中3の夏休みの活動を最後に引退という形になったのだが、
この年クラブ活動が授業の一環として組み込まれたため、週に1度だけ文化祭の出し物のお手伝いもしていた。
この年の演劇部の出し物は、前から何度となく候補に挙がりながらも「ちょっと暗いかも」
という理由で見送られてきた作品だった。
あらすじを言うと、戦時中、父親が出征中、残された母親と子ども3人。
一番下の子どもが病気で伏せっている。
何らかの用事が出来て、母親が外出。
残された兄や姉も、それぞれ用事が出来て外出。
どちらかの用事とは、病で伏せっている弟(だったはず)の願いをかなえるための外出なのだが、
その誰もいなくなったとき、残された弟が1人で息を引き取るというもの。
台本の読み合わせ、立ち稽古などは何度となく見学していたのだが、
通し稽古は残念ながら見ることができなかった。
それを初めて見たのは、文化祭の前日のリハーサルだった。
初めて照明を使い、衣装もきちんと着てのリハーサル。
私たち3年生は体育館の床に座って見ていた。
もちろん、展開を知っているので、ある程度は冷めた目で見ていたかもしれない。
だけど、次第にぐいぐいとその世界に引き込まれていった。
そして、弟が息を引き取るシーン。
不覚にも涙が出そうになった。
下級生の演技力に感心した。
意見を求められて、私はこう言ったのを覚えている。
「今回、初めて通して見たんですけど、すごく良かった。涙がでそうになったくらい。」
他の3年生は何度か見ているらしくて、いろいろと注文をつけていたけど、
私はそんな必要はないと思った。本当に素晴らしいものになっていた。
そして迎えた本番。
生徒がざわついていたせいで3度もやり直し。
弟が思い通りにならないことに対して姉に八つ当たりするシーンがあったのだが、
そのシーンで弟が姉を呼び捨てにしているのを、同じ名前を持つ人が「生意気~!」とヤジを飛ばしたりと、
せっかくの素晴らしい劇が台無しになってしまったのが残念。
生徒会が照明を移動させたらしく、せっかくのスポットライトもずれていた。
下級生が気の毒だった。本当なら素晴らしい劇だったはずなのに…。
後片付けを手伝った後に反省会が開かれたのだが、やはり不完全燃焼だったようだ。
見る側のマナーも必要だなと感じた一件だった。
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