my life still goes on 2024

コツコツと60代を突き進んでおります

そうきたのか、の連発「ずっとあなたが好きでした/歌野晶午」

2020-05-14 19:24:08 | 読書もしてマス

ひさびさの読書カテです。
いや、読書、たくさんしているんですよ。
でも、なかなか書けなくてね(^^;)


いやあ、面白かった。
書き下ろしの2編を除き、文藝春秋などで
発表済みの作品を集めた短編集ではあるのですが、
重そうな始まりでも実はサラっと終わる、
そんな小説ばかりです。

この文庫本、実は2年以上前の初版時に買っておいたものなのです。
そう、読もう読もうと思っているうちに早2年以上(^^;)
で、図書館も休館、書店もほぼ休業、
というこの時期に手に取ったのでした。

なぜ読まなかったのかは、自分のことながらナゾです。
短編集であることさえも知らなかったということは
パラパラと流し読みさえしていなかったということです。

この歌野晶午さんの本は、一冊だけ読んだことがありました。
それがこの「葉桜の季節に君を想うということ」です。

この本は「本格ミステリー大賞」などを受賞しており、
長編ではありましたが、ストーリーというよりも
別な意味での大どんでん返しがありましたね。
これは内容をまったく知らないときに
タイトルを見て買ったのを覚えています。
ラブソングみたいな素敵なタイトルですもんね。


さて「ずっとあなたが好きでした」は、
なぜ買ったんだろう。それもまたナゾなのでした。
で、ずっと書店のカバーをかけたままにしておいたので、
実は表紙も全く覚えておらず、
このアマゾンとのリンクを貼る時に
「え?こんな表紙だったっけ?」と
書店のカバーを外してみたほどです。
もしかしたら、このカバーに惹かれたのか?ハハハ

で、内容。
最初に書いたように短編集です。
歌野晶午さんはミステリー作家でおられると思います。
ミステリーというと一般的には
事件の謎を解き明かす、というイメージがありますが、
ごくごく普通の小説風なのに、
最後に何かしらの小さなどんでん返しがある感じです。

ネタバレになるので実際の内容は書きませんが、
そうだなあ…
例えば、医者と看護師の恋愛か何かが物語で
純愛でも不倫でもいいのだけれど、
どんどんストーリーの肉付けがなされて、
物語が終わりを迎えようとする時、
実は女医と男性看護師だった、みたいな、
そんな感じと言えるでしょうか。
それを読者に悟らせない文脈で、かつ
大仰にその事実を書かず、シチュエーションから悟らせる。
ね、今の例えだと男性の医師と女性の看護師という
先入観があるじゃないですか。それが裏切られる。
あ、これはワタシが勝手に思いついた下手な例えですけどね(^^;)

ということで、ブログタイトルに書いた、
「おー、そうきたのかぁ」
という感想になるのでした。
事件などのお話ではないので、
“推理する”ということを読者自身がしない。
だからこそ、それぞれの話の中の
登場人物たちの世界に入り込んでいったあとに
ガラッと「あ、そういうふうになるか」と思わされる。
そして最後の最後には短編集であった
"はず"が…。フフフ。

いやあ、面白かった。

他にも読んでみるとするかな。
でも、図書館休館中なんだよなあ(^^;)


「今日も、Jリーグ日和。」平畠啓史

2019-12-17 22:09:25 | 読書もしてマス

以前にも別の書籍をご紹介した平畠啓史さんの本。
この本もサッカーだけでなく、
スタジアム、サポーター、等々
幅広い視点でJリーグの周辺のことを綴っています。

ワタシは中でも「サッカーの力」という章が好きでした。
サッカーを観戦する、クラブを応援する、
そこから生まれる心の中のエネルギー、そんな印象です。

なんか抽象的な表現をしちゃいましたが、
要はそこに関わった人たちにサッカーが何かを残している、
そう感じたことが書かれているのです。

で、ワタシもいつも思っていたことが書かれていたので
そこを少し。

サッカーの中継などを見ていて、
選手の入場前のバックヤードが映されることがあります。
選手が対戦チームの知り合いに対して「おおー」なんて
笑顔で挨拶したりしているアソコです。
そこにはエスコートキッズの子供らもスタンバイしていて、
入場間近になると整列した選手と
手をつないで一緒に待ってますよね。

そこで浦和レッズの槙野智章選手は、
自分の横の子供に必ず笑顔で話しかけています。
ワタシもいつも微笑ましく見ていました。

まあ、槙野選手も西川選手も、
いつも笑顔で他の選手らと挨拶しているわけで
子供との会話もすごく自然にしているのです。

それを平ちゃんも見ているようなのですが、
そこに「サッカーの力」を重ねています。

子供にしたって、エスコートキッズなど
何度もできるものではないはずで、
そんなときに選手といっぱいお話できる、
子供らは必ずしもサッカー選手に
なりたい子ばかりではないとしても、
Jリーグのプロサッカー選手とお話した、
これはすごいこと。
単に思い出だったとしても、ものすごい思い出。

