タイ国経済概況(2025年2月)


1.景気動向
(1)タイ商務省の1月23日の発表によれば、2024年通年の輸出額は前年比+5.4%の3,005.3億米ドル、輸入額は同+6.3%の3,068.1億米ドル。過去最高の輸出額であるものの、貿易収支は62.8億米ドルの赤字となった。品目別輸出額は、農産物・加工品が同+6.0%(521.9億米ドル)、そのうち米は同+25.0%(64.3億米ドル)、天然ゴムは同+36.8%(49.9億米ドル)、電子製品・同部品が同+14.4%(529.4億米ドル)、自動車・同部品が同▲6.8%(394.1億米ドル)だった。国・地域別輸出額は、首位が米国で前年比+13.7%の549.6億米ドル、次いで中国が同+3.1%の352.4億米ドル、日本が同▲5.3%の232.9億米ドルだった。商務省は、米国の貿易対策の不透明さや為替レートの激しい変動等の懸念があるが、世界経済の成長やタイを含むASEAN諸国への生産拠点の移転が予想されるため、2025年通年の輸出額を+2~3%と予想した。

(2)タイ工業連盟(FTI)が1月29日に発表した2024年12月の自動車生産台数は、前年同月比▲17.4%の10.5万台だった。内訳は国内向けが同▲26.2%の3.8万台、輸出向けが同▲18.6%の6.7万台。新型コロナ前の2019年12月の生産台数13.4万台を下回った。また、2024年12月の国内新車販売台数は同▲20.9%の5.4万台で、輸出台数は同▲15.5%の7.6万台。新型コロナ前の2019年12月の販売台数が8.9万台、輸出台数が7.2万台であり、輸出台数のみ新型コロナ前の水準を上回った。

(3)FTIが1月28日に発表した2024年12月の自動二輪車生産台数は、前年同月比+0.7%の20.3万台で、2ヵ月ぶりにプラスを記録した。2019年12月の生産台数は21.9万台であり、新型コロナ前の水準を下回った。内訳は完成車(CBU)が同▲6.6%の15.4万台で、完全組み立て部品(CKD)が同+33.6%の4.9万台。また、2024年12月の国内販売台数は同▲5.7%の12.5万台、輸出台数は同▲19.3%の3.1万台だった。2019年12月の販売台数が11.4万台、輸出台数が3.6万台であり、販売台数のみ新型コロナ前の水準を上回った。

(4)盤谷日本人商工会議所(JCC)は1月28日、2024年下期日系企業景気動向調査の結果を発表した。本調査は2024年11月26日~12月18日にかけて会員企業1,664社を対象とし、559社(回答率33.6%)から回答を得た。同調査によれば、2024年下期の業況感(DI値:業況が「上向いた」と回答した数から「悪化した」と回答した数を差し引いた値)見通しは▲11で、引き続きマイナスであるものの、2024年上期の▲21から回復した。また、2025年上期の見通しについては、輸出の成長や国内の耐久財消費の回復への期待から6へと伸長した。


2. 投資動向
(1)タイ投資委員会(BOI)は1月15日、長期居住者(LTR)ビザの条件緩和を内閣が承認したことを発表した。LTRは、高度技能を持つ専門家、タイを拠点とするリモートワーク専門家、世界の富裕層、富裕層退職者の4つのカテゴリーを対象とし、10年間の居住権や所得税の優遇等の恩典を付与している。主な変更内容は次のとおり。すべてのカテゴリーにおいて、LTRビザ保有者の扶養家族へのビザ発給数を最大4人から無制限とする。高度技能を持つ専門家について、これまで科学や技術に限られていた対象分野を拡大し、開発と持続可能性等の非STEM分野を含める。高度技能を持つ専門家およびタイを拠点とするリモートワーク専門家において、関連分野での最低5年間の就労経験という要件を撤廃。富裕層において、申請時の年間個人所得が8万米ドル以上という要件を撤廃。BOIのナリット長官は、これらの変更により、投資と有望な人材のグローバルハブとしてタイの地位がさらに強化されると述べた。2024年末現在、BOIはすでに6,000人以上の申請者にLTRビザを発給している。発給者数では欧州が2,500人でトップ、次いで米国(1,080人)、日本(610人)、中国(340人)、インド(280人)となっている。

(2)BOIは1月13日、2024年の投資申請額が+35%の1兆1,400億バーツ(約330億米ドル)となり、2014年以来の最高水準に達したと発表した。これは、データセンター、クラウドサービス、半導体、先進電子機器製造等の大規模な海外直接投資(FDI)プロジェクトによるものである。データセンターやクラウドサービスを含むデジタル部門は、合計投資申請額2,433億バーツ(150件)で、初めて金額ベースの部門別ランキングでトップとなった。電子・電気機器(E&E)部門は、2,317億バーツ(407件)で2位。3位は自動車部門で1,024億バーツ(309件)。農業・食品が876億バーツ(329件)で4位・石油化学・化学が合計491億バーツ(235件)で5位となった。2024年に申請された投資促進申請総数は、2023年の2,235件から+40%で3,137件であった。FDIは2024年の申請総額の73%を占め、前年比+25%となった。


3. 金融動向
タイ中央銀行(BOT)の発表によると、2024年の12月末時点で金融機関預金残高は25兆6,208億バーツ(前年同月比+2.9%)、貸金残高は30兆7,076億バーツ(同▲0.2%)。政策金利は10月16日に2.50%から2.25%に引き下げられ、12月18日の金融政策委員会(MPC)において、2.25%に据え置く決定がされた。


4. 政治動向、その他
(1)タイ政府が1月17日に、低所得者および新社会人向けの住宅提供プロジェクト「タイ人のための住宅」の所有権申込を開始した。タイ国有鉄道(SRT)所有の土地を利用し、第1弾はバンコク都(2ヵ所)、首都圏のパトゥムタ二県、北部のチェンマイ県の計4ヵ所(約5,000戸)。対象者はタイ国籍の成人で月給5万バーツ以下かつ住宅を所有したことがない者。また、所有権登録日から5年間は権利の転売・譲渡は禁止される。住宅ローンの支払いは月々4,000バーツから。条件を満たした申込者の抽選結果発表は申込開始から3ヵ月後に行い、2026年に入居できる予定。

(2)タイ政府は1月21日の閣議で、二酸化炭素(CO2)削減の促進を目的とした炭素税導入に関する省令案を承認した。石油および石油製品が課税対象で、CO2排出量1トン相当で200バーツの税率(燃料1リットルあたり約0.4~0.6バーツ)となる。物品税構造に組み込む形で、現税率では販売価格上昇はなく、生活費および関連企業のコストに影響しない。2月中に官報掲載される予定。


(注)本資料は情報の提供を目的としており、何らかの行動を勧誘するものではありません。
投資等に関する最終決定は、お客様ご自身で判断されますよう宜しくお願い申し上げます。

情報提供:三井住友銀行バンコック支店 SBCS CO., LTD.



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