ぎりぎりセーフな作品でした(宝塚歌劇 ロック・オペラ 暁のローマ)
宝塚大劇場での宝塚歌劇 月組公演の作品 <ロック・オペラ 暁のローマ> を観て来ました。
シェイクスピアの<ジュリアスシーザー>を原作とし、現代風のリズミカルなロック音楽を基調としたオペラでした。
主人公はブルータス。演じるのは月組男役トップの瀬奈じゅんさん。
カエサル(ジュリアスシ-ザー)役は専科から轟 悠さん、という二大トップスターでの劇となっていました。
この日の公演はスポンサーがついた貸切公演でしたので、オペラ開始前に遥ようこさんの司会で、月組の夏河ゆらさんの挨拶がありました。
ストーリーは次の通りです。
共和制体制下の古代ローマ、戦争に勝利したカエサルは事実上ローマの指導者的立場にありました。
だが、その彼に対し王冠を捧げようとする副将のアントニウスにローマ市民は疑問を抱き始めます。
過去の王政支配に戻るのではないかと。
カエサルがその将来に期待を寄せる若者ブルータスも、王になるつもりはないというカエサルの本心に疑問を持っていました。
そこへ現れたエジプトの女王クレオパトラ。彼女が連れてきたのはカエサルとの間に出来た赤ん坊でした。
2人のやり取りからカエサルが野心を抱いているのではないかとの疑念を持ったブルータスはカエサルに「あなたは王なのか」と問いただします。
「王ではないが自分がこのローマを治めるのだ」と答えるカエサルに対し、「ローマの理想である共和制はどうなるのか」と詰め寄るブルータス。
それに対し「時代と共に理想も変わり、今のローマは指導者を求めている」と、自分の考えを述べるカエサル。カエサルは自らの手で豊かな国を創り上げようとローマの新たな未来を思い描いていたのです。
一方のブルータスはカエサルへの尊敬の気持ちとローマを愛する気持ちの間で大きく揺れ動くのでした。
妻、ボルキアとのやり取りの末、ブルータスは“誰の物でもないローマ、皆で守り築くローマ”を自分が愛している事を再確認し、友人カシウスと共にカエサル暗殺を実行するのでした。
元老院会議の場で実行された暗殺計画。最後のとどめを刺したのが他ならぬブルータスである事を知ったカエサルは「ブルータス、おまえもか・・・。ならばいい。」と微笑を浮かべて息を引き取るのでした。
その翌日、カエサルの死に動揺するローマ市民に対し、ブルータスはカエサルの勇敢さ、偉大さを讃えつつも、カエサルがローマを自分の物にしようと野心を抱いていたと訴えます。それには死を持って報いるしかなかったのだと。
ブルータスの演説にローマ市民達が賛同の歓声をあげる中、カエサルの副将であったアントニウスが演説を始めます。
彼はブルータスを褒め讃える言葉を繰り返しながらも、カエサルが如何にローマ市民を愛していたかを訴えかけます。
市民達はアントニウスの演説に強く心を動かされ、カエサルこそがローマの父であったと理解し、彼を殺したブルータスに敵意の目を向けるのです。
さらに妻まで失い絶望するブルータスの前にカエサルの幻が現れこう言います。「終わりが全てを決めるのだ」
アントニウス、そしてカエサルの養子として後を継いだ甥のオクタヴィアヌスらにより追い詰められるブルータス。
戦闘により次々に仲間を失い、最後には、心からの愛を注いでくれた人々への思いを胸に自らの命を絶つブルータス。
その後、ローマを愛していた彼の思いを讃えアントニウス、オクタヴィアヌスは丁重に彼を葬るのでした。
今回の題材自体が華やかさに欠ける物であった上に、曲調がロックだったという部分で宝塚ファンの方には非常に評価が難しい作品だったと思います。
ロック調に合わせた衣装の色合いやデザイン、振り付けにも苦労されたであろうことが想像されます。当然、史実にある衣装からは少々離れざるを得ないようでしたが。
当たり前の事ですが、タカラジェンヌの方々は非常に熱心に演じておられました。
ですが作品としては賛否両論があるだろうと想像されます。
テーマがテーマだけに“だれて”しまいそうになる部分が結構ありました。
それを救ってくれるのが、幕間の準備中にアントニウス役の霧矢 大夢(ひろむ)さんと、オクタヴィアヌス役の北翔 海莉さんが劇の進行内容に関してやってくれる掛け合い漫才です。
お二方の掛け合いに結構笑わせてもらいました。(オープニングもいきなり掛け合いから始まるんですからちょっとびっくりでした)
ロックオペラにこだわるのであれば無理に新作<暁のローマ>を作るのではなく、有名なミュージカルの<ジーザスクライストザスーパースター>を演じても良かった気がします。
こちらは元からロック調の作品ですのでもっと自然な感じが出せたかもしれないと思いました。
(上映中の映画“ダヴィンチコード”との絡みで面白いテーマになったかもしれませんしね。)
