青空のCafétime

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“試着室で思い出したら、本気の恋だと思う” ブックレビュー

2018-12-04 10:23:01 | Review
大通りから住宅街に入ったとたんに人通りが途絶え急に静かになる。そんな一角にひっそり在る小さなブティック。取り扱う商品はここでしか手に入らない上質なものばかり。

落ち着いた雰囲気の背の高い女性店員が、それぞれの事情を抱えたお客さまの相手をする。


・前に進まない恋に悩むネイリスト。

・子供が成人したらきみと一緒になると不倫相手に言われ続けて、いつしか二十代が終わっていた化粧品会社勤務のOL 。

・元彼と出来ちゃった婚をする後輩の披露宴で、先輩としてスピーチする羽目になったキャリアガール。

などなど。


店を訪れた彼女たちの服を、彼女自身には分からなかった視点で選びアドバイスする。


似合うのと似合い過ぎるのは違う。似合いすぎるといつもと変わらない。でも本当に何も変わっていないの?

人は誰でも歳を取る。体型維持に気を配りアンチエイジングに精を出しても、確実に年齢は重ねられ、鏡に写った自分は外見は変わらなくても若い頃とは何かが違う。でもそれは悪いこと?

大人じゃないと似合わない服がある。いろいろな経験を重ねたからこそ纏うことが出来る余裕のようなもの・・・恋もそう。


優しく口数の少ない謎めいた女性店員はそのブティックのオーナー。パリにいるデザイナーの恋人とのささやかなエピソードがエンディングに待っている。


オムニバス形式の各話は独立していて、ブティックを軸にゆるかに繋がる。ドラマティックな恋もなくハッピーエンドばかりではないが、恋なんてそんなもの。彼女たちのそれぞれの恋にエールを送りたくなる。


秋の夜長にもの思う、大人の女性にお勧めです。男性もたまには恋愛小説はいかがでしょう。身勝手な恋に悩む女性の気持ちを知ることができるかもしれません。


『試着室で思い出したら、本気の恋だと思う』
尾形真理子著 幻冬舎文庫