っていたのですが…

プログラムのフィードバックコメントをいただきます。要約すると…

「基本、参加者が20分間話を聞き続けることはないんですが、MAX20分、最初に地理人さんの怒涛の話をシャワーのように浴びるのが、その後の参加者のやる気を出すのに重要だと思います。冷静に考えれば役に立たないようなことをやり続ける話なのだが、ここまでだと圧倒されるし、参加者も一肌脱ぐきっかけになるので大事だ」と。

あれ?私って、どう価値にしていくか…その試行錯誤が求められているのではなく、価値のなさそうなことを突き詰めるところに価値を感じられている? そう言う人、そう思う人は周囲にいたと思いますが、価値を生み出す堅いプログラムの担当者さんにそれを言われちゃ〜びっくりです。価値を目指さないのがいいでしょう(価値からの逃避)、という話ではなく、価値を目指さないのが価値だ、と言われたようなものなので。

そうか、求められているのは価値提供ではなく、作家なのか。アートだったり著述だったり、そういう不安定なやつか。そしてその不安定なほうが、世間から見ると価値だったりするわけか…。

30歳を越えたら、価値にならなそうなトライアンドエラーの蓄積の活用、展開を考えるフェーズ、と思っていたのですが、そうではなく、価値にならなそうなトライアンドエラーそのものが求められているのか。価値を考えない自分本位の暴走が価値である、という、価値とは何なんだかわからない倒錯状態に、少なくとも混乱しました。



より詳しい内訳です。記事の取材や初対面のとき、仕事や本業を聞かれたとき、一発で答えられず困るのが地理人の収入源。実際はこんな具合に分散しています。
2012〜13年は勤め労働が8割、自営業が2割の試行段階なので全体の額が小さめです。基本的にはDTPデザイン、1冊の本(みんなの空想地図)、1回大きな空想地図製作案件が来たという内訳でしたが、徐々にデザインから手を引き、プロジェクトメンバー関与(≒企業案件)やワークショップに注力していきます。この方向で行くか…と思いきや、そうはいかず、2019年以降に増えるのは、展示、グッズ、著述でした。来年にも美術館での展示が1件、新刊も2〜4冊、出るはずなので、この傾向は強まる見込みです。

企業案件は作家、著述の価値を上げてからついてくるのではないか。
そのためには、食うことを考えず作家としてのアウトプット、というよりトライアンドエラーを増やすことが先決だと思うに至りました。(つづく)

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コロナには感染してませんが、Webが何かに感染しています/地理人振り返り2020 (1)

2020年12月28日 | 振り返りと展望
年末恒例、近年の私は自身の振り返りマニアにになっていますが、今年もやります振り返り。(振り返りたがり)

弊サイト大破壊トラブル

例年は「地理人ノート」なるブログサイトでやるのですが、サイトは見られるのですが、アレッ?編集画面に入れない…

12月24日にうちの全サイトが変なエラーで見られなくなり、キャッシュとログを消して見られるようになった!と思いきや、25日に、外部からの侵入を受けて書き換えられていた、ということが判明。
大量にできた不審なファイルを消すと、再びすぐに新しく不審なファイルができる、なかなか悪質な攻撃で。Wordpressの脆弱性を突いた攻撃のようでした。



こんなの初めて!と思いきや、実は2015年9月にも似たようなことがあったのです。
そのときは借りているサーバーを引っ越して、Wordpressを常に最新版にする等、くらいにしたのですが、
それくらいじゃダメだぜ、ということですね;;;;(このときより状態は深刻です)
今回はWordpressにすらログインできず、自力で対応できないので、約8万円をはたいて対応してもらうことに。
年始に復旧するといいんですが、しばらくは片付かない事故現場…になっております。汗

その件の解決はおいおい。

コロナ影響について

今年の話題といえば、コロナですよね…。
気軽に出かけられない、人と会えない、とりわけ遠くに行けない…いいことないのが正直なところです。
とりわけ、私はネットを通じたコミュニケーションが苦手です。リアルよりネットで饒舌になる人が集う空気感が苦手で、ネットコミュニティ・コミュニケーションをこれまで避けがちだったのですが、オンライン時代になり、積極的になるか…と少し意気込むも、不発に終わりました。特にTwitterが苦手ですが、Twitterにいる人々に心を閉ざしているわけではないので、臆せずコミュニケーションできる方法があるといいなとは思うのですが〜;;;;;

追ってまた、コロナ影響で大きな変化をもたらした、歩数や交通費…という誰からの需要もなさそうな情報を、大晦日あたりにお届けします。

コロナ影響で話題になりそうなのがお仕事です。確かに多少の影響はありましたが、お仕事は2018年が今年より壊滅的に酷かったので、そのときよりはまだマシで、普通に生きております。イベント・メディア関連の推移を見てみましょう。



こうして見ると、公開イベント(一般参加可能なイベント)は2019年→2020年で3分の1くらいになっています。その他も昨年に比べると漸減、という感じもしますが、しかし2018年以前の水準に戻った、とも言えます。(ちなみにこの数と仕事、収入は比例しません。これらは合わせて全収入の5〜10%程度です。)

コロナがなくても昨年の勢いが続いたか…というと、そうではないでしょう。50〜60くらいに着地したはずが、コロナ影響で38になったくらいではないか、と思っています。

それでは、実際の仕事の変化はどうだったのでしょうか。
コロナとは関係なく、私は仕事の大きな変わり目に来ている、と感じています。(つづく)