今回の演出家さんは昨年不評だった下の作品の脚本・演出をされていたので、申し訳ありませんが、その作品と比較すると、今回は何度も滑りそうな部分はあったのですが、最後まで何とか持ちこたえた作品だと思いますので、私個人としては、ぎりぎりセーフの出来映えだと思います。
一方、2部のレビュー<レ・ビジュー・ブリアン>は題名通り、きらめく宝石のように煌びやかなレビューショーでした。
様々な宝石をイメージした舞台デザインと共に踊りが繰り広げられていきます。こちらの方については何ら不満はありません。タカラヅカらしい美しい作品です。
レビューのフィナーレでは、毎回その組のトップスターが背中に大きな羽根飾りを背負って登場されるのですが、今回は男役が2枚看板でしたので、月組男役トップの瀬奈じゅんさんと専科から出演の轟 悠さんのお2人が共に羽根飾りをつけるという珍しいフィナーレを見る事が出来ました。今回の羽根は白を基調とし、そこに黒を加えることによりコントラストをはっきりさせた美しく且つカッコいい羽根飾りでした。
レビュー終了後にも出演者との短いトークショーが特別に設けられ、ブルータスを演じられた瀬奈 じゅんさんが登場されました。
この日はちょうど母の日でしたので、「お母様にプレゼントは?」との質問に「役の上で自分の母親を演じてくれている嘉月 絵理さんの化粧台に花束を置いておきました」とのエピソードを話されました。
また、お芝居についての感想としては、「ちょうど公演3日目でやっと落ち着いてきたところです」との返事。
役を演じる上での工夫としては「“ローマを愛し、カエサルを愛す”という苦悩を表現する為、両方に対する思いを同じ比重で演じるのに苦労しています」と話されました。
レビューでは、最前列のお客様の中の1人に対し、「僕とダイヤのどっちが欲しい」と尋ねるシーンがあり、この3日間の公演ではまだダイヤモンドと言った人はいないのですが、この先、もし“ダイヤモンド”という人が出たら、「覚えてろ!!」って言ってやりたいですと笑って仰いました。
あれからちょうど2週間、ダイヤモンドと言った人がでたかどうかは知りませんが、今回のちょっと変わったロックオペラ、そして煌びやかなレビューショー、興味を持たれた方がいらっしゃいましたら劇場へ足をお運びください。
宝塚大劇場での月組公演は6/19まで、その後、場所を東京宝塚劇場に移し7/7から8/20まで公演の予定です。
今回掲載したポスターは宝塚歌劇のホームページのものを使用させて頂きました。
宝塚大劇場での宝塚歌劇 月組公演の作品 <ロック・オペラ 暁のローマ> を観て来ました。
シェイクスピアの<ジュリアスシーザー>を原作とし、現代風のリズミカルなロック音楽を基調としたオペラでした。
主人公はブルータス。演じるのは月組男役トップの瀬奈じゅんさん。
カエサル(ジュリアスシ-ザー)役は専科から轟 悠さん、という二大トップスターでの劇となっていました。
この日の公演はスポンサーがついた貸切公演でしたので、オペラ開始前に遥ようこさんの司会で、月組の夏河ゆらさんの挨拶がありました。
ストーリーは次の通りです。
共和制体制下の古代ローマ、戦争に勝利したカエサルは事実上ローマの指導者的立場にありました。
だが、その彼に対し王冠を捧げようとする副将のアントニウスにローマ市民は疑問を抱き始めます。
過去の王政支配に戻るのではないかと。
カエサルがその将来に期待を寄せる若者ブルータスも、王になるつもりはないというカエサルの本心に疑問を持っていました。
そこへ現れたエジプトの女王クレオパトラ。彼女が連れてきたのはカエサルとの間に出来た赤ん坊でした。
2人のやり取りからカエサルが野心を抱いているのではないかとの疑念を持ったブルータスはカエサルに「あなたは王なのか」と問いただします。
「王ではないが自分がこのローマを治めるのだ」と答えるカエサルに対し、「ローマの理想である共和制はどうなるのか」と詰め寄るブルータス。
それに対し「時代と共に理想も変わり、今のローマは指導者を求めている」と、自分の考えを述べるカエサル。カエサルは自らの手で豊かな国を創り上げようとローマの新たな未来を思い描いていたのです。
一方のブルータスはカエサルへの尊敬の気持ちとローマを愛する気持ちの間で大きく揺れ動くのでした。
妻、ボルキアとのやり取りの末、ブルータスは“誰の物でもないローマ、皆で守り築くローマ”を自分が愛している事を再確認し、友人カシウスと共にカエサル暗殺を実行するのでした。
元老院会議の場で実行された暗殺計画。最後のとどめを刺したのが他ならぬブルータスである事を知ったカエサルは「ブルータス、おまえもか・・・。ならばいい。」と微笑を浮かべて息を引き取るのでした。
その翌日、カエサルの死に動揺するローマ市民に対し、ブルータスはカエサルの勇敢さ、偉大さを讃えつつも、カエサルがローマを自分の物にしようと野心を抱いていたと訴えます。それには死を持って報いるしかなかったのだと。