まあ、平ちゃんもそんなことを書いているわけです。

そういえば、
息子もエスコートキッズをやったことがあるけど、
選手と一緒にピッチに入場!ってすごいよね。

そんなことやら、地方クラブのことやら
ホントに相変わらずJリーグ愛の詰まった本です。

ついでと言ってはナンですが、
平ちゃんがパナスタに来たときの映像、
この本のサイン会もあったときですが、
宣伝もしている映像がありましたので、
よろしければご覧ください。

今日も、Jリーグ日和。 - ひらちゃん流マニアックなサッカーの楽しみ方 - (ヨシモトブックス)
平畠 啓史
ワニブックス

from【GAMBA FAMiLY】平畠啓史さんパナスタ来場編


ああ青春 「ホケツ!」小野寺史宜

2019-11-28 23:44:50 | 読書もしてマス

最近、完全にハマっています。
小野寺史宜さんの作品(*^-^*)

いろいろと読んではいるのですが、
ごく普通の青年が、ごく普通の生活の中で
思うことだったり、人とのつながりだったり。
ホントに日常の中でのちょっとしたことの表現や、
会話、心の中のつぶやき、何だか心に響きます。
「あるある」と思ったり、クスっとしたり。

もう既に何冊も読んでいるのですが、
この「ホケツ!」は、
事情があって伯母さんと暮らす高校生。
サッカー部ではサブ、いわゆる補欠の子のお話。

この世の中、子供から大人まで
人それぞれいろいろな境遇があるじゃないですか。
もしかしたら、こんな事情を持ったヒトもいるだろう、
そんなことを思わせる描写に、
今、ものすごく好きな作家になっています。

特にこの小説は、高校生の生活でもあるので、
淡い恋心のこともあり、青春時代を思い出させます。
そして、もちろんサッカー部のことですので、
試合のことにもワクワク。

小野寺さんの物語は、やはり人と人のつながり。
人は絶対に人と関わって生きていくという前提で、
そこの微妙なやりとりが素晴らしく、
ワタシのツボにはまっています。

あ、今回は高校生が主人公ですが、
夫婦三部作なんてのもあって、それはまた次回。

そう、
まだまだ、小野寺史宜さんの本、
ブログに書きますよぉ。
なんせ、紹介したくて仕方ないんだから(^_-)-☆

ホケツ! 小野寺史宜 祥伝社

ついでに文庫版も(*^_^*)

ホケツ! (祥伝社文庫) 小野寺史宜 祥伝社

実は過酷な教師という仕事 「でっちあげ」福田ますみ

2019-11-19 21:27:56 | 読書もしてマス

実は本を読むまで、
この事件のことは知りませんでした。
もしかしたら耳にしたことがあるかもしれませんが、
まったく覚えていませんでした。

ひとつは2003年に福岡市で起きた「教師によるいじめ事件」。
教師が小学生の児童をアメリカ人の血が入っているなどと、
差別をし、暴言を放ち、いじめたとする事件。
教師に対し教育委員会は懲戒処分を下すも、
まったくそのような事実はなかったと処分の取り消しにいたったものです。

もうひとつは2005年の長野県丸子町での「バレー部員自殺事件」。
こちらは、1年生生徒が自殺してしまった事件ですが、
それまでに母親が「いじめがあった」「学校も先生も謝罪も何もない」
と、およそ3ケ月にわたる大騒ぎがあったもので、
生徒の自殺後数年にわたって訴訟が続いた事件です。

結論としては、
どちらの事件も“とんでもない”、“狂気じみた”
母親の所為だったのです。

そして標的とされたのは教師。
丸子町の事件にいたっては生徒が自殺したこともあり、
死人に口ナシとばかりに、あとからつじつまを合わせる母親。

当時の報道は、学校、教師側が全面的に悪いというものに
終始していたようです。
いわゆるモンスターペアレントの言い分を真に受けて
正義感に燃える弁護士、ジャーナリスト、議員。
でも、それらの人々は全く客観的な事実を調べず
母親の言い分だけで、学校、教師を悪者に仕立て上げたのでした。

まあ、簡単に言えば、仮にちょっとした“イジメ”などがあったとして、
問題が顕在化したときに、これ見よがしに騒ぐ親。
もう、それは攻撃的に、執拗に、容赦なく、ヒステリックに。
でも、取材する記者は、それを親の愛と勘違いし、
全て言うがままに報道してしまう。
でも、地元の方やら同級生の親やらは、
その母親の素性をよく知っているわけで、
当初は加害者とされた側も、
きちんと事実や証拠を集めることで、
結局は被害者であった、となるわけでした。

まず、恐怖に震撼したのは、
こんな親が実際にいるんだ、ということ。
そして、そこから考えると、
教師というのは、実は過酷な人間関係との対峙が
仕事の大半を占めているのかもしれない、ということ。

