修理の経緯
昨年秋にネット通販で購入した日立製IH炊飯器が故障して間に合わせの小型炊飯器を購入しました。
小型で消費電力も少なく安価だったので、私は気に入っているのですが、家内は不服のようです。
その理由は1.5合炊きという容量の少なさと蓋が完全に分離してしまい扱いが少し面倒だからです。
「新しいものを買う」と言い出したので壊れた炊飯器を修理してみることにしました。
保証書が見つかれば修理に出したのですが1か月経過しても見つからなかったため覚悟を決めて分解しました。
症状と原因予測
故障の症状は「コンセントにつないでも液晶表示器に何も表示されず、うんともすんとも言わない」という状況です。
こちらの機種(日立RZ-TS104M)はコンセントに接続されていなくても内蔵のボタン電池で時計が動作して現在時刻を表示する方式です。
その表示が出ていないということはボタン電池が空になってしまっている可能性が考えられます。
ただ、ネットで探した説明書によると3年は持つはずですし、たとえ電池がなくなってもコンセントにつなげば動くという説明ですので電池の問題だけではないかもしれません。
日立の炊飯器でボタン電池を交換した記事がネットでいくつか見つかりました。
それによると基板にCR-2354/HFN という電極付き(タブ付き)のボタン電池が直付けされているようです。
パソコンのBIOS設定を記憶させているC-MOSメモリのバックアップでよく使用されているCR-2032と同じ電圧(3V)で直径と厚みが大きくなった大容量の電池です。
家電店やホームセンターなどでは入手できないのでネット通販などで手に入れる必要があります。
アマゾンなら500円程で手に入ります。
メーカーに修理に出すと最高8,000円かかり、修理期間は2週間だそうです。
費用も時間もかかりすぎです。
とりあえず、手元にあるCR2032で試すことにしてジャンクの古いマザーボードからCR2032の電池ソケットを取り外して電線をつけてつないでみることにしました。
修理作業
分解して制御基板が見える状態にしました。
表
裏
ボタン電池を外して電圧を確認するとちょうど3Vでした。
新品のCR2032では3.2Vでしたのでちょっと低めです。
CR2032を接続してみましたが、残念ながら反応はありませんでした。
想像していた通りマイコン以外は抵抗、コンデンサ、スイッチ、LEDと液晶表示器だけです。
電池を変えても動かないということはマイコンが動作していないということになります。
マイコン自体が壊れることはめったにないのでハンダ付けしてあるところに亀裂が入っているかもともとハンダ付け不良が合って接触不良を起こしている可能性が高いと判断しました。
回路図があれば順番に信号を見て行くのですが、もちろんあるわけもなく、現物から回路図を起こすほど暇もありません。
会社の同僚が「テレビが故障してメーカーのサービスマンを呼んだら、調べても判らず、最後にハンダごてで基板を全部ハンダし直して治ったのには笑ってしまった。」と言っていたのを思い出しました。
そこで、まず表面実装のチップ部品とマイコンの足をハンダごてで再ハンダしてみました。
それでも変わりません。
ならばとジャンパー線(基板の表側にある裏の配線を飛び越してつないでいる線)とスイッチすべてを再ハンダしたところ見事に動きました。
マイコンが動いたので組み立て直して動作確認したところ、設定はすべて可能になりました。
試しに炊いてみようと米を研いで炊飯スイッチを押したところ何と「C03」というエラー表示が出てしまいました。
説明書で確認したところ、蓋が締まっていない時に出るエラーでした。
再度分解して見回すと蓋を固定する金具でリンクが動いてマイクロスイッチを押す構造になっていました。
取付位置などの調整に格闘すること30分、何とか安定にスイッチが入るようになりました。
組み立てて炊飯スイッチを押してエラーが出ないことを確認し、一旦炊飯を止めてタイマー予約で炊いてみたところ、無事に炊けました。
家内は「本当に大丈夫なの?」と聞いてきます。
マイコンが動作しなかっただけで他はいじっていないのだから問題が起こるはずはないのですが、どうも信用されていないようです。
とりあえず余計な出費は避けられました。
小型炊飯器は修理した炊飯器にトラブルが出た時のバックアップ用に保管することにしました。
