ときどき、亡くなった折田克子さんのことを、思い出します。
折田さんはまさに稀有なモダンダンサーで振付家で指導者で、僕にとってはずっと励ましていただいてきた精神的な恩人です。
10月5日が命日です。
今年はその前日と前々日に秋公演を設定していたのですが、コロナで中止になりました。
僕はレクイエムが苦手ですが、それでも、大事な人の命日に連なる日に踊りたいという心持ちで、彼女の思い出を思いながら稽古していました。
公演中止は酷でしたが、このときの稽古は、いま制作中の新作にとても力を与えてくれています。
折田克子さんとは、『アリスの長い午后』(1997・埼玉芸術劇場)という彼女のダンス作品に客演させていただいたのが出会いで、僕が公演を開くたびに激励の言葉をいただいていました。
折田さんの作品は、凄い人が沢山関わって立派な賞もいただいた大きな華やかなもので、その作業は大変でしたが、僕にとって楽しみな時間の連続でした。踊らせていただきながら、踊りというものの素敵さを体に染み込ませてゆくような作業で、もちろんそれは「リハーサル」なのですが、僕にとっては折田さんと対話することができるかけがえない時間の連続であり、いつもドキドキしていました。
で、ある日の稽古のあとお茶をいただいていたとき、彼女がこんなことを言い出したのが強く胸に残っています。
「なんとなくなんだけどね、21世紀はね、人間復活の時代になると思うのよね。おかしいかしらね、、、。」
ちょっと笑いながらだったのですが、すっと自然に言われたその一言に僕は強烈に、とても、感慨をいだいたのです。ニンゲンフッカツ。その一言が、ぐっと、胸にこたえたのです。
僕は不安な時期でした。何をしてもうまくなくて少し斜に構えていましたし、ちょっと絶望さえしていたかもしれない。最初の子どもが生まれたばっかりでしたが、自分自身として立っている自信もまだ怪しく、おろおろして、弱さ、というものに初めて本当に直面していました。
そのころから長い時間がたって、いまこの状況のなかで、ふたたび、彼女の言葉がとてもリアルに思えてきたのです。僕自身も、いまこの状況を過ごしながら、この21世紀を、まさにそのように、つまり、人間なるものが復活するプロセスの到来であるように、思えてならないのです。予感、というのでしょうか。
9.11テロ、3.11震災、そして現在のコロナ、、、。それらを始めとして、21世紀の到来とともに、僕らは実際すごくすごく「危機」なるものにさらされ、さまざまな面で「試され」続けています。
どうすれば人は仲良く出来るのか、どうすれば人は災害や病を克服できるのか、どうすれば日々の暮らしを安らかに保つことができるのか、、、。
そんな、「命の根本の問題」に向き合わざるを得ない時代に、僕らはいままさに生きています。
つらいけれど、それゆえにこそ気付くことがあったり、紡ぎ出すべきものが見えてきたりするのでは、というような、非常に大切な時期に、生きているのだと思えてなりません。
ここから、僕らはどのような考えや行為を紡ぎ出してゆくのでしょうか。
ニンゲンフッカツ、、、という、折田さんのぽつりとした声がまだ聴こえてしかたがありません。
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・コンテンポラリー/舞踏、基礎(からだづくり〜ダンスの基本)/オイリュトミー
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