例えば、児童でも生徒でもいいけど、
学校で叱るとするじゃないですか。
でも、それはもしかしたら、
あとから親が何を言ってくるかわからないことでもあるんですね。
子供たちと公平に話をしていても
誰かは楽しいし、誰かは妬むかもしれない。
そして、それを親にどう言うかわからない。
それを聞いた親がどんなヤツかもわからない。

子供たちの生活の基盤はもちろん家庭のわけで、
そこでのしつけなどがとても気になる。
「どういう育て方したんだ!」という子がいても
学校で親の育て方の批判などもできない。
どこでどう保護者に伝わるかもわからないですし。

例えば30人のクラスの担任になったとして、
30人以上の保護者に対応しなければならない。
もちろん、みんながみんな、学校に好意的とも思えない。
人それぞれで性格も違うのに、
子供を介すると余計に複雑になりそうです。

教師って大変な職業なんだなと、つくづく感じました。

このノンフィクション2冊は、
まるで殺人事件の詳細を読むかのごとく、
ホントに胸糞悪くなりましたね。


でも、この事件は、
こういったライターさんがいたおかげで
明らかになったり、多少は名誉を挽回できたのでは、と思います。

ハー、世の中にはヤバいひと、たくさんいるんだな…。
コワイ、コワイ(>_<)

でっちあげ (新潮文庫)
福田 ますみ
新潮社
モンスターマザー:
―長野・丸子実業「いじめ自殺事件」
教師たちの闘い― (新潮文庫)
福田 ますみ
新潮社

この表現力?が好き 「夜の側に立つ」小野寺史宜

2019-10-15 22:35:45 | 読書もしてマス

先月読んだ「ひと」に続いて、
小野寺史宜さんの本です。

いわゆる結末に向けて、
主人公が高校時代、20代、30代と
通り過ぎてきた出来事を独白する物語。

主人公の設定云々ではなく、
5人の仲間の在り方、それぞれの人柄設定、
とても“あるある感”があってリアルに感じました。

そして、主人公の感性や、語らせる言葉たち、
それらの表現をとても好きだと感じました。

何かものを書く時、どれだけ推敲して、
冗長な部分を削っていくか、
でも、削りすぎてしまうと伝えたいことが中途半端になる。

そのバランス感がとても優れた作者だと思います。
それは「ひと」でもそうだったし、
この作品でもそうです。

もちろん、読む人それぞれの感じ方だとは思います。
ワタシにとっては絶妙に思える語り口、言葉の選択、
だったってことです。

「ひと」も、この「夜の側に立つ」も
主人公がいろいろなことを経て、
それこそ紆余曲折の末に辿り着くもの、
最後に手に入れるもの、
そう、この持っていき方に、
うらやましいほどの憧れさえ抱くわけです。

秀逸なドラマ、なんて言うと
逆に安っぽい感じがしちゃいますが、
また、好きな本が増えました。

夜の側に立つ
小野寺 史宜
新潮社

日常の物語だけど、よかった  「ひと」小野寺史宜

2019-09-19 21:25:08 | 読書もしてマス

これまた、本屋大賞作品とは知りませんでした。
ブログに貼るアマゾンリンクの画像を見て
「え?これも本屋大賞!しかも2位」
と気づいた次第です。

ある若者の、ほぼ日常にあった出来事が綴られています。
ものすごく大きな事件があったり、
突拍子もない体験をしたり、というお話ではありません。

ただ、日々の暮らしの中での「ひと」とのつながり、
ちょっとした何かで働き始めたり、
ちょっとしたイヤなことがあったり、
ちょっとしたやさしさに出会えたり、
ちょっとした恋心にを持てたり。

そんな中に自分のことを考えてくれる「ひと」がいて、
自分の存在価値みたいなものも見出していく。

そして、ほんの小さな種であるけれど
自分の進むべき道を見つけていく。
そんな物語です。

先日の「そして、バトンは渡された」の時にも思った、
「もしかしたら、こんな家庭もあるかもしれない」と一緒で、
「もしかしたら、こんな若者もいるはずだよな」と
そんなふうに感じました。

でも、どちらのお話も
人と人のつながり、の話でしたので、
ものすごい感動!、ではないものの
心がほっこりするものでした。

さて、この「ひと」。
単行本でしたが、
物語の終わりに向かって読み進み、
そして最後の一行だけが最終ページにありました。
唐突に最後の一行でしたが、粋な構成でした。

そう、何だか若い時に自分もこんな唐突に
「あのさあ…」なんて話すヤツだったかも、と
ニヤけてしまいました。

どうか、淡々と読み進んで、
最後のページをめくってください。

そこには「ひと」に左右されずに、
自分の意思を伝える、新しい彼がいます。

ひと
小野寺 史宜
祥伝社

人のつながりっていいな 「そして、バトンは渡された」瀬尾まいこ

2019-09-12 19:15:21 | 読書もしてマス

あ、「本屋大賞」の大賞作品だったのかあ…。
そんなことはつゆとも知らず…、
たしかネット上での書評で、
「親が何度も変わった数奇な女の子の運命…」(だったかナ?)
なんてミステリーふうなことが書いてあったので、
読んでみることにしたのでした。
あれ?もしかしたら、その書評に「本屋大賞」と
書かれていたのかもしれないなあ。

