11月1~2の新作公演、リハーサルが進んでいます。作業日記の一部を。
(長くなるといけないので何回かにわけてアップします。)
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稽古場に人が立ち会う段階にきている。
踊りを見せた直後の空気は、作品の状態を如実に感じさせる。
今回、踊りの終わったあとに、ピンと張った空気がある。残響のように。
じっと見つめていた視線が対話にむけて緩んでゆく、その時間が、ずいぶん今迄と違う。
節目の作品になるのでは……。
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踊りが変わってきた。という言葉をもらう。
どんどん変わりたい。
変われば変わるほど、一貫して不変のものも試されるから。
変化流動の良さと同時に、ずっと変わらない事の良さ。
ダンスには、その二面性が太陽と月みたいに、互いに働きあっているのでは、と、今回の公演稽古のなかで感じてならない。
変化するものに対して、定まって確かなもの。
例えば、心が翼を羽ばたかせたくても肉体が確かに定まっていないと、その奔放さを発揮できない。
肉体が変化してゆく時、心がどっしり座っていないと受け止めることができない。
動は静とひとつ。
光は闇とひとつ。
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身体。
「私たちは星の欠片でできています。」
そう書いたのは生物学の柳澤桂子氏だが、その言葉が、スッと呑み込めるようになったのは、もとより生は死をたずさえてある、というその当然を心臓に突きつけた、あの震災から。
目まぐるしい変化の背後に隠されている、不変の何か、確かな何か、意識の底に眠る何か、血の記憶としての何か。
僕ら人の基盤というか、核というか。そんな何かを、探す。それこそダンスの作業じゃないかしら。と思うように、なった。
思えば、身体は自然の一つ。その内部には火も風も狂う。昔の人は宇宙そのものに例えて、ミクロコスモスと呼んだくらいだから。だだっ広い。未知だ。
血の声、遺伝子の声、細胞の彼方の未知の声。
きいてみたい。愚直に、かつ、センシティブに。
そんな欲望が、今回、蓋を開けたかもしれない。
(つづく)
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公演info.
櫻井郁也・公演サイト