タイ国経済概況(2025年1月)


1.景気動向
(1)国際協力銀行(JBIC)は、第36回目となる「わが国製造業企業の海外事業展開に関する調査報告」を2024年12月12日に発表した。本調査は同年7月から9月にかけて行われ、495社から回答を得た。中期的な有望事業展開先国・地域(今後3年程度)では、タイはインド、ベトナム、米国、インドネシアに次ぐ5位だった。過去最低の投票率であったが、昨年より1ランク上がり、2021年度・2022年度の順位に戻った。「現地マーケットの現状規模」「現地マーケットの今後の成長性」「インフラが整備されている」といった点が引き続き評価されたほか、「産業集積がある」という点も有望な理由として挙がった。一方、課題としては、回答企業の60%近くが「労働コストの上昇」を挙げたほか、多くの企業が引き続き「他社との厳しい競争」「技術系人材確保が困難」を挙げた。

(2)タイ工業連盟(FTI)が2024年12月24日に発表した2024年11月の自動車生産台数は、前年同月比▲28.2%の11.7万台だった。内訳は国内向けが同▲40.4%の3.7万台、輸出向けが同▲20.7%の8.0万台。新型コロナ前の2019年11月の生産台数15.4万台を下回った。また、2024年11月の国内新車販売台数は同▲31.3%の4.2万台で、輸出台数は同▲10.0%の9.0万台。新型コロナ前の2019年11月の販売台数が7.9万台、輸出台数が7.5万台であり、輸出台数のみ新型コロナ前の水準を上回った。

(3)FTIが2024年12月24日に発表した2024年11月の自動二輪車生産台数は、前年同月比▲8.2%の19.4万台で、2ヵ月ぶりにマイナスを記録した。2019年11月の生産台数は20.3万台であり、新型コロナ前の水準を下回った。内訳は完成車(CBU)が同▲16.8%の14.8万台で、完全組み立て部品(CKD)が同+38.4%の4.5万台。また、2024年11月の国内販売台数は同▲4.5%の13.7万台、輸出台数は同▲19.0%の3.5万台だった。2019年11月の販売台数が13.5万台、輸出台数が3.0万台であり、ともに新型コロナ前の水準を上回った。

(4)タイ商務省の2025年1月6日の発表によると、2024年12月の消費者物価指数(CPI)は108.28となり、前年同月比+1.23%だった。前月比は▲0.18%で、価格変動の激しい生鮮食品とエネルギーを除いたコアコアCPIは前年同月比+0.79%だった。部門別では食品・飲料部門が同+1.28%で、飲料(非アルコール)が同+3.34%と上昇率が大きかった。非食品部門は+同1.21%で、運輸・通信が同+2.71(内燃料が同+6.59%)と上昇率が大きかった。2024年通年のCPI上昇率は前年比+0.40%、コアインフレ率は同+0.56%で、商務省は2024月12月に、2025年のインフレ率予測を同+0.3~1.3%としている。


2. 投資動向
(1)タイ商務省の発表によると、2024年1月~11月の商務省管轄の海外直接投資(FDI)認可件数は884件で前年同期比+44%、認可額は2,140億バーツで同比+118%だった。国・地域別で見ると、件数・認可額いずれも1位は日本で、1,191億バーツ(239件)だった。認可額順で見ると、2位は米国で236億バーツ(115件)。3位は中国で、167億バーツ(117件)。以下、シンガポールが163億バーツ(120件)、香港が145億バーツ(62件)で続いた。また、東部経済回廊(EEC)への投資件数は281件で前年同期比+134%であった。

(2)ぺートンターン首相が委員長を務める国家半導体・先端電子工学政策委員会(半導体委員会)は12月4日、国家としての半導体戦略の枠組みおよび熟練労働者育成戦略を承認した。これは、同分野において、2029年までに少なくとも5,000億バーツ(約150億米ドル)の外国直接投資(FDI)を受け入れるという政府目標に沿ったものである。熟練労働者育成戦略には、修士号および博士号レベルの研究者1,400人を含む、合計86,000人以上の人材のトレーニング、スキルアップ、リスキリングが含まれている。BOIは、承認された枠組みに従い、国家半導体・先端電子工学戦略を策定するための詳細な調査を行うため、大手グローバルコンサルティング会社と協力する。


3. 金融動向
タイ中央銀行(BOT)の発表によると、2024年の11月末時点で金融機関預金残高は25兆5,752億バーツ(前年同月比+3.2%)、貸金残高は30兆8,242億バーツ(同+0.5%)といずれも増加。政策金利は10月16日に2.50%から2.25%に引き下げられ、12月18日の金融政策委員会(MPC)において、2.25%に据え置く決定された。


4. 政治動向、その他
(1)タイ賃金委員会が2024年12月23日にタイ全国の最低賃金を引き上げると発表した。12月27日に官報掲載され、2025年1月1日より施行。400バーツになる地域は、EECエリアのチョンブリ県、ラヨーン県、チャチュンサオ県、および南部主要観光地のプーケット県とスラタニ県サムイ島。チェンマイ県ムアン市およびソンクラー県ハジャイ市は380バーツ。バンコク都および隣接5県では2.5%引き上げの372バーツ、他の67県では、2024年の賃金から2%の引き上げとなる。今回の引き上げで恩恵を受ける労働者は2025年に約376万人。なお、2024年4月13日施行の主要観光地のホテル従業員の最低賃金400バーツは引き続き適用となる。

(2)タイ政府は2024年12月11日の閣議で、家計債務問題解決の取り組みとして、個人および中小企業を対象とした債務救済措置を承認した。債務者190万人、債務総額8,900億バーツが対象。第1の措置は住宅や自動車の担保資産を保全できるように支援するもので、3年間元本のみの支払いで、月々の最低返済額は、初年度が従来の50%、2年目が70%、3年目が90%となる(返済額増額可能)。この3年間は、金利の支払いが停止される。さらに、期間内の元本返済および本措置への登録後12ヵ月以内に新たなローン契約を結ばないことを遵守した場合、停止期間中の利息は免除される。対象は、2024年1月1日よりも前に契約締結されたローン。具体的には、500万バーツ以下の住宅ローン、80万バーツ以下の自動車ローン、5万バーツ以下のバイクローン、融資限度額500万バーツ以下の中小企業向けローンが対象。第2の措置は1口座あたり5,000バーツ以下の少額の不良債権を国・銀行・債務者で負担することで、債務から解放するものである。そのほか、ノンバンクの債務者救済措置もある。いずれの措置も登録必須で、登録期限は2025年2月28日。


(注)本資料は情報の提供を目的としており、何らかの行動を勧誘するものではありません。
投資等に関する最終決定は、お客様ご自身で判断されますよう宜しくお願い申し上げます。

情報提供:三井住友銀行バンコック支店 SBCS CO., LTD.



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