と、前置きはともかく。

ミステリーでもなんでもありませんでした(^^;)
死別や離婚などで、確かに4つの姓を経験した女の子。
そして、それを取り巻く“親になった”人たち。
いわゆる普通ではない家族の普通の物語でした。

やさしさの連鎖とも言えるかもしれません。
メインは高校生になった優子さんの物語で、
親と言うには歳の若い“お父さん”である森宮さん。

メインの物語は、この二人の“今”で進みます。
先生や友達、そして継父との生活で、
イマドキの女子高生、そして一風変わった親子関係が
読みやすい文章で綴られていました。

優子さんの学生生活も、ごくごく普通の高校生だし。
もちろん、思惑のかみ合わない親子の会話もあるし。

重い物語を想像していたからでしょうか。
サラサラっと読み終えてしまいました。

それでも、タイトルにあるように
優子さんを育てるためのバトン、
そして優子さんを愛するためのバトン、
読み終えたときに、さわやかな読後感でした。

書評などをあまりあてにしないで読書するので、
ついつい自分の知っている作家に偏りがちなのですが、
これは、良い本でした(*^-^*)

そして、バトンは渡された
瀬尾まいこ
文藝春秋

羆(ひぐま)による食害…あるんだナ 羆嵐(くまあらし) / 吉村昭

2019-08-07 22:17:09 | 読書もしてマス

昨日も北海道で牛が熊に襲われたというニュースがありました。
あらためて、熊による被害というのは
いつでも起こりえるのだな、と考えさせられましたね。


一ヶ月ほど前、
WEBの記事か何かで紹介されていたので
ズバリ、好奇心からではあるのですが読んでみました。
いやあ、怖かったです。ホントに(^^;)

以前から、北海道をはじめとする
山地、時には人里の平地や町にまで
「クマが出た」というニュースを見かけますし、
山中で熊に出会って襲われた、なんて記事も
年に2、3度は必ず見かけます。

もちろん、野生の動物は、クマに限らず
猪だってヒトに向かってくるだけでも怖い動物でしょう。

ただ、都会で育った人間には、
そう、イノシシもクマも似たような印象、
つまり動物園で見る、ある程度ヒトに馴らされたような
動物を思い出してしまいます。
特にクマなんて、ぬいぐるみやキャラクターなどで
可愛いイメージがあるじゃないですか。
動物園で見るクマだってシロクマだって、
遠くから見るから可愛いと思っちゃうのです。

でも…、
このヒグマが人間を襲った事件を読んで、
“怖い動物”なのだと認識をあらためました。
既に100年以上前の出来事ではあるのですが、
熊の暮らしに100年前も現代も変わりはありません。

衝撃的なのは、
羆は人間を食うってことです。
襲って、人間が暴れたら
山へ一目散に逃げる、とかではないのです。

ここで、ヒグマに襲われた人間の描写などを
書き写すようなことはしませんが、
頭を咬む、骨をバリバリ食べる、
着ているものも一緒に飲み込む…。
もちろん、身体の肉は言わずもがな…。

クマの種類によっても、
臆病だったり、体長が大きくなく、
それこそ大きな音で逃げていくヤツもいるでしょう。
でも、足跡が30cmにもなるヒグマ。
“何か食うものはないか”と山を下りたヒグマに
抵抗できる術もありませんよね。

何だか「クマ出没注意」なんて看板があったら、
それこそ恐ろしくてたまらなくなりそうです。

うーん、北海道の山間に住んでいる方々。
こんな危険と隣り合わせなのか。

「羆嵐(くまあらし)」は事件の事実を元に
物語として構成されたものです。

羆嵐 (新潮文庫)
吉村 昭
新潮社


最初に読んだのは、北海道庁林務官だった、
木村盛武さんの「慟哭の谷」です。
こちらはノンフィクションとして、
淡々と事実が著されています。

慟哭の谷 北海道三毛別・史上最悪のヒグマ襲撃事件 (文春文庫)
木村 盛武
文藝春秋

家族になること、とは? 木曜日の子ども / 重松清

2019-07-29 22:11:46 | 読書もしてマス

なかなか、
このカテゴリーでのブログを書けないでいるのですが、
相変わらず読書はしています。
眼の調子も悪いし、小さい文字が見づらいし、
通勤電車ではすぐ眠くなっちゃうんですけどね。


家族を、
時にはシリアスに、
時には笑わせながら、
時には郷愁を感じさせ、
時には真実の愛にあふれさせて
描いてこられた重松清さんの書籍です。

実は、まったく先入観なく…
あ、先入観といえば最初に書いたような物語なのかな、
という先入観はありましたけど、
作品についての先入観はありませんでした。

そう、家族の引っ越し先が、
7年前に中学校で事件のあった街、ということなど
何も知らなかったのです。

いつもの重松さんの家族小説とは少し違って、
サスペンスものと言えると思います。
でも、それでも物語の根底にあるのは
家族になること、とは?
であると思います。
難しい“中学生の男子”、
まあ、ウチにも一人いるのでネ。
今は反抗期で父親とはクチもききたくないだろうけど、
いつか普通になるもんサ。


