またしても雨がひどく降るそうです。
それも、警報級の大雨の予報。
先日来からの雨続きで、大きな災害が出ないことを心から祈るしかないけど。
さて。
皆様は”スパイ”と聞くと何を思い浮かべますか?
ジェームス・ボンド?イーサン・ハント?鉄のクラウス?
派手なアクションをイメージする人が多いかもしれません。
が、実際はもっと静かに、日常に溶け込むタイプが多いのではないでしょうか
今回読んだのはこの本『ラブカは静かに弓を持つ』
主人公の橘は全日本音楽著作権連盟で働いており、上司からミカサ音楽教室
への潜入調査を命じられます。
幼い頃にチェロを習っていた経験を買われて潜入調査員に選ばれた橘ですが、
ある事件をきっかけにチェロからは遠ざかっており、現在の彼は人づきあいを
苦手とし、不眠症でもあります。
そんな彼がチェロ教室で講師の浅葉に出会い、熱心な指導を受けることに。
(もちろん潜入捜査なのですが)
音楽を奏でる歓びと、もっと上手くなりたいという焦燥、そして師・仲間との
出会いが橘を次第に変えていきます。
(この変化が実に自然にみずみずしく描かれるところもすばらしい)
しかし、彼は普通の生徒ではなく、あくまでも“スパイ”。
作中で『戦慄(おのの)きのラブカ』という架空の映画(諜報もののスパイ映画)
の劇伴を演奏するのですが・・・タイトルの”ラブカ”がここで登場!
”ラブカ”は、深海ザメの一種です。(←シンゴジラのモデルです)
潜伏先で息を潜めて過ごすスパイのイメージにぴったりなんです。
ラブカのように、深海に潜むように潜入する橘の葛藤を読み進めていくと
その先で気づくのは深い深海にあっても、光は届く・・そんな読後感。
読み進めるときに、ページの間からチェロの音色が聴こえてくる、音楽×小説
の満たされた読書体験ができる一冊です。