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聴刻堂日乗

「傑作はまだ」(瀬尾まいこ)

「傑作はまだ」という本を読んだ。
瀬尾まいこの2019年の小説だ。

主人公は50歳の小説家。
突然、25歳の息子が訪ねて来る。
息子と実際に会うのは初めてだ。
独りで暮らしてきた小説家は慣れ
ない共同生活に戸惑いつつ・・・。

こんな状況は絶対ありえんやろ、
と思いつつも、いい話を期待して
ページをめくってしまう。

息子の智くんのキャラが良い。
歯に衣を着せないが、陰がなくて、
明るく、軽妙だ。意外に社会性も
あって、しっかりしてる。

それに対して、主人公の父親は
全然ダメダメな奴で。常識がない
と言うか、想像力がないと言うか。
どっちが子供か判らない。

それでも、人から嫌われたり、
非難されたりもせず、人と接する
うちに色々なことに気付いてゆく。
中年の成長物語と言えようか。

作者は何故この話を書いたのか?
世のオヤジに対する強烈な皮肉か?
あるいは啓蒙または教育の書か?
実験的な状況設定の中で、父親と
息子の関係を描いてみせたか?

いずれにせよ、読後イヤな気分に
はならならない。安心して読める、
ある種のファンタジー小説だ。

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