図書館で借りてから時間がなくて、
返却期限が近づいたので慌てて読み始めたこともあり
実質的には2日半で読了しました。

内容がセンセーショナルで、
かつ展開も早くて、
物語に入り込んでしまいました。
もちろん重松さんの文章が読みやすいってのもあり、
ただ単に「早く読まなきゃ」だけではなく、
「早く続きが読みたい」本だったのです。

まるで宮部みゆきさんのサスペンスのような
ドキドキするような展開でしたから。


「帰ろう、お母さんが心配してるぞ」
家族を守るのは、ありふれたこんな言葉かもしれません。
現代の様々な事件を鑑みても
この言葉に着地してもらえて救われました。

木曜日の子ども
重松 清
KADOKAWA

ついでに、とは言ってはナンですが、
この書籍の発売時の告知サイトもご紹介しておきます。
→ KADOKAWA「木曜日の子ども」


偶然この時期に… 虹とひまわりの娘 / 本郷由美子

2019-06-07 22:00:14 | 読書もしてマス

4月の池袋の事故にはじまり、
大津の事故、登戸の事件、そして相変わらず虐待のニュース。
これは、高齢運転者とか、ひきこもりとか関係なく、
全て子供が犠牲になっています。

いずれも親御さんの気持ちを想うといたたまれません。

子を失くした親も、親を失くした子も、
悲しいものではありますが、
自分の子供が先に亡くなることほど
切ないことはないでしょう。

子供の頃は、そんなニュースを見ても
「同じくらいの子かあ、かわいそうだな」
と思う程度だったと思いますが、
いつからか、そう、大人になってからでしょうね。

衝撃的だったのは、日航機墜落事故。
甲子園で高校野球を見るための初めての一人旅で
事故に遭ってしまった男の子。
もちろん、その子だけでなく
大勢の大切な命が失われたわけですが、
自分が親で、子供が「行ってくるねー」と
元気な笑顔を見せたのを最後に二度と会えなくなる…。
これは、どうにかなっちゃいますよねえ。
親も一緒に事故に遭うならともかく、
一人で事故に遭わせてしまった。
それでも、ごくごく日常の中のことじゃないですか。
何もなければ、夜9時頃には「着いたよー」と
電話などで声が聞けたはずで…。
と、そんな衝撃的な取材記事を目にしていたのでした。

それから、風見しんごさんの娘さん。
朝の通学時に自宅から100メートルだかのところで
交通事故に遭われてしまった。
芸能人のお子さんということで、
ずいぶんニュースやワイドショーでも取り上げられました。
この時も衝撃的でしたが、
日本中のいたるところでこんな交通事故は起きていて、
子供を失くす親御さんもたくさんいるのだろうな、
と、あらためて考えさせられたものでした。

そして、池田小学校。
事故ではなく、殺人。
変なたとえで申し訳ないですが、
大人の男が、子供たちを素手で殴ってまわることだって
十分事件になるものなのに、
長い包丁だか、ナイフだかを持って子供に向ける。
何の抵抗もできないですよ、子供らは。
子供が「キャー」と逃げようとしても
大人の男が2、3歩小走りになれば追いついちゃう。

もうホントに目を覆いたくなるような事件でした。


大津の事故の後、
何気なく、ホントに何気なくですが、
「子を失くした親」の記事などを目にして、
まず風見しんごさんの本、
「さくらのとんねる」を読んでいたんですね。

さくらのとんねる
風見 しんご
青志社

亡くなった娘さんの妹さんや、
認知症も患って亡くなったお父さんの話なども書かれ、
亡くなったお姉ちゃんのことを
あえて“もういない”と思うのではなく
いつまでも“一緒にいる”と思うことを
家族で共有している、とも書かれています。


そんな流れの中で、登戸の事件が起きました。
やはり想起させられたのは池田小学校事件。

犠牲者の母親である本郷由美子さんの本。
取材記事ではない親としての当日の行動記録でもあります。
つらい、つらい事件でした。

つい先日読み始めたのですけど、
事件発生日は6月8日、そう明日です。
読み始めたものの、涙でページが進みません。
通勤電車での読書ですので大泣きできないじゃないですか。
「やばいな」と思ったら本を閉じていたので
かなりペースが遅かったこともあり、
8人の天使たちの命日に導かれたように読了でした。

遺族であるご家族。
風見さんも講演などをされているようですが、
日航機事故の美谷島さん、池田小事件の本郷さん、
お子さんを亡くした親御さんに寄り添うような
心理士として活動をされているようです。

乗り越えるのは大変だったと思います。
いや、あえて乗り越えることをせずに、
現実を受け入れることで強くなられたのかもしれません。
ただ、ご本人らが何かしら文章をお書きになったとしても
その文章が心を全て表すことはできないと思うのです。
取材などを受けても、文字にされても
いつも「ちょっと何かが違う。何が違うかわからないけど」
だったでしょうね。

