けっこう前に話題になった「
こんちにはみさなん」を思い出して、やたらと聞き間違いが多い上に日常会話の中で「仮の話」とか「たとえ話」とか「少し関連する別の話」とかが全然スムーズに伝わらない男に、試しに読んでもらった。
はじめから詰まったので、その仕組みを説明して、改めて読ませてみても、すらすらと読むことができなかった。記事の後ろには「言語の習熟度」が影響する、と書いてあって、まあ平素馴染みがない英語の文章を見せられた平凡な日本人が英文のそれにピンとこないのはわかる。だけど、日常で普通に使う短い単語で構成されているこれなら読めるのが普通だ。
耳から入った聞き間違いを、前後関係から想像して正しい言葉に置き換える作業はみんな無意識にできているものだけど、もしかすると、脳のこの機能が損傷しているのかもしらん。ならば書き言葉でも同じことが起こったりしてな、いやまさかははは…の結果がこれだ。
統合失調症と分類される人の典型的な症状の一つに、自分の中のことと外のことの区別がつかない、というのがある(精神科医の辻悟という故人が盛んにこの言い方をしていて、なんかずっと意味が分からなくてこの先生の書く論評は長らく好きじゃなかったけど、ああ、こういうことか!と少し理解できるようになってから、実は辻先生というのはその世界の権威だったのだと知る)。件の男は、別にそこから幻覚妄想に発展していくわけではなく、きっと昔からそういうところがあって、日ごとに悪化していくでも改善するでもない。
そういう病気なら何かの見込みもあったかもしれない。しかし、自分が電話で聞いたり書類を読んだりした情報を、相手も当然に知っているものとして話をしだしたりとか、起こった事柄の前後関係がつかめていなかったりとか、そのせいで意志疎通に悪影響を及ぼすことがしばしばある。でまあ、全部ひっくるめて、物理的な脳の損傷か発達不良を周りは疑っている。その成り立ちが「病気」でなく生まれついての性分となると、言って何とかなるものではないのだろう。どんな治療を施しても駄目なのだと思う。
そういう自覚があって謙虚で正直で堅実で悪影響を最小限に留めようという意志が感じられる人なら、周りも理解してサポートしようと考えるだろう。けど、屁理屈ばっかり言って、話の本質を理解していないのに低水準な口答えが多く、突飛な例外を押し込んできて無駄に皆の議論を中断することが常で、極めて尊大な振る舞いをするからつい「普通の人」として対応してしまい、周りは常に怒っている。この人は頭のおかしい人なのだ、と自らに言い聞かせて接しないと、周りの精神が消耗する。
実はすでに消耗した。