「マーク・マンダースの不在」という展示(東京都現代美術館)を観ました。不在、という言葉に惹かれたのです。
パフュームの仕掛けで人気のライゾマ展と隣り合わせの開催。混んでいましたが、この二つをハシゴで観ていると場内の反応の違いが実に興味深かったです。マンダースの展示は、静かな会場なのに、よく耳をそばだてると声を抑えているけれど驚きの言葉を交わしている人があちこちにいて、多くの人がとても静かにアグレッシブになっているのがわかりました。
何よりも「作業の量感」と「肉体の痕跡」と「徹底的な思索」が圧倒的な力で迫ってきました。やはり芸術というものの核を実感させられます。家にいては見れないもの、映像の世界では感じ取れないもの、が確かに目の前に在るのです。
そして、存在的な素晴らしさに加えて、これは何なのか、これを通じて私は何を受け止めているのか、ということについて、非常に考えさせられ、読書をしたような充実がありました。
作品をただ見るだけでも充分魅力的なのですが、その題名を読んだり、素材や手法を調べたりすると、また新しい発見があったり、ただ見るだけではわからない意味世界の広がりが出てくるのです。
また、個々の作品に圧倒的な力がありながら、それらを並列にしない展示方法が面白く、物語や哲学書を読んでいるような楽しみ方が出来るよう工夫されているのは、この作者の凄いところだと思いました。
物によって語られる言葉、というものを、まさに聴いた感じがあります。話し言葉や書き言葉でも可能な世界を物に象徴させているのは沢山ありますが、それとは全く異なる知的な実験だと思います。多々、共感しました。
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