大人の過ちで子供が犠牲になることは
失くしたいと心から切に思います。


子供たちの魂が「いつでも一緒だよ」と
親御さんや兄弟姉妹の周囲をやさしく笑顔で漂い、
家族のことを守ってくれるよう、
悲しみは癒えることがなくても、
どうか、みんな笑顔でいられますように。

虹とひまわりの娘
本郷 由美子
講談社

 

えみるの赤いランドセル―亡き娘との恩愛の記
風見 しんご
青志社

ああ30年前… 昭和が終わった日 / 佐野眞一

2019-04-18 22:59:28 | 読書もしてマス

平成時代もあと10日あまり。
なんだか“何かが変わる実感”もないままに
5月1日を迎えそうです。

ということで、昭和の終わりから平成の始まりを
ドキュメントのように書かれた本を読みました。

システム屋としては、年号の修正対応などもしたわけで
Xデーを迎えるまでの、それなりの心構えをしていました。
まあ、そのあたりは以前書いたはずなので割愛しますが。

この本は、天皇陛下が崩御される2、3年前からを
時系列的に綴っているものです。
昭和天皇が体調を崩されての手術であったり、
その後の様子、そしてご危篤となった1月6日のこと。
宮内庁、政府、街の様子、
それぞれの視点で取材されていました。

ほとんどの国民にとっては当然初体験であった天皇陛下の崩御。
あの日の早朝のことはフジテレビだったか
ワタシ、ずっとビデオに録画をしておりましたね。

東京の狛江でワンルームマンションで暮らしていた頃です。
平成の終わりとは違う、自粛モードの日々。
今回の退位に伴う改元とはまったく違う世間。

この30年前のことが懐かしく甦ってきました。

でも、今年はチャラチャラしたイベント、
特にカウントダウンなんぞがありそうで、
厳粛さのかけらもなさそうだなあ。
ま、おめでたい、ってことで良しとするか。

ドキュメント 昭和が終わった日
佐野 眞一
文藝春秋


そして、もう一冊。
著者のルポがなかなか読み応えあったので、
図書館のネット検索をしていたら、
こんな著書を見つけたので借りちゃいました。
いきなりこんな表紙です(^^;)

別海から来た女――木嶋佳苗 悪魔祓いの百日裁判
佐野 眞一
講談社

そう、結婚詐欺だけでなくお金を搾取したあとに
男性を練炭殺害した例の女の裁判記録のルポです。

こういったルポは、裁判を軸として
周辺の取材による事件の経緯や被告の経歴などが書かれ、
半ば好奇心でも読むものですが、
何だか別世界のことのようでもあるものの、
同じ人間なのだと考えるとホントに恐怖を感じるものです。

で、この“事件”のことはともかく…この表紙(^^;)

図書館で借りる本というのは、
たいていカバーフイルムで覆われています。
ワタシも子供らが小さい時に自宅の絵本を保護していました。
で、このフイルム。
当然のように透明です。

おわかりですね(^^;)
電車の中でこの本を読むときに、
この表紙がモロ見えなのです(^^;)
このオッサン、木嶋佳苗の本を読んでいるのか、と。
例えば吊革につかまってこの本を胸辺りで広げる、
座席に座っている人には表紙の全貌が見えるわけですよ。
そう、表紙からの続きのように裏表紙も含めて!
いやあ、困った困った、インパクトが強すぎて。
書店の平積みでもきっと目立ったのだろうなあ。

座席に座って読む際には
なるべく表紙を水平に下に向けていましたが。

まあ、それでも隠し隠し
何とか通勤時に読み終えました。

この著者のルポ、
悪く言えば三面記事を掘り下げているような感じもあり、
でも直接的な関係だけでない周辺事情も取材されて
興味深いものが多いようです。
今後もノンフィクション、ちょこちょこ借りるとするか。


Jリーグ愛が詰まってる!!(*^-^*) Jリーグ54クラブ巡礼 / 平畠啓史

2018-12-15 17:32:09 | 読書もしてマス

Jリーグ関連の番組やらイベントやらで活躍、
というより“顔を出してる感”満載の、実は「芸人さん」のようです。
調べてみたら、山口智充さんとのコンビ(活動休止中)だそうで、
しかも宝塚ファミリーランドで働いていたそうです。へえー。

そんな平畠啓史さんですが、
J1からJ3まで全てのクラブのスタジアムを踏破され、
この本を出されました。

いやあ、楽しい。
読んでいてスタジアムに行きたくなる。
自分が応援しているクラブだけでなく、
フラっと足を運びたくなるような、
そんな「Jリーグ愛」、そして優しさの詰まった本です。

ワタシも、この“ひらちゃん”、あまり知りませんでした。
テレビやJリーグのネット動画などで見かけてはいましたが
どんな人なのかも知らなかったし、
サッカー好きなタレントが喋っているんだろうな程度。

まあ、それでもサポーターや一般観客の目線で
鋭いところをツいているなあ、とは思っていたのですが…。

この本は、とにかく各クラブ、各スタジアムの“いいところ”を
個人的見解(“ひらちゃん流”)としながらも書かれています。
ネガティブなこと一切なし!