ブルータスの演説にローマ市民達が賛同の歓声をあげる中、カエサルの副将であったアントニウスが演説を始めます。
彼はブルータスを褒め讃える言葉を繰り返しながらも、カエサルが如何にローマ市民を愛していたかを訴えかけます。
市民達はアントニウスの演説に強く心を動かされ、カエサルこそがローマの父であったと理解し、彼を殺したブルータスに敵意の目を向けるのです。
さらに妻まで失い絶望するブルータスの前にカエサルの幻が現れこう言います。「終わりが全てを決めるのだ」
アントニウス、そしてカエサルの養子として後を継いだ甥のオクタヴィアヌスらにより追い詰められるブルータス。
戦闘により次々に仲間を失い、最後には、心からの愛を注いでくれた人々への思いを胸に自らの命を絶つブルータス。
その後、ローマを愛していた彼の思いを讃えアントニウス、オクタヴィアヌスは丁重に彼を葬るのでした。
今回の題材自体が華やかさに欠ける物であった上に、曲調がロックだったという部分で宝塚ファンの方には非常に評価が難しい作品だったと思います。
ロック調に合わせた衣装の色合いやデザイン、振り付けにも苦労されたであろうことが想像されます。当然、史実にある衣装からは少々離れざるを得ないようでしたが。
当たり前の事ですが、タカラジェンヌの方々は非常に熱心に演じておられました。
ですが作品としては賛否両論があるだろうと想像されます。
テーマがテーマだけに“だれて”しまいそうになる部分が結構ありました。
それを救ってくれるのが、幕間の準備中にアントニウス役の霧矢 大夢(ひろむ)さんと、オクタヴィアヌス役の北翔 海莉さんが劇の進行内容に関してやってくれる掛け合い漫才です。
お二方の掛け合いに結構笑わせてもらいました。(オープニングもいきなり掛け合いから始まるんですからちょっとびっくりでした)
ロックオペラにこだわるのであれば無理に新作<暁のローマ>を作るのではなく、有名なミュージカルの<ジーザスクライストザスーパースター>を演じても良かった気がします。
こちらは元からロック調の作品ですのでもっと自然な感じが出せたかもしれないと思いました。
(上映中の映画“ダヴィンチコード”との絡みで面白いテーマになったかもしれませんしね。)
今回の演出家さんは昨年不評だった下の作品の脚本・演出をされていたので、申し訳ありませんが、その作品と比較すると、今回は何度も滑りそうな部分はあったのですが、最後まで何とか持ちこたえた作品だと思いますので、私個人としては、ぎりぎりセーフの出来映えだと思います。
一方、2部のレビュー<レ・ビジュー・ブリアン>は題名通り、きらめく宝石のように煌びやかなレビューショーでした。
様々な宝石をイメージした舞台デザインと共に踊りが繰り広げられていきます。こちらの方については何ら不満はありません。タカラヅカらしい美しい作品です。
レビューのフィナーレでは、毎回その組のトップスターが背中に大きな羽根飾りを背負って登場されるのですが、今回は男役が2枚看板でしたので、月組男役トップの瀬奈じゅんさんと専科から出演の轟 悠さんのお2人が共に羽根飾りをつけるという珍しいフィナーレを見る事が出来ました。今回の羽根は白を基調とし、そこに黒を加えることによりコントラストをはっきりさせた美しく且つカッコいい羽根飾りでした。
レビュー終了後にも出演者との短いトークショーが特別に設けられ、ブルータスを演じられた瀬奈 じゅんさんが登場されました。
この日はちょうど母の日でしたので、「お母様にプレゼントは?」との質問に「役の上で自分の母親を演じてくれている嘉月 絵理さんの化粧台に花束を置いておきました」とのエピソードを話されました。
また、お芝居についての感想としては、「ちょうど公演3日目でやっと落ち着いてきたところです」との返事。
役を演じる上での工夫としては「“ローマを愛し、カエサルを愛す”という苦悩を表現する為、両方に対する思いを同じ比重で演じるのに苦労しています」と話されました。
レビューでは、最前列のお客様の中の1人に対し、「僕とダイヤのどっちが欲しい」と尋ねるシーンがあり、この3日間の公演ではまだダイヤモンドと言った人はいないのですが、この先、もし“ダイヤモンド”という人が出たら、「覚えてろ!!」って言ってやりたいですと笑って仰いました。
あれからちょうど2週間、ダイヤモンドと言った人がでたかどうかは知りませんが、今回のちょっと変わったロックオペラ、そして煌びやかなレビューショー、興味を持たれた方がいらっしゃいましたら劇場へ足をお運びください。
宝塚大劇場での月組公演は6/19まで、その後、場所を東京宝塚劇場に移し7/7から8/20まで公演の予定です。
今回掲載したポスターは宝塚歌劇のホームページのものを使用させて頂きました。
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