メーカーに修理に出した場合は調査せずに基板を交換してしまうような気がします。(その方が時間がかからず修理費が安くなるからです)
家電製品は電気用品安全法の対象なので注意が必要
基本的にAC100VやAC200Vのコンセントから電源を得ている機器は電気用品安全法の対象です。
この電気用品安全法に従って技術基準適合性検査を受け合格したものにPSEマークを付けることになっています。
新品、中古品にかかわらずPSEマークがついていない物を販売すると罰せられますので注意が必要です。
販売が問題で、以前から持っている古い家電品を使う分には罰則はありませんので使い続けても大丈夫です。
とはいっても、20年、30年を超えるような古い製品は電線の被覆などが劣化することにより絶縁不良を起こしていることがあり、最悪発火する可能性がありますので入れ替えた方が良いと思います。
どうしても使い続けたい場合は無人の時にはコンセントを抜いておくことです。
人がそばにいれば匂いや音で異変に気づけますので最悪の事態は避けられます。
電気用品安全法の基本的な考え方は人体への危険や火災の危険を排除するということです。
直流で動作するものは対象外ですのでノートパソコンやスマホ、タブレットなどは対象外で、これらを使用/充電するためのACアダプターは対象です。
ですのでノートPCの修理は全く問題ありません。
同じような考え方をすればデスクトップPCも電源ユニットだけが電気用品安全法の対象物になりマザーボードやHDD、光学ドライブなどは対象外になります。
ですので部品をあつめてPCを自作することは問題ありませんし、マザーボードを改造するというような行為も問題にはなりません。
電気用品安全法の対象物は改造したものを販売してはいけないことになっています。
修理の場合、故障している部品を正規の部品と交換することは本来の性能と変わることが無いので認められています。
しかし、同じ部品でなければ改造したことになります。
改造した場合、本来の安全性能を維持しているかの試験をしなければいけません。
ですので修理する場合は部品の選定に注意が必要です。
今回の修理ではボタン電池は元に戻しましたしハンダ付けされている部分をやり直しただけですので改造には当たらず全く問題ありません。
ただ、分解しているのでメーカーの修理は受けられなくなりました。
ネットに自力修理の話がいろいろ出てきますが中には改造に当たる修理をしているものも見かけます。
これは危険です。
私は電気工学科を卒業しており、在学中に電気工事士と第三種電気主任技術者(略称「電検3種」)の資格を取得しているので電気に関する知識はあります。
電気工事士の資格がありますので自分の家の中のコンセントの増設や照明の配置を変える工事をすることができます。
民生品ではありませんが仕事で電気回路の設計、製作もしています。
海外の安全基準(UL、CE等の規格)についても勉強しています。
資格や知識があるかないかで何が違うかというと、使う部品や取付方法、使用環境に対する必要な性能など、使用方法が安全であるかを判断できるかどうかということです。
今回、再組み立ての際には高温になる部分や高電圧になる部分がありましたので配線の取り回しに問題が無いか注意深く確認した上で組み立てています。
知識のある方が自力修理されるのは問題ないと思いますが、知識のない方が見よう見まねで修理するのはとても危険です。
「自己責任でやるからいい」という考え方もあります。
実際、修理したものを販売さえしなければ電気用品安全法で取り締まられることはなく、罰則も適用されません。
しかし、火災になってすべて焼失してしまったり、家族を失うことになってしまったら大変です。
私の記事を見て修理を試みようと思った方は御自身の知識、技能が十分か、良く考えてから行動してください。
本来と違う部品を取り付ける修理は絶対にやってはいけません。
この記事をみて修理を試みられて何か起きても私は一切責任を取れません。
だったらなぜ記事にするのかと突っ込まれそうですが、この記事は知識や技能をお持ちの方の参考にしてもらうつもりで紹介しています。
知識や技能をお持ちの方であれば高い費用と時間を使わずに修理できる可能性がありますので。
(ちょっと上から目線になっていますでしょうか。)