自分が実際に出かけたスタジアムで体験したこと、
もちろん取材として知ったこと、
そして各クラブの歴史や重要な試合のこと、
きちんと調べて書いてあり、
それが一般のサポーターや地域の人の目線。
そんなちょっとしたエピソードに感動すら覚えます。

何度も書くけど、
「ここがダメだから、ここを直せば」的なこと一切なし。
そこに、とてつもない“やさしさ”を感じます。

こういう本は、えてして興味ないクラブのページを
飛ばし読みしちゃいそうになるのですが、
自分もスタジアムに行った気になりたくて、
最初から順番に(北から南へ)読みました。
地元のサポの話に感動したり、
スタグルを食べてみたくなったり、
ホントに楽しい本です(*^_^*)

あ、“ひらちゃん”にも会いたくなっちゃいましたね。
そしてワタシ、あまり人に勧めることをしないんですが、
Jリーグをお好きな方は、ぜひ読んでほしいと思いましたよー。

Jリーグ54クラブ巡礼 - ひらちゃん流Jリーグの楽しみ方 - (ヨシモトブックス)
平畠啓史
ワニブックス

足かけ三年でようやく読了 宮本輝 / 田園発港行き自転車

2018-12-05 22:57:41 | 読書もしてマス

振り返ると、自分でも意外なほど、
宮本輝作品を読んでいるようです。
ただ、なんだかお話とタイトルが一致しない(^^;)

例えば「お、この本読んでなさそう」と
図書館でパラパラっとめくって
「ああ、読んだヤツじゃん」となることが多いです。
逆にタイトルを覚えていても物語が判然としない、
そんなものもあるのです。

で、この本。
3年ほど前、まだ新刊の時に
タイトルに惹かれて図書館で借りました。
ところが、ズバリ途中まで読んでも
どんなお話なのか、進展が解らない(^^;)
じっくり読むうちにタイムアップ。
と言うのは図書館では2週間という貸し出し期限があるので
その間に読み切れなかったんですな。

決して「まったく面白くない」と感じたわけではないのです。
お話の最後に向けて、初めのうちは何人もの登場人物の
人物像やその背景と関係性のくだりが多かったのです。
「この人たちがどんな関係なのだろう?」と考えれば
もう少し早く読み進むこともできたと思いますが、
あまりインパクトがなかったんですねえ。
犯罪小説や推理小説なら展開が気になるところですが
いかんせん、宮本輝さんの小説には悪人が出てきません。
“いい人”ばかりだと、少々読むほうものんびりしちゃう感じ。

それをようやく、3年越しで読み終わりました。
ずっと借りていて読まない、というのではなく、
借りられない期間もあり、
途中で文庫本も発売になったり、
忘れていたり、
小説を読む気にならない時期もあり。
で、ここにきて少し物語を思い出し「あの登場人物はどうなったんだろ」
なんて気になり、あらためて借り出したのでした。

東京、富山、京都、それぞれの地の当時人物が
つながっていくことがわかり、
上巻の未読部分と下巻は比較的早く読み進むことができました。

“人のつながり”。

望むと望まざるにかかわらず、つながっていた。
端的に言うならばそんなお話です。


それはそうと…
ワタクシ、宮本輝さんの小説を読むと、
必ず一箇所、ひとつのセリフが心に残ります。
人には大したことない言葉なのかもしれませんけどね。
どの言葉かはナイショですが。


そして、この小説では、
富山、愛本橋にも行ってみたくなりました。
一人で歩いてみたい、そんな思いです。

田園発 港行き自転車 (上)(下)巻セット (集英社文庫) 宮本 輝 集英社

と、書籍の情報をネットで検索したらこんなCMが…。
まったく見たことなかったケド。

宮本輝『田園発 港行き自転車』CM


ホロっとしちゃうんだなあ  俵万智 / ありがとうのかんづめ

2018-10-24 21:26:10 | 読書もしてマス

いやいや、そもそも泣く本じゃねぇし(^^;)

このブログでも何度かご紹介している俵万智さんの本。
今年中学三年生?になる息子さんが小学生だった頃の日々、
“子育て”ということだけではなく、
息子さんと一緒に体験したり、
息子さんの成長によって自分も何かに気づかされたり、
なんてことを短歌として歌われ、
その背景になった出来事がエッセイふうに添えられている本です。

いっとき、影響されて短歌を書いてみようか、
なんて時期もあったワタシですが、
とてもとても31字でセンスよく歌うなんて芸当は
自分には無理だと、再挑戦しようにも勇気がありません。

