■テーマ■「お菓子をお土産に持って行ってはいけない?」 <贈り物の品物選びに要注意 (2)>
贈る物選びには注意が必要というテーマです。これまで「傘」はダメ、「扇子」も要注意、「時計」は絶対に送ってはいけないという点を解説してきました。(詳しくは前回のコラムをご覧ください)
■ケーススタディ■「贈り物の品物選びに要注意」
① 職人が手作りで仕上げた伝統工芸品の和傘 【×】
② 日本各地の有名お菓子を集めた詰め合わせセット
③ 設立25周年を記念して作ったインテリアとしても美しい木目調の置時計 【×】
④ 秋葉原でしか買えない数量限定のキャラクターデザインの可愛い扇子 【×】
⑤ 太陽パネルで電池交換の不要なハイテク目覚まし時計 【×】
⑥ 会社のエコキャンペーンで製作し、TVでも有名になった緑の帽子
今回は②の「お菓子の詰め合わせ」について解説します。
■「つまらないもの」は要らない
贈り物として「お菓子の詰め合わせ」は絶対に贈ってはいけない品物なのでしょうか?先に「結論」を述べます。「お菓子」自体は贈ってはいけないというわけではありません。問題はお土産を渡すときの「コメント」です。渡し方に要注意というのが今回の解説のポイントです。
「私は毎回手土産にお菓子を買って行く」、「チョコレートや人形焼は中国人にけっこう人気がある」、最近では『白い恋人達』のブームが去って、「東京ばなな」が人気。海外出張のとき、現地スタッフにお菓子を買って行くという人もおおいのではないでしょうか?もう一度繰り返しますが、「お菓子」がダメなわけではありません。問題は渡し方とコメントです。
「つまらないものですが、皆さんで召し上がってください」皆さんはお土産を渡すときに、こんな言い方をするのではないでしょうか?日本人なら普通によく使う言葉の使い方です。
ポイントは「つまらないものですが・・・」という言葉です。日本人なら誰でも理解できることですが、本当に「つまらないもの」をお土産に選んだわけではありません。これは自分を謙らせて相手に対する尊敬の気持ちを表すときの言葉です。お土産が「つまらないもの」ではなく、謙遜の気持ちを表現した言葉です。日本人特有の謙虚さや謙譲の美徳がその背景にあります。
しかし、中国人に対しては必要以上に謙った表現は不要です。「つまらないもの・・・」ではなく、むしろ「陳さんのために『とてもいいもの』を買ってきました」と言ったほうがいいのです。中国人に「贈り物」をするときには、「あなたのために一番いいものを選んできました」、「いっしょう一所懸命選んでわざわざ買って来ました」、「これは一番おいしいお菓子の詰め合わせです。」という言い方をしたほうがむしろ喜ばれるでしょう。
「贈り物は人間関係のバロメーター」というキーワードがあります。実は「つまらいもの」は贈ってはいけないのです。贈り物を選ぶときは、ふたりの関係を象徴するいい物(りっぱなもの、価値のあるもの、それなりに金額の高いもの)を選ぶべきです。儀礼的な贈り物だったり、形だけの贈り物や気持ちだけの贈り物は「必要ない」というケースがしばしばあります。「つまらないもの」なら要らないのです。儀礼的や形だけなら贈るべきではありません。「私とあなたの関係はこの程度・・・」と思わせてしまう可能性があります。この点は中国と日本との文化の違いです。
繰り返しですが、「お菓子の詰め合わせ」が悪いのではなく、心を込めて贈れば「お菓子の詰め合わせ」でも大丈夫です。しかし、ひとことコメントを加えて、「陳さんのためにとっても『おいしいお菓子』を選んできました」というぐらいの言い方はしたいですね。次に中国人にお土産を渡す機会があったら、ぜひ実践してみてください。受け取る側は今まで以上にあなたのお土産に感激するはずです。
■「皆さんで召し上がってください」は相手の面子をつぶす言い方・・・
もうひとつポイントがあります。「皆さんで召し上がってください」という言い方です。これも日本人同士ならあたりまえのように使う言葉ですが、実は、お土産を渡すときにこういう言い方をするのと相手の面子をつぶすことにもなりかねません。相手に対してたいへん失礼な言葉です。
「贈り物」とは基本的に「個人」が「個人」にプレゼントするものです。一対一の関係作りが基本です。お土産は「私」が「陳さん」(相手本人)にプレゼントするものなのです。日本人同士なら「皆さんで召し上がってください」という相手に対する心遣いはわかりますが・・・。この場面では、「どうぞ陳さん受け取ってください」と言って渡すべきです。
受け取った陳さんが、「ありがとうございます。せっかくですから、それではみんなでいただきましょう」と言って、受け取ったお土産を部下に配るかどうかは陳さん自身の問題です。最初から「皆さんで召し上がってください」ということは、陳さんの面子をつぶすことにもなりかねないので注意が必要です。
ここで「実践テク」ですが、お土産を準備するときは「ふたつ」準備することをお勧めします。ひとつは「陳さん用」です。そしてもうひとつは「皆さんで召し上がっていただくため」のお土産です。「これは陳さんどうぞ召し上がってください」と言って陳さんにひとつを手渡し、そして「それからもうひとつはぜひ皆さんで召し上がってください」とって言ってもうひとつを渡します。こうすると陳さんの面子をつぶさずにすみますし、私の気持ちをスタッフ全員に伝えることもできます。
しかし、本当に私の気持ちを伝えたいなら、基本的にお土産は「ひとり」に「ひとつ」ずつ準備することです。陳さんの部下が5人いたら5個、10人いたら10個、人数分準備することが本当に礼を尽くすことです。ひとりひとつが原則なのです。
■日本に来る中国人がお土産を準備するとき・・・
こんなことがよくあります。投資説明会や展示会など中国側が主催して日本で開催されるイベントのお手伝いをすることがあります。中国の企業や地方政府の方々のサポートです。そんな時に彼らが持ってくるお土産はひとりひとつが原則です。こちらが5人いたら5つ、10人いたら10人分を必ず準備してきます。
「皆さんで召し上げってください」というお土産を一度も受け取ったことがないのです。こんなところに中国人の気遣いを改めて発見します。
しかし、結局のところお土産は渡す相手を気遣い、「気持ち」が大切です。毎回人数分のお土産を準備する必要はありません。お土産というのは、相手の肩書きが地位、自分と相手との関係、ふたりで取り組んでいるプロジェクトの重要度など、いつ誰にどんなお土産を準備すべきかは皆さんで判断してください。繰り返しますが、毎回「東京ばなな」を箱買いして大きなダンボールを抱えていく必要はないのです。
そして、気遣いのひとつとしてお土産を渡すときの「コメント」も忘れないでください。「どうしてこの品物を選んだか」、「なぜ陳さんにこれを食べて欲しい(使って欲しい)のか」、言葉にしてしっかり相手に伝えるべきなのです。「つまらないもの」ではなく、「本当に相手に相応しいもの」であることをしっかり伝えるべきです。お土産を準備するときにぜひ実践してみてください。
次回は⑥「会社のエコキャンペーンで製作し、TVでも有名になった緑の帽子」の解説をします。ご期待ください。
To be continued
※このコラムは「アジアITニュース&プロダクツ」で毎週日曜日に執筆している吉村章の[日曜コラム]に連動しています。こちらのサイトのほうもぜひご覧ください。
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