櫻井郁也ダンスブログ Dance and Art by Sakurai Ikuya/CROSS SECTION

◉新作ダンス公演2024年7/13〜14 ◉コンテンポラリーダンス、舞踏、オイリュトミー

きくことから

2013-10-12 | ダンスノート(からだ、くらし)
まず、きく。
音に、気配に、熱に、時の流れに、心耳をかたむける。

それらに寄り添うように、やわらかに身体にエネルギーを注いでゆく。

それが何よりもダンスの始まりだと、僕は思っている。

今週のレッスンは良い稽古が続いた。
稽古を続ける中で、人が変化する。充実身体、とでも言えば良いかしら、からだがスカスカでなくドンと重力が出てくる。そして、重力のなかで、心の耳が明るくなり始めている。それを実感した。

踊り続ける限り、もちろん姿勢や身のこなしも美しくなる。けれど、もっと変化するのは「ききかた」だ。

聴く。
聞く。
貞く。

身の外の響きばかりでなく、身の内側の声を「きき」ながら佇んだり動いたりするようになってゆく様子が、日々ごく自然に見えてくる。
男性の方も女性の方も、立ち姿が凛として、足音が柔らかくなる。
背筋が鼓膜に近くなる。
身にまとう空気も澄む。

稽古は単純に言えば、繰り返す、ということだが、それは単に運動だけではない。
決まった曜日、決まった時間、決まった場に、身を置くのだから、周期をつくっているわけだ。周期をつくる、習慣をつくる、それが肉体に刻まれる。日常・雑事・雑感から切り離して純粋に身心のための時をつくる。
そうしていつしか、
ご自分のからだと親しくなってゆかれるのだと思う。

人は生きる限り身体と共にある。
身体は人生のパートナーだし、その人の資源だ。

極めて多忙な人から、踊りを稽古しているのは、余裕をつくるためなんですよ、ときいた。
なるほど、と頷いた。

からだを磨くことで、直感力が冴え、本来の能力を使いこなせるようになるのはご存知。
しかし、それ以上に、丹田がきちんと決まるようになったり背筋がしなやかになれば、何よりも、心のブレが減ってゆくのではないか。それが余裕につながるのではないか。と推測する。

よく「きく」事が出来るというのは、その瞬間の心の余裕の証しだ。

心おだやかなら、音楽や言葉だけでなく、沈黙をもきく事ができる。
余計な言葉を消して心をきく作業も出来る。

踊りのからだ、それは「きく」からだ。

実に実に、そう思う。
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