そして、
歌には、歌にしたいと感じた作者の思いがあるはずですが
いかに31字にセンスよくまとまっていても、
それを読んだ読者?は、歌の背景にある細やかな状況までは、
読み取ることはできません。
せいぜい「きっと、こういうことがあったんだろうな」まで。
これはワタシだけではないと思いますが、
この本のように「この歌はこういうことがあって生まれた」と
補足説明的なことが書かれていると、とても理解ができます。

この本は万智さんと息子さん(たくみん)の
成長の記録が詰まっていますが、ワタシも同じような時期に
息子とたくさん過ごしたので、
万智さんの親としての感じ方がすごく理解できるのです。
(それを歌にはできませんが(^^;))

で、通勤時、座席に座れたときにはカバンから取り出して
この本を読んでいたのですけど、
ホロっとして目が潤んじゃったりするんですよね。
目にゴミが入った”ふりでハンカチで目を拭うのでした。

この感覚は何なのだろう。
たくみんが純粋だから?
万智さんの愛を感じるから?
いえいえ違うんですねえ。

そうです、息子とたくさん遊んだ日々が
走馬灯のように浮かんでくるからなんです。
(おお、走馬灯などという表現、珍しくしちゃったわ)
そんなんでホロっとしてんなよ、いいオッサンが。
とも思いますけど、まあしょうがないじゃないですか。

そして、あとがきに万智さんが、
「小学生の息子は、もうこの本の中にしかいない」
なんてことも仰っていて、
いいなあ、ちゃんと遺すことができて、
なんてことも考えちゃうんですよね。

あ、でもワタシにはこのブログがあったんだ。
「幼稚園から小学生の息子は、もうこのブログの中にしかいない」
息子とのことは、たーくさん!山ほど書いてきたからなあ。

実際に掲載されている歌は、
いろいろなところで発表もされてきましたし、
そもそも数年前の雑誌掲載をまとめたものなので
特に“あとがき”では、
その頃のご自分も振り返って書かれています。

もうひとつ、その“あとがき”に書かれていた言葉で、
「もう親としてしてやれることが減ってきた」
というのもありました。
これも共感できるんですよね。
自分の世界を作り始めた子供、
自分の言葉で主張を始めた子供、
これが親離れなのでしょうけどねえ。

でも、万智さんにはこの本があり、
ワタシにはこのブログがある、ってことで(^^;)

小さい子の、純粋な「ありがとう」、
ああ、やっぱり息子の小さい頃を想うと
ウルウルしちゃうオッサンだわ(T_T)
はー、情けない(^^;)

と、
またまた心をふるわせる素敵な本に出会えたのでした。

ありがとうのかんづめ: 子育て短歌ダイアリー
俵 万智
小学館

安井かずみがいた時代 / 島﨑今日子

2018-09-27 23:22:38 | 読書もしてマス

私がよく行く宝塚市立中央図書館。
ネットで蔵書を検索して予約をすることができます。

人気のある書籍は予約が数百人になっているものもあり、
先日借りた分厚い本も、何か月か待ってようやく借りることができました。
そういった本は、当然次の方の予約も入っているので
二週間という貸し出し期間のうちに読まねばならないのです。

が、時として、ずいぶん前に予約していて
早く読まねばならない本よりも
時として先に読みたくなっちゃう本もあるのです。
期限のある本が読み切れるか心配になるのですけど…。

先に読破してしまった本がこれです。
「安井かずみがいた時代」

特に1970年代前半。
ワタシの中では作詞家として
阿久悠さんと双璧とも言えるほど
ヒット曲の数々を書かれた「安井かずみ」さん。

雑誌記事の写真などで何度かお姿を拝見はしていましたが、
小中学生だったワタシの印象は、
モデルさんのようなルックスとファッション。

子供だったワタシにとっては「キレイなヒト」というより
「ゲーノー界の女のヒト」という感じでした。

沢田研二さんの“危険なふたり”、
浅田美代子さんの“赤い風船”、
歌謡曲小僧で明星や平凡の歌本が好きだったので
他にもたくさん「作詞 安井かずみ」は目にしていました。

阿久悠さんは「スター誕生」の審査員などで、
テレビにもよく顔を出されたので“お人”、“お声”も
イメージできましたが、安井かずみさんは、
あくまで作詞家以上でも以下でもありません。

加藤和彦さんと結婚されたことも
取り立てて印象に残るわけでもなく、
まあ、自分に関係ない“業界のこと”だったのですよね。

でも、この本にあるのは、
交友のあった方々の証言で綴られた
生身の安井かずみさんです。

やっぱりカッコいい“ゲーノー界”のヒトで、
元々のセレブが女性の仕事での自立を目指し、
作詞家として極めることで、
さらにセレブリティに磨きがかかった。
そして、人を愛し、人を束縛し、人に甘え、
それらが全て“安井かずみ”であったこと。

70年代前半の芸能界事情、というほどではないにしろ、
タイトルどおり、あの時代”が著されています。

自分が関与したわけでもないのに、
子供だった“あの時代”の、オトナの事情も
覗くことができるような本でした。

安井かずみがいた時代 (集英社文庫)
島﨑 今日子
集英社